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朝陽の過去2 *シリアス
しおりを挟む「――あんたなんか、いなければよかったのに!!」
鋭い叫び声。
振り返ると、母・琉璃が立っていた。
目を吊り上げ、今にも手を上げそうな勢い。
世界が、止まったように感じた。
——あ。
その一言で、全てが崩れた。
元が慌てて間に入り、琉璃を別室へ連れていく。
怒鳴り声と、物が倒れる音。
キッチンに、朝陽だけが残された。
しばらく、動けなかった。
足が、床に縫い付けられたようだった。
気づけば、二時間ほど経っていた。
床や壁に、オムライスが飛び散っている。
朝陽は、無心で片付け始めた。
——ぼくが、我儘を言ったから。
——だから、こうなった。
雑巾を絞り、床を拭く。
壁を拭く。
何も考えないように、手だけを動かす。
部屋に戻ると、机に向かい、いつものように勉強を始めた。
夕方、二人がキッチンに戻ると、そこは綺麗になっていた。
元は、胸が締め付けられた。
そっと朝陽の部屋を覗くと、勉強に集中する背中。
「朝陽」
呼ばれて、肩がびくりと跳ねる。
「ごめんなさい。我儘言って、ごめんなさい」
反射的に、そう言っていた。
「違うの」
琉璃は言ったが、朝陽には届かなかった。
その夜は、ファミレスへ行った。
母と同じものを頼み、静かに食べる。
週末は、会話の少ないまま過ぎた。
平日。
朝、弁当を詰めていると、母が静かに言う。
「おはよう」
心臓が、跳ねた。
過剰に、驚いてしまう。
元は異変に気づきながら、一緒に家を出る。
「この間は、ごめんね。また料理しよう」
「違うんです。少しだったけど、楽しかったです」
目を合わせずに言い、朝陽は走り出した。
その日から、距離を取った。
母の声に、過剰に反応する日々。
三ヶ月後、冬休み。
元は考えた。
距離を置くことが、必要だと。
全寮制男子校、御影学園。
その話を聞き、朝陽は少し考えてから、頷いた。
「……行きます」
逃げるように。
でも、それは朝陽なりの、生きる選択だった。
こうして、
言えなかった心の傷を抱えたまま、
朝陽は中学2年生の春から御影学園へ入学し
蓮や千早、湊翔、悠真と出会っていく。
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