好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠

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 坂口くんたちの会話を聞いたのは、本当に偶然だ。

 先生に頼まれて、授業で使った資料を準備室という名のガラクタ置き場に運んでいると、途中の空き教室から笑い声が聞こえてきた。

 用事がないときには入り込まないようにとは言われているものの、鍵がかかっていないせいで特定の男子たちの溜まり場になってしまっているらしい。うちの学校は自律をモットーにしているせいか、進学校のわりに校則がゆるゆるなのだ。

「期末テストの合計、せいので見せ合うぞ!」
「恨みっこなしだ!」
「マジかよ。勘弁してくれ!」

 わちゃわちゃと賑やかなのは、学校でも評判の男子3人組。眉目秀麗スポーツ万能、ま、私は坂口くんが一番カッコいいと思ってるけどね。ふふふ、眼福眼福。こっそり拝んでおく。

「わかったな、坂口。約束はちゃんと守ってくれよ」
「俺たち、罰ゲームの結果を聞くのを楽しみにしているからさ」
「……わかった」

 え、なになに。テストの点数の合計で罰ゲームを決めてたの? 学校の人気者なあのひとたちも、そういう普通の男子みたいなことをやるんだねえ。

 ちょっとだけむすっとした顔の坂口くんも珍しい。一体、何を罰ゲームに設定したのやら。微笑ましく思いながら、通り過ぎようと思ったそのときだ。

「じゃ、坂口。さっそく今日の放課後、告白してきてね」
「せっかくだし、見学に行こうかな」
「バカ、来るな。帰れ!」

 ど、どういうこと?
 罰ゲームが、嘘告白とかそれはちょっとやりすぎのような……。そういうひとを傷つける遊びって、坂口くんらしくない気がする。

「会話を録音して、公開してくれてもいいんだぜ」
「それ、犯罪だからな」
「坂口、厳しい~」
「俺は、山本さんが嫌がるようなことはしたくない」

 嘘でしょう、罰ゲームの対象って私なの? ショックなような、腑に落ちるような。なんとも言えない想いが広がる。いやいや、山本なんてよくある名前だし、他の学年にも同じ名前の女子がいるのかも? 知らんけど。

「まあ、クラスメイトだからな。失敗したら、終わりだな」
「ハードルを上げるんじゃない!」

 私でした! でも、ある意味良かったのかなあ。普通に坂口くんのことを好きな女の子にそんなことをしたら、きっと刺されちゃうからね。

 私はそんな風に雑に扱われても、坂口くんに認識されていること自体が嬉しいと思っちゃうような、そんな残念な脳みそをしているから全然問題ない。

 だったらその罰ゲームに乗らなきゃ損でしょう? 普段なら絶対に声をかけられない相手が告白してくれるって言うんだもの。せっかくなら、たくさん好きって言ってもらわなきゃね。

 たとえ嘘でもいい。5分だけでも、私のことを見てくれるならそれはなにより幸せなことだと思うから。

 それなのに。
 嘘告白のはずなのに。
 どうして坂口くんは、告白が成功してそんなに嬉しそうなの?
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