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 その日以来、私と坂口くんは高校生カップルらしい交際を続けている。つまり、清く正しい男女交際ってやつね。今日もコンビニの期間限定ドリンクを買って、のんびり下校中だ。

 2種類の味で迷っていたら、坂口くんが片方買ってくれた。えーと、これはまさかひとくちくれるタイプの罠ですか?

 いや、私は止めたんだよ。嘘告白なのに、あんまり周りに「付き合い始めました!」ってアピールしても意味ないだろうし。それなのに、坂口くんってば無邪気な顔をして、すごいセリフを吐いてくるんだもん。

「山本さんの彼氏は、俺ってちゃんとアピールしとかなきゃ」
「いや、誰も私の彼氏なんて興味ないと思うよ」
「俺が心配なの」

 そのままぐいぐい近づいてくるものだから、正直気絶するかと思いました。嘘告白って、ここまで相手のために尽くしてくれるものなんだっけ?

 坂口くんって、罰ゲームにも手を抜かないタイプなのかしら。高く高く上げて落とすとかエグい。でもそういうとこも好き。

 心配していた坂口くんファンからの嫌がらせもない。これも後からまとめてくるのかなあ。

 嘘告白の日、坂口くんはちょっと帰りが遅くなった私のことを、なんと家まで送ってくれた。それから、登下校は一緒というのがいつの間にかお約束になってしまっている。朝玄関のドアを開けると、好きなひとが笑顔で出迎えてくれるんだよ。罰ゲーム、ありがとう!

 下校の時間も、私の委員会があるときにはちゃんと終わるまで待っていてくれる。だから私も坂口くんの部活が終わるのを待つのが当たり前になってしまった。

 わりと長い帰り道なのに、坂口くんといると会話が途切れない。

「修学旅行では、同じ班になれるといいね」
「そうだね。ねえ、知ってる? 修学旅行って、2年生で行くところと3年生で行くところがあるんだって。学校によって違うんだって」
「そうなんだ。俺は、山本さんと一緒なら毎年でも旅行に行きたいな」

 毎年はまずいです。卒業しなくちゃ。
 でもそんなこと言っちゃう坂口くんって、お茶目だよね。

「体育祭の後夜祭では、一緒に過ごそうね」
「うん、後夜祭ってフォークダンスとかなかったっけ?」
「たくさん踊ろう。俺、ある程度なら社交ダンスも踊れるよ」
「普通にフォークダンスでいいよ……」

 後夜祭でサルサとか、チャチャチャとか踊り始めたらやばいヤツなのでは? でも、そういうこと平然と言っちゃう坂口くんが可愛いよね。ナチュラルに踊れるのもすごくない?

 ただちょっと困っているのは、いつまで経っても坂口くんがネタばらしをしてくれないこと。大丈夫? もしかして、お友だちの間でドッキリのネタばらしまでのハードルを上げるように指示されていたりしない? いじめに繋がっていないか、ちょっとだけ私は心配です。
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