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体力測定 湊翔
しおりを挟む体育館に入った瞬間から、京極湊翔は露骨にやる気のなさを隠そうともしなかった。
「はぁ……今日これかぁ」
ジャージの袖を引っ張りながら、天井を見上げて大きく息を吐く。
「湊翔、サボるなよ」
誰かの声に、彼は肩をすくめて返す。
「サボらないって。体育もこれだけは出ないといけないからね~」
そんな会話をしながらも、彼の周囲には妙に視線が集まっていた。
金髪、気怠げな立ち姿、軽い笑み。
やる気がないはずなのに、目を引くのが京極湊翔という男だった。
最初は反復横跳び。
「よーい、始め!」
笛が鳴ると、湊翔は一応動く。
一応、だが。
「……あ、普通に速い」
「え、何それ」
「さすが、湊翔様…」
テンポは軽い。
真面目にやっていないようで、足運びは意外と綺麗だった。
終了の合図。
「……まあまあだな」
満点ではないが、高得点。
湊翔は記録を見て満足そうに頷く。
「ほら、これくらいがちょうどいい」
立ち幅跳び。
助走なし、軽く膝を曲げて――
ひょい、と跳ぶ。
「……え」
「今の力でそれ?」
記録はしっかり上位。
「ちゃんとやったらもっと飛べるのでしょうか…!」
「やらないよ? 疲れるし」
握力測定では、片手で機械を持ちながら欠伸混じりに握る。
数値は、やはり高い。
「才能の無駄遣い……」
そんな声があちこちから漏れる。
上体起こしも、途中でペースを落としながら、
「はい、はい、もう十分でしょ」と言わんばかりに終了。
長座体前屈は、体を痛めない程度に前へ。
「柔らかいのも、ほどほどがいいんだって」
そして、問題のシャトルラン。
「……あー、これ嫌い」
ラインに立った瞬間から、やる気が明らかに下がる。
「もう諦めてます?」
「無理しない主義」
電子音が鳴り、走り出す。
最初の数本は、軽快だった。
フォームも安定している。
「いや、、すごいです…」
「……あ、でも」
回数が増えると、湊翔はわざとペースを落とす。
呼吸が乱れる前に、線を踏まずに止まった。
「はい、ここまで!」
教師が片眉を上げながら、
「京極、まだいけるだろ」
「無理すると午後だるくなるんで」
堂々と言い切る姿に、笑いが起きる。
「もったいない……」
「でも、らしいですよね」
結果は、最高ではないが十分に良い点数。
「才能は温存派」
そう言って笑う湊翔に、周囲の視線がまた集まる。
「チャラいのに優秀……」
「ずるい……」
「…そこがいい……!」
湊翔は気にした様子もなく、タオルを肩にかけて体育館を後にした。
(……頑張りすぎないのが、俺の流儀)
そんな京極湊翔の体力測定は、
全力ではないのに印象に残る、彼らしい一日だった。
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