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四 白と黒
防犯カメラ
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「防犯カメラの映像を見たい、できたら過去の物も」
山城は社務所に俺を連れていき、中へ通した。
「堀君は、もしかしたらうちの事に巻き込まれたかもしれないね」
山城の父が、俺に映像を見せてくれた。
「参道のほうは全く映ってないな」
しかし、昼間に参拝に訪れた客で何となく気になる者がいた。
夏なのに、ネクタイをした、いかにも固い仕事の年配の男性。
二礼二拍手一礼を慣れた様子でやる。
お賽銭も小銭ではない。
一万円札。
よく見たら、その男性を見守る男達の足が離れた所に映っていた。
「この人、よく来るんですか?」
前の映像を見ても、周期的に訪れている。しかもほぼ朝方。
山城の父が、パソコン画面を覗き込んで、
「あぁ、そうですね。この方は定期的に来られるんですよ。毎月、一日かな。顔が良く見えないので何とも言えませんが、きっと政治家ですね」
「政治家……」
「こんな無名神社に政治家とか来るの?」
山城が驚いている。
「無名ってことはないぞ。ここは道開きの神様、猿田彦大が祀られてるからな」
彼女の父が言うように、経営者や政治家など、成功した者ほど神社に足しげく通う。運を信じ、感謝の心を大切にしてるからだ。
「先輩、この政治家らしき人から何か感じます?」
山城の問いには直ぐ答えられなかった。
なぜなら、この男性自体に、強靭な結界が張られていたからだ。
一見、善良そうに見える、おそらく六十代の政治家。
しかし、オーラが見えない。
白なのか、黒なのか、それとも――。
黙り込む俺に、神主である山城の父は言った。
「君が、霊能あるのは分かる。しかし、あまり色んな人を視ないほうがいい。霊能ってのは無ければ無い方がいいんだ。最後は廃人のように朽ち果てて亡くなった中途半端な霊能者を知っている。それは昔からだよ」
父である安倍晴明もそうであったと、あの滋岡道中も言っていた。
「そうですね……こんなんじゃ、誰一人救えない」
俺が力なく言うと、山城の父が俺の肩を軽く叩き、一言残して、部屋を出て行った。
「普通が一番だ、普通の高校生に戻りなさい」
普通の高校生……。
頭の中でリピートした。
そもそも、“普通”がわからない。
「先輩……?」
山城の声に不安が宿っている。
「堀のことは気になるから、できる限り捜索に協力するけど」
顔を上げて、無理に笑顔を作ろうとすると、頬が引きつった。
「父の言う事は気にしないでください。自分に霊能の欠片もないから嫉妬してるんですよ」
「いや、神道極めるなら霊能は邪魔だから」
十八歳の誕生日まであと五ヶ月。
俺は、前世や陰陽道の事を忘れて、普通の高校生としての時間を楽しめるだろうか?
今からでも家族や友達と、思い出が作れるだろうか?
でも、もう、手遅れな気がした。
山城は社務所に俺を連れていき、中へ通した。
「堀君は、もしかしたらうちの事に巻き込まれたかもしれないね」
山城の父が、俺に映像を見せてくれた。
「参道のほうは全く映ってないな」
しかし、昼間に参拝に訪れた客で何となく気になる者がいた。
夏なのに、ネクタイをした、いかにも固い仕事の年配の男性。
二礼二拍手一礼を慣れた様子でやる。
お賽銭も小銭ではない。
一万円札。
よく見たら、その男性を見守る男達の足が離れた所に映っていた。
「この人、よく来るんですか?」
前の映像を見ても、周期的に訪れている。しかもほぼ朝方。
山城の父が、パソコン画面を覗き込んで、
「あぁ、そうですね。この方は定期的に来られるんですよ。毎月、一日かな。顔が良く見えないので何とも言えませんが、きっと政治家ですね」
「政治家……」
「こんな無名神社に政治家とか来るの?」
山城が驚いている。
「無名ってことはないぞ。ここは道開きの神様、猿田彦大が祀られてるからな」
彼女の父が言うように、経営者や政治家など、成功した者ほど神社に足しげく通う。運を信じ、感謝の心を大切にしてるからだ。
「先輩、この政治家らしき人から何か感じます?」
山城の問いには直ぐ答えられなかった。
なぜなら、この男性自体に、強靭な結界が張られていたからだ。
一見、善良そうに見える、おそらく六十代の政治家。
しかし、オーラが見えない。
白なのか、黒なのか、それとも――。
黙り込む俺に、神主である山城の父は言った。
「君が、霊能あるのは分かる。しかし、あまり色んな人を視ないほうがいい。霊能ってのは無ければ無い方がいいんだ。最後は廃人のように朽ち果てて亡くなった中途半端な霊能者を知っている。それは昔からだよ」
父である安倍晴明もそうであったと、あの滋岡道中も言っていた。
「そうですね……こんなんじゃ、誰一人救えない」
俺が力なく言うと、山城の父が俺の肩を軽く叩き、一言残して、部屋を出て行った。
「普通が一番だ、普通の高校生に戻りなさい」
普通の高校生……。
頭の中でリピートした。
そもそも、“普通”がわからない。
「先輩……?」
山城の声に不安が宿っている。
「堀のことは気になるから、できる限り捜索に協力するけど」
顔を上げて、無理に笑顔を作ろうとすると、頬が引きつった。
「父の言う事は気にしないでください。自分に霊能の欠片もないから嫉妬してるんですよ」
「いや、神道極めるなら霊能は邪魔だから」
十八歳の誕生日まであと五ヶ月。
俺は、前世や陰陽道の事を忘れて、普通の高校生としての時間を楽しめるだろうか?
今からでも家族や友達と、思い出が作れるだろうか?
でも、もう、手遅れな気がした。
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