3 / 5
(3)
しおりを挟む
一週間後の追試当日。校内には桜が満開になっていた。東部地方で有名な桜だが、最近は王都でも春の風物詩になっている。
フィリップ先生が一番好きな花に見守られての試験だ。失敗するはずがない。絶対に合格してみせる!
「今日こそは、まともな料理を作ってほしいものですね」
「当然です。今回は、フィリップ先生にもご満足いただけるものをご用意しました」
剣技、魔法の試験を済ませてから望んだ料理試験。試験に使う料理の材料は、すでに用意されている。訓練校内で自生しているものなら加えることもできるけれど、普通はやらない。植物についての知識が低ければ、成功する可能性よりも、減点される可能性が高くなるからだ。まあわたしはその知識の高さを活かして、美味しくて見た目が悪くなるような植物を探してぶち込んでいたんだけれどね!
「さあ、どうぞお召し上がりください」
わたしが作ったのは、ハンバーグにスープにパンだ。与えられた材料はちょっと硬くて古いお肉だったけれど、包丁で叩いて挽肉にすればそれなりのものができる。そのために訓練校内のハーブの場所を確認していたわけだし。ズルいというなかれ。情報もまた生き残るために必要なのだ。
「お味はいかがですか?」
どうだ、対フィリップ先生を目標に長年あたためてきたレシピの力を思い知るがいい。フィリップ先生は、わたしの料理を全部残さず食べてくれた。あーん、もうそういうところが好き。試験だから一口しか食べなくてもいいのに、ちゃんと食べてくれるとかもう好き、結婚してほしい。
「……ええ、合格です」
「ふふふ、フィリップ先生ったら完食ですね」
「普段の料理も見た目はともかく、味は美味しいですからね」
「このお料理、全部人参がたっぷり使われているんですよ。でも美味しかったでしょ!」
「……ええ、正直驚きました」
本来なら、料理中の技術についても試験の対象となる。でもわたしはフィリップ先生を驚かせたくて、調理中の監督は別の先生になるようにお願いをしていた。普通はこんな要求なんて通らないはずなのだけれど、みんな快くお願いを聞いてくれたのだ。
特に校長先生なんて、「これで二人の新たなる門出をお祝いできるなら、いくらでも協力するとも」と言ってくれたのだけれど、一体なんのことだろう。卒業試験を何度も失敗されると学校としての評価が落ちるから、さっさと卒業して欲しかったのかな。
「フィリップ先生、昔から人参が苦手ですもんね。わたし、人参の味が目立たないように料理ができるようになったんですよ。すごいでしょう」
「カレン、あなたは……」
鉄面皮のようなフィリップ先生の顔が、昔のフィリップ兄さまのようにふんわりと柔らかくなった。きゃー、この笑顔はヤバい。氷の騎士の雪解けよ!
「よっしゃ、これで結婚しても外で仕事ができるぞー!」
結婚生活が破綻して離婚しても、手に職があったら安心だよね! にっこり笑顔で拳を宙に突き出したら、一瞬で表情を失くしたフィリップ先生に腕をつかまれた。
フィリップ先生が一番好きな花に見守られての試験だ。失敗するはずがない。絶対に合格してみせる!
「今日こそは、まともな料理を作ってほしいものですね」
「当然です。今回は、フィリップ先生にもご満足いただけるものをご用意しました」
剣技、魔法の試験を済ませてから望んだ料理試験。試験に使う料理の材料は、すでに用意されている。訓練校内で自生しているものなら加えることもできるけれど、普通はやらない。植物についての知識が低ければ、成功する可能性よりも、減点される可能性が高くなるからだ。まあわたしはその知識の高さを活かして、美味しくて見た目が悪くなるような植物を探してぶち込んでいたんだけれどね!
「さあ、どうぞお召し上がりください」
わたしが作ったのは、ハンバーグにスープにパンだ。与えられた材料はちょっと硬くて古いお肉だったけれど、包丁で叩いて挽肉にすればそれなりのものができる。そのために訓練校内のハーブの場所を確認していたわけだし。ズルいというなかれ。情報もまた生き残るために必要なのだ。
「お味はいかがですか?」
どうだ、対フィリップ先生を目標に長年あたためてきたレシピの力を思い知るがいい。フィリップ先生は、わたしの料理を全部残さず食べてくれた。あーん、もうそういうところが好き。試験だから一口しか食べなくてもいいのに、ちゃんと食べてくれるとかもう好き、結婚してほしい。
「……ええ、合格です」
「ふふふ、フィリップ先生ったら完食ですね」
「普段の料理も見た目はともかく、味は美味しいですからね」
「このお料理、全部人参がたっぷり使われているんですよ。でも美味しかったでしょ!」
「……ええ、正直驚きました」
本来なら、料理中の技術についても試験の対象となる。でもわたしはフィリップ先生を驚かせたくて、調理中の監督は別の先生になるようにお願いをしていた。普通はこんな要求なんて通らないはずなのだけれど、みんな快くお願いを聞いてくれたのだ。
特に校長先生なんて、「これで二人の新たなる門出をお祝いできるなら、いくらでも協力するとも」と言ってくれたのだけれど、一体なんのことだろう。卒業試験を何度も失敗されると学校としての評価が落ちるから、さっさと卒業して欲しかったのかな。
「フィリップ先生、昔から人参が苦手ですもんね。わたし、人参の味が目立たないように料理ができるようになったんですよ。すごいでしょう」
「カレン、あなたは……」
鉄面皮のようなフィリップ先生の顔が、昔のフィリップ兄さまのようにふんわりと柔らかくなった。きゃー、この笑顔はヤバい。氷の騎士の雪解けよ!
「よっしゃ、これで結婚しても外で仕事ができるぞー!」
結婚生活が破綻して離婚しても、手に職があったら安心だよね! にっこり笑顔で拳を宙に突き出したら、一瞬で表情を失くしたフィリップ先生に腕をつかまれた。
43
あなたにおすすめの小説
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。
彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。
――その役割が、突然奪われるまでは。
公の場で告げられた一方的な婚約破棄。
理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。
ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。
だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。
些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。
それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。
一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。
求められたのは、身分でも立場でもない。
彼女自身の能力だった。
婚約破棄から始まる、
静かで冷静な逆転劇。
王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、
やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。
-
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる