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1学期も終わりが近づき始めたある日、職員室で部活の顧問の先生に声をかけられた。1年生の頃からお世話になっている先生は、我が家の家庭環境のこともよくご存知だったりする。
「アメリカに行くんだって? これから、寂しくなるな」
「あら、先生もご存知なんですか。話が広まるのが早いなあ」
「すまん、これ極秘事項だったのか?」
「極秘事項なら担任の先生にちゃんと口止めしておきますよ。大丈夫です。どうせすぐにみんなにわかることですし」
私が笑えば、先生が胸をなでおろしていた。最近は個人情報保護とかで色々と難しいみたいだもんね。大丈夫です。うちの家庭の事情は、友人にはフルオープンですから。
「でも父は嬉しいみたいですよ。記念日すら一緒にお祝いできないと、父は気にしていたみたいですし」
「いいお父さんじゃないか」
「むしろ母の方が記念日を覚えていないので、オンライン通話に気がつかずに無視する形になることも多いみたいで」
「……お父さん、気の毒に」
「まあ、時差もありますからねえ」
昔から母にぞっこんの父は、ようやく久しぶりに一緒に住むことができるようになり、毎日ご機嫌でメッセージを送ってきている。普通に面倒くさい。
「うちの母はあそこなら一緒に行きたいけれど、ここならついて行きたくないなんて割とはっきり父に言うような感じでしたので。アメリカは母的にOKだったみたいです」
「それじゃあ念願叶った感じかもしれんな」
「とはいえ、そのしわ寄せが私に来ているのはいただけないんですけれどね」
この時期に引っ越しとか、環境があまりに変わるのはちょっとしんどいんだけどね。それでも、父の希望を叶えてあげたいという想いもあるんだ。
「大丈夫か。来年、受験だろう?」
「最近はネットもありますから、連絡も調べ物もなんとかなりそうです。あとは私の体力が持つかどうかですね」
「そうか、お前がそう言うなら安心だが。無理するんじゃないぞ。エナジードリンクは万能薬じゃないからな」
「ぎくっ」
自分の中の不安は、誰かに話すことで解消されることもある。だから先生と思わず話を弾ませてしまった私は、気がつかなかったんだ。先生との会話を、坂口くんが聞いていたなんて。
「アメリカに行くんだって? これから、寂しくなるな」
「あら、先生もご存知なんですか。話が広まるのが早いなあ」
「すまん、これ極秘事項だったのか?」
「極秘事項なら担任の先生にちゃんと口止めしておきますよ。大丈夫です。どうせすぐにみんなにわかることですし」
私が笑えば、先生が胸をなでおろしていた。最近は個人情報保護とかで色々と難しいみたいだもんね。大丈夫です。うちの家庭の事情は、友人にはフルオープンですから。
「でも父は嬉しいみたいですよ。記念日すら一緒にお祝いできないと、父は気にしていたみたいですし」
「いいお父さんじゃないか」
「むしろ母の方が記念日を覚えていないので、オンライン通話に気がつかずに無視する形になることも多いみたいで」
「……お父さん、気の毒に」
「まあ、時差もありますからねえ」
昔から母にぞっこんの父は、ようやく久しぶりに一緒に住むことができるようになり、毎日ご機嫌でメッセージを送ってきている。普通に面倒くさい。
「うちの母はあそこなら一緒に行きたいけれど、ここならついて行きたくないなんて割とはっきり父に言うような感じでしたので。アメリカは母的にOKだったみたいです」
「それじゃあ念願叶った感じかもしれんな」
「とはいえ、そのしわ寄せが私に来ているのはいただけないんですけれどね」
この時期に引っ越しとか、環境があまりに変わるのはちょっとしんどいんだけどね。それでも、父の希望を叶えてあげたいという想いもあるんだ。
「大丈夫か。来年、受験だろう?」
「最近はネットもありますから、連絡も調べ物もなんとかなりそうです。あとは私の体力が持つかどうかですね」
「そうか、お前がそう言うなら安心だが。無理するんじゃないぞ。エナジードリンクは万能薬じゃないからな」
「ぎくっ」
自分の中の不安は、誰かに話すことで解消されることもある。だから先生と思わず話を弾ませてしまった私は、気がつかなかったんだ。先生との会話を、坂口くんが聞いていたなんて。
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