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105 勝てる戦い
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「あ奴らの動向じゃが……」
新しく買った屋敷のリビング。元々備え付けの重厚な家具と、新しくクロエたちが選んだかわいらしい家具が混在し、なんだかカオスな空間だ。
十人がけの大きなテーブルの向こうには、いつも通り深紅のローブを着た大男の姿が見える。自慢のもさもさのヒゲをリボンで縛ったオディロンだ。
いつもは気のいい表情を浮かべているオディロンだが、この日は鋭い目つきをしている。一緒にオディロンの話を聞いている姉貴やクロエたちの背筋が自然と伸びているのが分かった。
なにせ、話の内容が内容だからな。オディロンの話は、『切り裂く闇』の動向についてだ。自分たちを襲撃するかもしれない相手。命にかかわる情報かもしれない。そりゃ真剣にもなる。
「まだ自分たちの屋敷に籠っているようじゃな。近くの住人の話では、時折、喧嘩しているかのような大声の怒鳴り合いや、なにかが割れる音が聞こえるらしいぞ」
「内輪揉めしてるのか」
オディロンの話では、『切り裂く闇』の連中は、何度もダンジョンの攻略に失敗しているらしい。当然収入もないし、冒険者としてのメンツもボロボロだ。借金もあるらしいし、ひどく追い詰められていると言える。内輪揉めも無理はないかもしれない。
こういう時こそ、一致団結して問題に取り組べきなのだがな……。パーティメンバーの心がバラバラでは、本来の力を発揮するのも難しい。
それに、もう下がりようがないほど冒険者としてのメンツもボロボロだ。素直にレベル6ダンジョンの攻略を諦めて、レベル5なり、レベル4なりに行けばいいのに。奴らはまだ自分たちのプライドを折れないらしい。
「それに、あ奴らの屋敷に出入りしとる人間がおるらしくてな。いずれも情報屋とも名乗れない情報屋崩れや、冒険者崩れじゃ」
「冒険者崩れって何? 崩れちゃったの?」
ふむ。ジゼルの他にもよく分からないという顔をしたメンバーが居るな。説明した方がいいだろう。オレが口を開こうとすると、オレよりも早く声を上げた者が居た。
「冒険者という職を続けることができなかった半端者のことよ。中途半端に武力があるから厄介な連中だわ。そんな連中に声をかけてるってことは、襲撃は思ったよりも早いかもしれないわね」
イザベルの言葉に、オディロンが目を細める。襲撃の時期を読んでみせたイザベルに多少の驚きを感じたのだろう。
「なぜそう思うんじゃ?」
「だって、不埒者を繋ぎ留めておくにもお金がかかるのでしょう? 情報屋崩れだけではなく、襲撃役の冒険者崩れも雇っているのなら、近々動くはずよ」
「ふむ。儂も嬢ちゃんと同じ考えじゃ。さすがじゃのう。これが“育て屋”アベルの教えの賜物か」
「いや、イザベルは元々頭が良くて情報通でな。オレはなにも教えてねぇよ」
「ほう? 頼もしいのう」
オディロンに見つめられて、イザベルの背筋が伸びる。緊張しているのだろう。だが、その目はオディロンから逸らさない。負けん気が強いな。
「オレも襲撃が近いのは同意だ。しかし、奴らも機を窺うくらいするだろう。このまま屋敷に籠りっぱなしで襲撃してくるか?」
あまりオディロンとにらめっこさせるのもかわいそうだ。オレはオディロンに質問を投げて、その視線をこちらに誘導する。
「ふむ。それは分からぬな。あ奴らの存念次第じゃが……」
「とすると、こっちから誘うのもありか……」
「お前さん、何を考えておる?」
オディロンの問いかけに、リビングに集まっていた全員の視線がオレに集まる。姉貴にクロエ、イザベル、ジゼル、エレオノール、リディ、オディロン。皆の視線を受けて、オレは口を開いた。
「敢えてこっちで隙をさらしてやるのさ。そして、敵の襲撃タイミングをコントロールする。いつ襲ってくるか分からないから厄介なだけで、いつ襲ってくるか分かっちまえば対処はしやすい」
「それは、お前さんの言う通りじゃが……」
オディロンは、心配そうな表情で姉貴やクロエたちを見渡した。
そうだな。一番のネックはここだ。今のクロエたちに襲撃に対応できる戦闘能力があるのかどうか。相手は腐ってもレベル6ダンジョンを踏破した経験のある冒険者パーティ。まだレベル3を攻略したばかりのクロエたちには荷が重いのが正直なところだ。
「私たちの実力が足を引っ張っているわけね」
「相手はレベル6ダンジョンの踏破者……。明確な格上ですねぇ……」
「あーしは挑戦してみたいけど、勝てるか分かんない」
「んっ……」
「あたしは……人と戦うのは……」
クロエたちも相手に呑まれているのか、いつもよりもだいぶ消極的だ。相手がモンスターではなく人間だというのも大きいかもしれない。
「アベル、あまり危険なことは……」
姉貴まで心配そうにクロエたちとオレを交互に見ていた。
「無理はしねぇよ。オレは確実に勝てる勝負しかしない主義だ。今回も、必ず勝てる勝負するさ。本当だぜ?」
オレの言葉にクロエたちの顔が少しだけ明るくなった。だが、姉貴はまだ心配そうな顔をしている。安心させてやりたかったんだがなぁ……。
新しく買った屋敷のリビング。元々備え付けの重厚な家具と、新しくクロエたちが選んだかわいらしい家具が混在し、なんだかカオスな空間だ。
十人がけの大きなテーブルの向こうには、いつも通り深紅のローブを着た大男の姿が見える。自慢のもさもさのヒゲをリボンで縛ったオディロンだ。
いつもは気のいい表情を浮かべているオディロンだが、この日は鋭い目つきをしている。一緒にオディロンの話を聞いている姉貴やクロエたちの背筋が自然と伸びているのが分かった。
なにせ、話の内容が内容だからな。オディロンの話は、『切り裂く闇』の動向についてだ。自分たちを襲撃するかもしれない相手。命にかかわる情報かもしれない。そりゃ真剣にもなる。
「まだ自分たちの屋敷に籠っているようじゃな。近くの住人の話では、時折、喧嘩しているかのような大声の怒鳴り合いや、なにかが割れる音が聞こえるらしいぞ」
「内輪揉めしてるのか」
オディロンの話では、『切り裂く闇』の連中は、何度もダンジョンの攻略に失敗しているらしい。当然収入もないし、冒険者としてのメンツもボロボロだ。借金もあるらしいし、ひどく追い詰められていると言える。内輪揉めも無理はないかもしれない。
こういう時こそ、一致団結して問題に取り組べきなのだがな……。パーティメンバーの心がバラバラでは、本来の力を発揮するのも難しい。
それに、もう下がりようがないほど冒険者としてのメンツもボロボロだ。素直にレベル6ダンジョンの攻略を諦めて、レベル5なり、レベル4なりに行けばいいのに。奴らはまだ自分たちのプライドを折れないらしい。
「それに、あ奴らの屋敷に出入りしとる人間がおるらしくてな。いずれも情報屋とも名乗れない情報屋崩れや、冒険者崩れじゃ」
「冒険者崩れって何? 崩れちゃったの?」
ふむ。ジゼルの他にもよく分からないという顔をしたメンバーが居るな。説明した方がいいだろう。オレが口を開こうとすると、オレよりも早く声を上げた者が居た。
「冒険者という職を続けることができなかった半端者のことよ。中途半端に武力があるから厄介な連中だわ。そんな連中に声をかけてるってことは、襲撃は思ったよりも早いかもしれないわね」
イザベルの言葉に、オディロンが目を細める。襲撃の時期を読んでみせたイザベルに多少の驚きを感じたのだろう。
「なぜそう思うんじゃ?」
「だって、不埒者を繋ぎ留めておくにもお金がかかるのでしょう? 情報屋崩れだけではなく、襲撃役の冒険者崩れも雇っているのなら、近々動くはずよ」
「ふむ。儂も嬢ちゃんと同じ考えじゃ。さすがじゃのう。これが“育て屋”アベルの教えの賜物か」
「いや、イザベルは元々頭が良くて情報通でな。オレはなにも教えてねぇよ」
「ほう? 頼もしいのう」
オディロンに見つめられて、イザベルの背筋が伸びる。緊張しているのだろう。だが、その目はオディロンから逸らさない。負けん気が強いな。
「オレも襲撃が近いのは同意だ。しかし、奴らも機を窺うくらいするだろう。このまま屋敷に籠りっぱなしで襲撃してくるか?」
あまりオディロンとにらめっこさせるのもかわいそうだ。オレはオディロンに質問を投げて、その視線をこちらに誘導する。
「ふむ。それは分からぬな。あ奴らの存念次第じゃが……」
「とすると、こっちから誘うのもありか……」
「お前さん、何を考えておる?」
オディロンの問いかけに、リビングに集まっていた全員の視線がオレに集まる。姉貴にクロエ、イザベル、ジゼル、エレオノール、リディ、オディロン。皆の視線を受けて、オレは口を開いた。
「敢えてこっちで隙をさらしてやるのさ。そして、敵の襲撃タイミングをコントロールする。いつ襲ってくるか分からないから厄介なだけで、いつ襲ってくるか分かっちまえば対処はしやすい」
「それは、お前さんの言う通りじゃが……」
オディロンは、心配そうな表情で姉貴やクロエたちを見渡した。
そうだな。一番のネックはここだ。今のクロエたちに襲撃に対応できる戦闘能力があるのかどうか。相手は腐ってもレベル6ダンジョンを踏破した経験のある冒険者パーティ。まだレベル3を攻略したばかりのクロエたちには荷が重いのが正直なところだ。
「私たちの実力が足を引っ張っているわけね」
「相手はレベル6ダンジョンの踏破者……。明確な格上ですねぇ……」
「あーしは挑戦してみたいけど、勝てるか分かんない」
「んっ……」
「あたしは……人と戦うのは……」
クロエたちも相手に呑まれているのか、いつもよりもだいぶ消極的だ。相手がモンスターではなく人間だというのも大きいかもしれない。
「アベル、あまり危険なことは……」
姉貴まで心配そうにクロエたちとオレを交互に見ていた。
「無理はしねぇよ。オレは確実に勝てる勝負しかしない主義だ。今回も、必ず勝てる勝負するさ。本当だぜ?」
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