[完]聖女の真実と偽りの冠

さち姫

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捨てられた町エルサリオ2~レティシア目線~

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 その日を境に、村は少しずつ変わり始めた。

 長く降り続いていた霧雨はやがて止み、固く乾いていた畑の土はわずかに湿り気を取り戻した。

 あちらこちらの家から、「咳が止まった」「水が飲めた」「熱が下がった」とささやかに囁かれる声が聞こえてくる。

 そして、数日後。

 村の門に、一台の古びた荷車が辿り着いた。

 東の砂地から来た旅人。荷車には、顔色の悪い女と衰弱した幼子が乗っていた。

「・・・ここに・・・本物の聖女様がいると聞いて・・・」

「どうか・・・妻と娘を・・・助けてください・・・」

 それが最初だった。

 王都に見放された者たちが、命の尽きる前に希望を求め、エルサリオを目指すようになった。

 「神の光が差した」

 「祈りが通じた」

 そんな噂が風に乗って広がっていくたびに、人々は絶望の中から顔を上げ、わずかでも光を見つけようとこの地を訪れた。

 私は、その一人ひとりに耳を傾けた。

 名を尋ね、手を取り、祈りを捧げた。

 そして伝えた。

「・・・神は見ておられます。あなたがここへ来たことも、すべては神の采配なのです。どうか、もうひとつの命を諦めないでください」

 村の隅々に、再び人の声と、祈りの光が戻ってきた。

 王都で名を失い、聖女としての居場所を奪われた私のもとへ、「本物の祈り」を求める人々が集いはじめたのだ。

 王都が慢心と欺瞞の中で崩れゆくその影で、

 この忘れられた村に、確かに新たな光が芽吹いていた。

 これは、再生の地。

 そして、私が

“聖女レティシア”

として再び歩み始める場所。

 神の声がある限り、私はここで祈り続ける。

 今度こそ、この声を、裏切らぬために、そして、傷つけられた者たちの苦しみに、真実で応えるために。

 

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