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フェリシアは自分の声で目を覚ましました。
ゆらゆらと部屋全体が揺れています。川に流されているような、雲を渡っているような不思議な感覚です。ゆっくりと辺りを見回すと、フェリシアは小さな悲鳴を上げました。何ということでしょう。見たことのない場所にフェリシアはいるではありませんか。
(誘拐かしら?)
なんと不埒なやつでしょう。フェリシアが近づいてきた相手を睨み付けると、ぼやき声が聞こえました。
「ようやく目が覚めたのか、寝坊助が。お前みたいな不細工な奴、夢の中でひいおばあさまに頼まれなければ誰がさらうものか」
失礼な物言いで事情を説明してくれたのは、ひどくつまらなそうな顔をした男の子でした。真っ黒な髪は長いこと水浴びをしていないのか、どことなくべたついています。ろくにご飯も食べていないのでしょう、頬や首筋、薄汚れた袖口から見える手首はとても細く、骨ばってきました。
フェリシアは家族から無視されていますが、ご飯だけはたっぷり食べることができます。だから目の前の痩せぎすの男の子を見て悲しくなりました。お腹が空いているのは辛いもの。フェリシアは黙って、先ほどまで部屋にあった果物をわけてあげたのです。
喜んでくれると思ったのに、男の子はどこか怒ったような顔をしました。果物を地面に叩きつけようとしてしばらく固まり、悲しそうに首を振ると、座り込んで食べ始めました。
「お前が俺の幸せを全部奪ったのに。お前だけが俺に優しくしてくれるんだな」
よくわからないことを言われて、フェリシアは少し腹を立てました。
せっかく果物をあげたのに、男の子は投げ捨てようとしたのです。なんて罰当たりなことをするのでしょう。その上、フェリシアが男の子の幸せを奪っただなんて。
「大叔父たちに家も土地も全部取られてしまった。そのまま俺のことも追い出してくれたら良かったのに、自分たちの悪事が見つかることを恐れて、俺は奴隷扱いで屋敷に閉じ込められている」
快適だけれど、檻のような部屋に閉じ込められているフェリシアも似たようなものです。何となくフェリシアは、男の子のことが気の毒に思えてきました。おそるおそる男の子に近づけば、そっと頭を撫でられました。
「深窓のお姫さまとして暮らしていると聞いていたんだ。声しか聞いたことのないお前が、憎たらしくてたまらなかった。でも、籠の鳥のお前も幸せではなかったなんてな」
男の子はなんだか懐かしい瞳をしています。初めて会ったはずなのに、初対面だとは思えないのです。フェリシアにはそれがとても不思議でした。
一生懸命考えました。フェリシアの小さな頭では、難しいことや昔のことは思い出せません。でも、男の子はとても似ているのです。
そうです、夢に出てきた女の子です。疲れ切ったフェリシアのことを助けてくれた優しいあの子です。
だからこそ、男の子を見てフェリシアは悲しくなりました。
大好きなあの子によく似た男の子には笑ってほしいのです。かつて女の子が泣いていたときのことを思い出しました。
あの時は、一体何をしたのでしょうか。
お星さまがきらめいたように、フェリシアの記憶もよみがえりました。そして迷うことなく、男の子に一本の青い羽を差し出したのです。そして、よたよたと倒れてしまいました。
驚いたのは、男の子の方です。
「違う、そういう意味じゃない。お前に八つ当たりした俺が悪かったんだ。本当にごめん。絶対に守ると約束したのに」
あの子によく似た空色の瞳から、ぽろぽろと涙があふれてきます。フェリシアは、また胸が痛くなりました。男の子を泣かせたかったわけではないのです。笑ってほしかっただけなのです。そのためにもう残り一本だけになっていた羽を引き抜いて差し出したのに。
(ねえ、願って?)
男の子は、泣きながら言いました。
「ほら、今すぐ鳥籠の扉を開けるから。頼む、起き上がってくれ。お前には大切なお役目があるんだろう? こんなところで終わっちゃいけないんだ」
その瞬間、フェリシアには硝子にひびが入ったような音が聞こえました。そして、かつて優しい女の子が話していた言葉を思い出したのです。
――あなたの羽とわたしの瞳は、同じ空の色をしているわね。きっとあなたは、青い鳥。幸せを運ぶ妖精なのね――
ぱらぱらと何かが崩れ落ちる音がしました。
ゆらゆらと部屋全体が揺れています。川に流されているような、雲を渡っているような不思議な感覚です。ゆっくりと辺りを見回すと、フェリシアは小さな悲鳴を上げました。何ということでしょう。見たことのない場所にフェリシアはいるではありませんか。
(誘拐かしら?)
なんと不埒なやつでしょう。フェリシアが近づいてきた相手を睨み付けると、ぼやき声が聞こえました。
「ようやく目が覚めたのか、寝坊助が。お前みたいな不細工な奴、夢の中でひいおばあさまに頼まれなければ誰がさらうものか」
失礼な物言いで事情を説明してくれたのは、ひどくつまらなそうな顔をした男の子でした。真っ黒な髪は長いこと水浴びをしていないのか、どことなくべたついています。ろくにご飯も食べていないのでしょう、頬や首筋、薄汚れた袖口から見える手首はとても細く、骨ばってきました。
フェリシアは家族から無視されていますが、ご飯だけはたっぷり食べることができます。だから目の前の痩せぎすの男の子を見て悲しくなりました。お腹が空いているのは辛いもの。フェリシアは黙って、先ほどまで部屋にあった果物をわけてあげたのです。
喜んでくれると思ったのに、男の子はどこか怒ったような顔をしました。果物を地面に叩きつけようとしてしばらく固まり、悲しそうに首を振ると、座り込んで食べ始めました。
「お前が俺の幸せを全部奪ったのに。お前だけが俺に優しくしてくれるんだな」
よくわからないことを言われて、フェリシアは少し腹を立てました。
せっかく果物をあげたのに、男の子は投げ捨てようとしたのです。なんて罰当たりなことをするのでしょう。その上、フェリシアが男の子の幸せを奪っただなんて。
「大叔父たちに家も土地も全部取られてしまった。そのまま俺のことも追い出してくれたら良かったのに、自分たちの悪事が見つかることを恐れて、俺は奴隷扱いで屋敷に閉じ込められている」
快適だけれど、檻のような部屋に閉じ込められているフェリシアも似たようなものです。何となくフェリシアは、男の子のことが気の毒に思えてきました。おそるおそる男の子に近づけば、そっと頭を撫でられました。
「深窓のお姫さまとして暮らしていると聞いていたんだ。声しか聞いたことのないお前が、憎たらしくてたまらなかった。でも、籠の鳥のお前も幸せではなかったなんてな」
男の子はなんだか懐かしい瞳をしています。初めて会ったはずなのに、初対面だとは思えないのです。フェリシアにはそれがとても不思議でした。
一生懸命考えました。フェリシアの小さな頭では、難しいことや昔のことは思い出せません。でも、男の子はとても似ているのです。
そうです、夢に出てきた女の子です。疲れ切ったフェリシアのことを助けてくれた優しいあの子です。
だからこそ、男の子を見てフェリシアは悲しくなりました。
大好きなあの子によく似た男の子には笑ってほしいのです。かつて女の子が泣いていたときのことを思い出しました。
あの時は、一体何をしたのでしょうか。
お星さまがきらめいたように、フェリシアの記憶もよみがえりました。そして迷うことなく、男の子に一本の青い羽を差し出したのです。そして、よたよたと倒れてしまいました。
驚いたのは、男の子の方です。
「違う、そういう意味じゃない。お前に八つ当たりした俺が悪かったんだ。本当にごめん。絶対に守ると約束したのに」
あの子によく似た空色の瞳から、ぽろぽろと涙があふれてきます。フェリシアは、また胸が痛くなりました。男の子を泣かせたかったわけではないのです。笑ってほしかっただけなのです。そのためにもう残り一本だけになっていた羽を引き抜いて差し出したのに。
(ねえ、願って?)
男の子は、泣きながら言いました。
「ほら、今すぐ鳥籠の扉を開けるから。頼む、起き上がってくれ。お前には大切なお役目があるんだろう? こんなところで終わっちゃいけないんだ」
その瞬間、フェリシアには硝子にひびが入ったような音が聞こえました。そして、かつて優しい女の子が話していた言葉を思い出したのです。
――あなたの羽とわたしの瞳は、同じ空の色をしているわね。きっとあなたは、青い鳥。幸せを運ぶ妖精なのね――
ぱらぱらと何かが崩れ落ちる音がしました。
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