全寮制男子高校 短編集

天気

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すれ違う言葉の先に1 *シリアス要素あり

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学園の木々が色を失い始めるころ、
御影学園の空気はどこか張り詰めていた。


朝の廊下は冷え、吐く息が白くなる。
生徒会室の窓際に立つ朝陽は、指先を制服の袖に隠しながら外を眺めていた。

文化祭が終わってから、蓮は忙しかった。
次期生徒会への引き継ぎ、外部との打ち合わせ、進路面談。
会長としての責任が、蓮を前へ前へと押し出している。


——分かっている。忙しい人だって。

分かっているはずなのに。

「朝陽、今日は先に寮戻ってていい」

その言葉が、胸の奥に冷たく落ちた。

「……はい」

笑顔を作る。
でも、喉の奥が詰まる。

最近、こういう日が増えた。
一緒に帰る約束をしても、「ごめん」と言われる。
夜、蓮の部屋を訪ねようとしても、灯りは消えている。

——邪魔、なのかな。

そんな考えが浮かぶたび、慌てて消す。
自分がそんなことを思う資格はない、と。

その夜、蓮が久しぶりに朝陽の部屋を訪れた。

「遅くなってごめん」

「いえ……」

机の上には、朝陽が一人でまとめた引き継ぎ用の書類。
蓮はそれを見て、眉をひそめた。

「また、無理しただろ」

「してません」

即答だった。

「……朝陽」

「大丈夫です」

声が、少しだけ強くなった。

「無理しないで言ってくれ」

その一言が、朝陽の胸を強く打った。


——言えたら、言ってる。

喉の奥に溜まっていたものが、言葉になって溢れた。

「会長だって、忙しいじゃないですか」

ようやく蓮と呼んでくれるようになったのに、会長と呼ばれたことに一瞬ムッとする蓮。

「それとは関係ない」

「関係あります」

朝陽は俯き、拳を握りしめる。

「……俺なんか居ない方がいいですよね」


一瞬の沈黙。


「……何だ、それ」

蓮の声が低くなる。

「俺が、朝陽を邪魔だと思ってるって言いたいのか?」

決して強い言い方ではないがいつもよりも低い声色に、
朝陽の心臓が跳ね上がった。

——怒ってる。
——まずい。

頭が、真っ白になる。

「……すみません」

反射的に謝っていた。

「おい、朝陽——」

「ごめんなさい」

それ以上、聞けなかった。
朝陽は立ち上がり、部屋を飛び出した。

廊下を走りながら、呼吸が浅くなる。

——だめだ。
——また、同じだ。

誰かの大切なものを、奪ってしまう。
自分が近づくと、壊れる。

胸の奥で、ずっと閉じ込めていた記憶が、音を立てて蘇る。






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