【完結】頂戴、と言われ家から追い出されました

さち姫

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叔母様が先に降りると、叔父様が待っていて、叔母様をエスコートしていた。

「サラ、あなたのエスコートはグルー兄様に頼んであるからね」

「ちょっと何、さっきのもう」

「お母様、早く降りてください」

サラの言葉を遮り目配せしたが、お母様も、意味が分からず動けないでいた。

「申し訳ありません、まだでしょうか?」

声がかかった。

「お母様、みっともないので早くしてください」

近づきそっと耳打ちをすると、真っ青になりやっと立ち上がり、ふらふらと出ていくと、お父様が同じく青い顔で待っていた。

「ミヤ!さっきなんて言ったの!!」

大声で喚き出したが、扉が開いているので当然外に聞こえているだろう。

「サラ、静かに。あなたに言われた言葉で返してあげるわ。耳悪いんだね、また言わなきゃ行けないの?今日は第1王子の誕生日パーティーよ」

急に目を見開き、今までは見たことの無い形相で立ち上がった。

そうその顔を見たかったのよ。

笑いそうになるのを我慢し、扉へ向かった。

「待てよ!何様よ!!」

苦笑いのガタルが手を差し伸べて、その手を置こうとした瞬間

ドン!

背中を押された。

「おっと。大丈夫か?」

ガタルが上手く受け止めてくれた。

「ありがとう」

「中々面白いな」

くくっと笑うのを見て、落ち着いた。

「だから、それマジなの!?」

喚きながらタップを降りながらも喚いている。

「静かに!お前こそ何様のつもりだ。我が兄の誕生祭の品位を落とす気か!」

ガタルの一喝に、ひっ、と小さく声を上げ、急に小さく見えた。

「さて、チェーンナ家の皆様、中に入りましょうか。兄上がとても楽しみに待っています」

さあ、と手を私に差し出した。

「はい」

のせると、優しく微笑み歩き出した。

さすがにこの状態で、グルー兄様はエスコートなどする訳がない。

とぼとぼと、育ての家の3人はあとからついてきた。

王家のパーティーで女性がエスコートなしなんて前代未聞に近い。

王家に関わる女性で未亡人であれば、それは許されるとしても、そうでなければ、女の価値が無きに等しい。

本当に親しきパーティーであれば別だが、王家のそれも第1王子の誕生日パーティー。

どれだけ惨めで、悔しいか本人が1番分かっている。

だって、いつも言われていたもの。

階段を登りきると、睨みつながら私の横にサラがきた。

「どうしてエスコートしてくれる人を誘ってこなかったの?」

「そんなの書いてなかったわ!」

「あらぁ、おかしいわね。私に言ったわね。どんなパーティーにも必ずエスコートしてくれる殿方を連れて行くのが常識。相手のいない女性は女としての価値がないクズと一緒なんだから、参加する意味なんかないわ、と言っていたのは誰?」

顔を真っ赤にし、言葉にしようとするが言葉が出ないようだった。

「サラ、私、あなたに言われた事を、言われたまま、あなたに返してあげるわ。だって、あなたが、自分で言ったんですから」

「ミヤ、行くぞ」

「ええ」

ふいと顔を背けると、息を飲む気配がしたが、さすがにもう声を発する事はしなかった。

まだよ。ちゃんと返さないと。

ホールの入口には、主催者のトロカデロ様が奥様と一緒に出迎えていた。

軽く会釈すると、嬉しそうに微笑んでくださった。

「お初にお目にかかります。いつの間にか、このような淑女を捕まえてくるとは」

「違うな。俺が拾われたんだ」

「また、その言い方は違うと思います」

恥ずかしくて下を向くと、楽しそうに皆が笑った。

「では、後ほどゆっくりお話をしましょうか」

「ああ、じゃあな」

「では、失礼致します」

中に入ると、豪華絢爛だった。

「すまない、呼ぼれている。すぐ戻るから」

「うん。ここで待ってる」

ガタルが申し訳なさそうに去ると、すぐにサラが近づいてきた。その後ろにお父様とお母様が、今度は真っ赤な顔で見たことも無い悔しそうに睨んでいた。

調度いい。

「サラ、いつも言っていたわね。パーティーに呼ばれたら、必ず身なりを整えて行かなければない。どんなパーティーでも、美しく着飾り、1番自分を美しく見せなきゃいけない。そうでないとみすぼらしく見えて、貴族の意味が無いわ、と。ああ、それがサラにとって美しく」

「うるさい!」

遮りながらも、さすがに小さい声で吐き捨てた。

「あら、どうしたの?いつも言っていたじゃない。パーティーでは下から目線で微笑む。絶対に怒ってはいけない。感情を露わにするなんて、子供だわ、と。なのに、今のサラは笑ってないわよ。怖いわ」

「うるさい!」

ぎっと、私を睨むと、急に笑いながら私に近づいてきた。

プライドが高く、何時だって私を見下ろしていたのに、今は見下ろされている。

どれ程矜恃を折られて、どれだけ歯向かおうと頑張っているか、滑稽な程おかしかった。

「侯爵に行ったから、こんなことになったのね、ミヤ」

悔しそうに、でも負けじ得意そうに笑う。

「あなたが行けと言ったから来たのよ」

「だって、家にいたって意味なかったからね」

「どうしたの?羨ましいの?」

「はああああ?誰がよ!!羨ましなんて1度も思ったことないわ」

「じゃあ、頂戴なんて言わないわよね」

「え・・・?」

「今羨ましくないと言ったわよね。今まで、本当は羨ましいから頂戴って言ったんでしょ。自分に無いものを欲しがって手に入れるけど、それはサラにとっては余るものだから、すぐに飽きてしまうのよ」

「な、何言ってるのよ」

人間て、図星を刺されると声が小さくなる。

「だって、サラは何でも手に入れてのに、すぐ欲しがる。どうして?どうして欲しがるの?何でも持っているのに、すぐに人のものを欲しがる。今回私が邪魔で追い出したのに、王子と婚約するなんて、羨ましいから、聞いたんでしょ。侯爵になったおかげだ、と」

「なに・・・言ってんの、ミヤのくせに・・・」

明らかに動揺している。

「そうね、私はミヤ、よ。あなたは、サラよ。どんなに欲しがっても、私にはなれない。あなたが何を考えているのかわかるわ。私の立場を頂戴、て言いたいんでしょ。バカはサラよ。自分が何様だと思ってるの?お父様、お母様、いつも言っていましたよね、サラが全てだと。サラの言う通りに何でもできると。では、ここで証明してください。サラがどれだけ素晴らしいかを、さあ!」

生演奏が流れている優雅な中、賑やかな笑いや、楽しそうな話し声が、とても耳に響いた。

こんなに冷静に、この人達を見る日が来るなんて思っていなかった。

本当の、他人に見える日が来るなんて思っていなかった。

「最後に呼びます。お父様、お母様、サラの希望通り、結婚式には呼びませんのでご心配なく」

にっこりとほほえんだ。

「な、何を言うんだ。親だぞ、そんな事許されるわけないだろ」

まだ喋れるのね、と思った。

真っ青で震えていても、そこは大事なんだ。

私よりも、王家との繋がりが欲しいのね。

「あら、サラの言葉は絶対でしょ。大丈夫よ。二度と私に関わらないようにしてあるから」

「そ、そんな事出来るわけないわ!ねえ、ミヤ」

必死で抵抗する。

「あらサラが言ったのよ。頼んでもいないわ、と」

「あんな!言葉のあやを真に受けるの!?バカじゃない!!」

「そろそろ終わりにしようか。兄さんの話が始まる」

いつの間にかガタルが私の後ろに立ち、腰に手を回してきた。

「お前らをもともと招待する気なんかさらさらない。そちらの国王から、愚かで浅ましく乏しい伯爵家で生まれながらも、心根は腐ること無く、慎ましく淑女と育った娘だ。是非に承認を、と懇願してきた。その伯爵家というのが、あんたらの事だ」

どういう説明だ、そこはさすがに苦笑いした。

「そ、そんな事嘘だ!そんな内容はデタラメだ!!」

怒りなのか、萎縮の反動なのか、とても大声でおじ様が言った。

一瞬周りが静かになり、誰もがこちらを見つめた。

「お静かに。ここをどこか理解しているのか?成程、内容が本物だと理解した。その態度、その言動。心から感謝しますよ、ミヤを手放してくれたことを。貴族ならわかっているだろ?養子縁組にはそれ相応の理由がいる。嫡男がいないなら分かるが、侯爵家には3人も男子がいる。わざわざとる必要はない。だが、国王自ら書かれた書面と、侯爵からも是非に、と。ああ、申し訳ない。デタラメだと言ったな。その言葉そのまま、手紙に書いて送っておきます。では、帰りの馬車は用意してありますので。ミヤ、最後の挨拶をしたらどうだ?」

微笑むガタルに頷く。

「そうね。ありがとう。私をあの家から出してくれて、本当に感謝しています。では、御機嫌よう」

軽く会釈した。

「待ちなさいよ!まだ、パーティーは終わってないわ!」

もう、いつものサラだ。

「では、招待状は?書いていなかったか?ミヤが俺を紹介するために招いた、と。誰が兄上のパーティーに招待すると言った?参加したければ招待状を出せ」

「なっ!?」

驚き私に詰めようとした時に、近くにい警護の者に掴まれた。

「離しなさいよ!!」

「外に出せ」

「はい」

「ミヤ、ミヤ!これは冗談よね、私は母なのよ!!」

お母様、だった人。

「ミヤ、お前から言ってくれるよな!?さっきのは冗談だと!!」

お父様、だった人。

「ミヤ!!私は妹なのよ!!たった1人しかいない!!」

妹、だった人。

家族、だった人達。

「行こう。兄さんが近くに来い、てうるさいんだ」

「わかったわ」

もうあの人達に振り向くことはないわ。

背後から声が聞こえたが、少しずつ小さくなってくのが聞こえた。

「本当は、口を出すつもりじゃなかったが、あんまりにも、頑張っているから、つい・・・。大丈夫か?震えているぞ」

「だって・・・こんなに酷いことを言ったことないし、お父様やお母様、兄様も聞いてる中、凄い緊張したわ」

少し離れた所で、本当の家族になった皆が、目をキラキラ輝かせ聞いていたのが、チラチラ見えたのが、とても気になった。

「残念。ミヤの後ろで、父上と兄さんもいたのに、気づいてなかったか」

「え!?」

「中々面白いもの見せて貰ったと、言ってたよ」

「・・・もう」

「これで何も気にすることなく、俺と婚約できるな」

そう言ってくれるガタルに、微笑んだ。

 

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