4 / 9
(4)
しおりを挟む
結局父は、竜穴にまで車椅子でやってきた。ロデリックだからこそ車椅子に乗った状態の父を運ぶことができたが、普通なら崖下に落とされても文句は言えないほど難しい山道だったのだとこの男はわかっているのだろうか。
切り立った崖の下を覗けば、真っ暗な穴がぽっかりと口を開けている。その先には何も見えない。地獄の底まで繋がっているという噂は案外本当なのかもしれない。
「お父さま、まさかとは思いますが竜穴の中にゴミなんて捨ててはおりませんわよね? 深いから何を入れても問題ないなんて浅はかな考えで、お父さまならやりかねませんもの。竜穴に飛び込むのは構いませんが、ゴミまみれになるのはごめんですわ」
「本当に可愛げのない。どうしてあいつは、お前なんかを残して先に逝ってしまったんだ」
「それは、まだ子どもを産むのは難しいと言われていた年齢のお母さまに手を出したお父さまのせいでしょうね。恨むなら、ご自身の下半身の節操のなさをお恨みくださいませ」
「うるさい、黙れ! これ以上、お前とは話したくない」
「あら、奇遇ですわね。私も同じことを思っておりました」
「ええい、ふざけるなよ! 嫌われ令嬢のくせに!」
「嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。まあ、いいでしょう。そろそろ、時間です。それではお父さま、ごきげんよう」
こんな男の血が自分に流れているとは思いたくもない。屑野郎とは、今日でおさらばだ。長年考えていたことがようやく実現するのだと思うと、すがすがしい気持ちになる。私はにこやかに微笑み、周囲の人々に手を振ると勢いよく竜穴に飛び込んでみせた。
切り立った崖の下を覗けば、真っ暗な穴がぽっかりと口を開けている。その先には何も見えない。地獄の底まで繋がっているという噂は案外本当なのかもしれない。
「お父さま、まさかとは思いますが竜穴の中にゴミなんて捨ててはおりませんわよね? 深いから何を入れても問題ないなんて浅はかな考えで、お父さまならやりかねませんもの。竜穴に飛び込むのは構いませんが、ゴミまみれになるのはごめんですわ」
「本当に可愛げのない。どうしてあいつは、お前なんかを残して先に逝ってしまったんだ」
「それは、まだ子どもを産むのは難しいと言われていた年齢のお母さまに手を出したお父さまのせいでしょうね。恨むなら、ご自身の下半身の節操のなさをお恨みくださいませ」
「うるさい、黙れ! これ以上、お前とは話したくない」
「あら、奇遇ですわね。私も同じことを思っておりました」
「ええい、ふざけるなよ! 嫌われ令嬢のくせに!」
「嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。まあ、いいでしょう。そろそろ、時間です。それではお父さま、ごきげんよう」
こんな男の血が自分に流れているとは思いたくもない。屑野郎とは、今日でおさらばだ。長年考えていたことがようやく実現するのだと思うと、すがすがしい気持ちになる。私はにこやかに微笑み、周囲の人々に手を振ると勢いよく竜穴に飛び込んでみせた。
125
あなたにおすすめの小説
婚約予定の令嬢の評判が悪すぎるんだけど?!
よーこ
恋愛
ある日、ディータはシュレーダー伯爵である父親から、キールマン子爵家の令嬢ルイーゼと婚約することになると伝えられる。このことは婚約するまで世間には秘密にするため、学園でもルイーゼに声をかけたりしないよう父親に命じられたディータは、しかしどうしても気になるあまり、顔を見るくらいはいいだろうとルイーゼの教室に足を向けた。その時に偶然、ルイーゼと話をする機会を得たのだが、ディータがいずれ婚約する相手だと気付かなかったルイーゼは、あろうことがディータに向かって「デートしましょう」「人気のないとろこにいってイケナイことして楽しみましょう」なんてことを誘ってきたものだから、ディータは青褪めてしまう。
自分はなんてふしだらな令嬢と婚約しなければならないのだと憂鬱になってしまうのだが……
ループ中の不遇令嬢は三分間で荷造りをする
矢口愛留
恋愛
アンリエッタ・ベルモンドは、ループを繰り返していた。
三分後に訪れる追放劇を回避して自由を掴むため、アンリエッタは令嬢らしからぬ力技で実家を脱出する。
「今度こそ無事に逃げ出して、自由になりたい。生き延びたい」
そう意気込んでいたアンリエッタだったが、予想外のタイミングで婚約者エドワードと遭遇してしまった。
このままではまた捕まってしまう――そう思い警戒するも、義姉マリアンヌの虜になっていたはずのエドワードは、なぜか自分に執着してきて……?
不遇令嬢が溺愛されて、残念家族がざまぁされるテンプレなお話……だと思います。
*カクヨム、小説家になろうにも掲載しております。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
婚約破棄された私はカエルにされましたが、悪役令嬢な妹が拾って舞踏会で全部ひっくり返します
まぴ56
恋愛
異世界貴族の私は、婚約者に捨てられ――口封じに“蛙”へ。
声も出せず噴水の縁で震える私を拾ったのは、嫌味たっぷりで見下すように笑う妹のミレイだった。
「汚らしいお姉さま――わたくしが連れ帰って、たっぷり苛めて差し上げますわ」
冷たく弄ぶふりをしながら、夜な夜な呪いの文献を漁るミレイ。
やがて迎える、王も出席する大舞踏会。ミレイの千里眼が映す“真実”が、裏切り者たちの仮面を剥ぎ取っていく――
呪いが解ける条件は、最後のひと押し。
姉妹の絆が、ざまぁと逆転を連れてくる。
【完結】白と黒の回合
白キツネ
恋愛
前世が日本人だったフィーア・ローズ伯爵令嬢は自分の髪色が白だからという理由で、悪魔付きと呼ばれる。また、同様に黒髪である、オスカー・ミリスティア公爵子息は呪い持ちと呼ばれていた。そして、その異名をつけたのは両方とも第二王子だった。
二人は家族に愛されている自覚はあったが、自分のことを打ち明けられずにいた。
そして、二人は出会い…
小説家になろう カクヨム、pixivにも掲載しております。
没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。
木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。
不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。
当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。
多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。
しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。
その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。
私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。
それは、先祖が密かに残していた遺産である。
驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。
そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。
それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。
彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。
しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。
「今更、掌を返しても遅い」
それが、私の素直な気持ちだった。
※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)
【完結】義妹に全て奪われた私。だけど公爵様と幸せを掴みます!
朝日みらい
恋愛
リリアナは美貌の義妹イザベラにすべてを奪われて育ち、公爵アルノーとの婚約さえも破棄される。
役立たずとされて嫁がされたのは、冷徹と噂される公爵アルノー。
アルノーは没落した家を立て直し、成功を収めた強者。
新しい生活で孤立を感じたリリアナだが、アルノーの態度に振り回されつつも、少しずつ彼の支えを感じ始め――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる