瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠

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 今日もフェリシアは、窓の隙間から外を眺めています。ぐいぐいと頭を隙間にねじ込むようにすれば、縦に分割されていない綺麗な空を見ることができます。

(とても寂しいわ。どうして誰にも会えないのかしら)

 寂しくて、心もとなくて、フェリシアは歌を口ずさみました。

 フェリシアは歌が得意です。もうずいぶん昔に、誰かに褒められたような気がします。それはとても優しい女の子だった気がするのですが、彼女の名前を思い出すことができません。

 それでも懐かしいメロディは、後から後からあふれてきます。祈るように。願うように。声は高らかに響き、天へと昇っていきます。

 ――フェリシアは、お歌が上手ね――
 ――本当に可愛いお姫さまだこと――
 ――ずっとずっと一緒にいようね――

 そう約束をした女の子は、どこへ行ってしまったのでしょうか。苦しくて、切なくて、けれどその悲しみは言葉にならず、ただ歌声となるばかり。

 一心に歌い続けていたフェリシアですが、誰かが足早に近づいてくる音に気が付きました。はっとフェリシアは口をつぐみます。とても悲しいことに、フェリシアの家族はフェリシアの歌が嫌いなのです。

 みんなの気を引きたくていたずらをしているときならともかく、歌を歌ってお仕置きされるのはまっぴらごめんです。

 このままでは、暗くて狭い場所に閉じ込められてしまうかもしれません。大慌てでベッドの中に潜り込むと、フェリシアは寝たふりをしました。部屋の外では大きな音が聞こえているようでしたが、毛布にすっぽりとくるまれていればやがてそれも聞こえなくなりました。
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