[完]聖女の真実と偽りの冠

さち姫

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私が本物なのよ~アリシア目線~

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「どういうことだ、アリシア」

神殿の私室に戻るなり、ラゼル様の怒声が響いた。

赤い外套を翻し、扉を乱暴に閉めた彼の眼差しは、獣のように鋭い。

「レティシアの名が、再び人々の口に上っている」

「・・・また、あの女の話?」

「“元聖女が癒しをもたらし、神託を降ろした”。その噂が、王都の隅々にまで広がっている。

 それだけじゃない。ルクレドの使者も、王家の太子も彼女に膝をついたという噂だ! どういうことだ!」

「ただの噂です。信じる価値もないわ」

私は背筋を正し、笑みを作った。

「神託を受けたのは、この私です。私は、王都に選ばれし“聖女”よ。誰がなんと言おうと、その事実は変わらない」

「なら、なぜ神は沈黙を続ける!? なぜ王妃は癒えず、民は飢え、病は止まらないんだ!」

ラゼル様の手が机を叩き、紙が宙に舞う。

「・・・どうにかしろ。何でもいい、役に立つ神託をひとつでもいいから降ろせ。王国は瀬戸際だ。国の威信がかかっている。お前の“聖女”という地位も、例外ではない」

「私は努力してるわ。毎日祈ってるのよっ」

「結果がなければ意味がない!」

鋭い声に、私は一歩後ずさった。

ラゼル様の瞳に、焦燥と怒りが入り混じる。

「お前はレティシアの代わりとして神殿に立った。だが、そのレティシアが、奇跡を起こしていると民は言う。もしそれが真実なら“偽物”は、お前の方だと、そうなる」

「違う!」

私は声を上げた。

震える指先を、胸に当てる。

「癒しの力は、私にもあるわ。何人もの病人を癒してきたわ。神の光が、この身を通して降りてきたことだって、何度も見たでしょ!」

「なら証明してみせろ。今ここで。今夜の儀式で、神託を民に届けろ。それができなければ・・・次は、お前を守れない」

ラゼル様の声は冷たかった。

かつて私に微笑んでくれた面影は、そこにはなかった。

沈黙の中、扉が閉まる音だけが部屋に残る。

私はその場に座り込んだ。

私は、聖女よ。

癒しの力だってある。祈りも捧げてきた。

誰よりも、民の前で笑って、信じさせてきた。

あの女と、私は違う。

私はあきらめない。

お義姉様が戻ってきたところで、奪わせはしない。

聖女の座も、

王太子も、

民の信仰も。

全部、私が勝ち取ったもの。

絶対に渡さない。

たとえ神が背を向けたとしても、私はこの地位にしがみつく。

祈りで足りないなら、権力を使えばいい。

信仰が薄れるなら、恐れを使えばいい。

私が“本物の聖女”なのだから。

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