9 / 33
遼人との過去
遼人との過去①
しおりを挟む蛍光灯の明かりに照らされ、綺麗に輝くビー玉を眺めながら昔のことを思い出す。
遼と仲良くなった日のことを……。
母親が亡くなり、自分を引き取ってもらえる親戚は居なかった。
保健所の職員に連れて行かれ、『今日からここが旭君』の家だと言われて放り出された。
当然、当時の旭には状況がのみ込めず、初めての環境に知らない子供たち。そして知らない大人に囲まれて誰とも心を開けずにいた。
案内されたのは四人部屋。配膳された夕食にも手を付けづに旭は部屋の隅で蹲っていた。時折職員が旭の様子を見に来るものの、俯いてやり過ごす。とにかく家に帰りたかった。
母親と一緒に住んでいたアパートに……。病気で寝込んでいる母のために傍で看病していた旭に優しく『旭、ありがとう』と撫でてくれていた手が恋しい。
「おい、お前。新入りだろ。風呂の時間終わるぞ?」
唐突に声を掛けられて顔を上げると、僅かに釣り上がった目に茶色い瞳。
肌の白い同じくらいの年の男の子が両腕を組んで立っていた。明らかに自分に声を掛けられているがキツイ口調が旭の心を余計に閉ざした。
首を左右に振って拒絶を示すと男の子の表情じゃ更にムッとする。
「風呂入らないとか汚ねーぞ」
「汚くないもん……」
「なら入ってこいよ。じゃないとお前の事、キタナイマンって呼ぶぞ?」
『やーい、キタナイマン』と何度も呼んで煽ってくる。幾ら旭でもそれが否定的な意味で揶揄われていることが分かった。「違うもん」と反発してもずっと煽ってくる声が五月蠅くて耳を塞ぐが声は止まない。
「汚くないもん……。こんなとこ嫌だ。ママのとこ帰りたい……」
「はぁ?ここに来たらもう帰れないんだよ」
「っひく……やだっ。かえりたいっ」
『帰れない』という言葉が旭を悲しくさせ、次第に涙が溢れてくる。堪らずにワンワンと泣いていると、部屋に大きなお兄ちゃんが入ってきた。旭の状態を見るなり、お兄ちゃんは男の子に近づくと男の子の頭目がけてげんこつをした。
「りょう‼新しい子のこといじめんなよ」
「レイ兄ぃ。いってぇじゃんか。俺は苛めてないっ」
男の子は両手で頭を抑えてはお兄ちゃんのことを睨む。きっとこの部屋では一番偉いのだろう。
「じゃあなんで泣いてんだよ。いいから謝れ」
「やだ。俺、悪くねーもん」
「マツー。りょう、新しい子のこと苛めてなかったか?お前、ずっと部屋にいたんだろ?」
部屋の向かいにある二段ベッドの上段にいた中くらいのお兄ちゃんに大きいお兄ちゃんが話し掛ける。
「キタナイマンとか呼んで苛めてた」
上段で本を読んでいたお兄ちゃんは本から顔をあげるとそう答えた。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
寡黙な剣道部の幼馴染
Gemini
BL
【完結】恩師の訃報に八年ぶりに帰郷した智(さとし)は幼馴染の有馬(ありま)と再会する。相変わらず寡黙て静かな有馬が智の勤める大学の学生だと知り、だんだんとその距離は縮まっていき……
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
恋の闇路の向こう側
七賀ごふん
BL
学校一の優等生として過ごす川音深白には、大切な幼馴染がいる。
家庭の事情で離れ離れになった幼馴染、貴島月仁が転校してくることを知った深白は、今こそ昔守られていた恩を返そうと意気込むが…。
────────
クールで過保護な攻め×完璧でいたいけど本当は甘えたい受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる