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愚か者の王子様
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「ロベリア嬢との婚約解消に伴い、ジオルド、お前の王位継承権は剥奪とする」
パーティーが終わり、皆が自分の屋敷へ帰った後、国王の執務室に呼ばれたジオルドは憤慨していた。
父である国王に勝手に婚約破棄を婚約解消にされていた事。
憎き公爵令嬢であるロベリアに罰を与えられなかったこと。
そして今言われた、王位継承権の剥奪。
「何故ですか!何故私が剥奪されなくてはならないのですか!」
「お前は何か勘違いをしていないか?お前が王太子であったのは何故か」
「それは王太子の器であったからで」
「たわけが。そんなわけがなかろう。お前は第二王子で、双子の第三王子もおる。お前でなくても良いのだ。ただ、お前の婚約者がロベリア嬢だったからという理由で、お前は王太子でいられたのだ」
そう。ジオルドは双子で第二王子だった。
第二というからには第一王子もいた。
いたのだが、隣国の皇女に一目惚れをして婿として隣国へ行ってしまった為に、第二王子のジオルドか第三王子が王位継承権第一位となった。
年齢が一歳でも違っていたなら話は簡単だった。
けれど、第二第三王子は双子。序列を付けるには難しかった。
そこで、ロベリアの公爵家の後ろ楯を貰える方が王位継承権第一位とした。
「そんな!それなら第三王子のリカルドも王位継承権は貰えないではないですか!あいつはまだ婚約者がいないはずです!」
「先日、男爵令嬢と婚約が纏まったと伝えただろう。また話を聞いていなかったのか」
ため息混じりに言う国王に、尚も真っ赤な顔で反論するジオルドに、周りに待機していた騎士達も残念なものを見る目になっている。
「男爵!!たかが男爵なら、マリアでも良いではありませんか!!優しい心を持つマリアなら国母に相応しいし、平民の気持ちもわかるなら平民からの支持も」
「お前は馬鹿か?どこをどう解釈しているかは知らんが、男爵と平民では雲泥の差がある。そんなこともわからんのか。それに、そのマリアとやらが支持されるというのも浅薄。調べた所、そのマリアとやらは平民の中でも下の部類にあたる者だと言うではないか。同じ平民だとして、自分よりも下の者が上に立つなど…羨み妬む対象になる方が多いであろうな。そして、貴族からは蔑まれる。はたして、そのマリアとやらは幸せになれると思うか?」
「そんな…そんなことは…」
現実を突きつけられ、真っ青になってカタカタと震えながら首を横に振るジオルドに「そんなことも考えつかんなど、やはり王の器ではないな」と独りごちた国王は座っていた椅子から立ち上がると、ジオルドを冷たい瞳で見下ろした。
「それに、今回の件で令嬢を持つ全ての貴族から、万が一にもお前がロベリア嬢との婚約破棄を言い出し次の婚約者を探すとしても、娘を婚約者にする事は拒否すると言われてな。そうなると、お前を王族に残すとすれば王位継承権剥奪が妥当。そして、もしマリアとやらを妻に娶るのならば王族…いや、貴族位剥奪だ」
冷たい瞳で「良く考えろ」とだけ伝え、国王は護衛騎士達を引き連れて部屋から出て行った。
取り残されたジオルドは力無く床に膝を付き、突きつけられた現実に絶望するしかなかった。
「そういえば…陛下。ジオルド殿下にお伝えしなくて良かったのですか?」
窓から月の明かりが差し込む長い廊下で歩く国王に、すぐに守れるよう斜め後ろに控えるように歩く一人の騎士が聞く。
何の事かわかっているらしい国王は苦笑して立ち止まり、窓から見える月を見上げた。
「私も親馬鹿なものでな。流石にこれ以上あやつを傷付けるのはな…」
「そうですか…」
「まぁ、私が言わなくても、いつかは…とは言っても近日中になるだろうが…わかるだろうよ」
「…そうですね…」
「まぁ、その時は父親として慰めてやるさ…」
ジオルドの知らない三つの真実。
一つ目は、婚約解消のだいぶ前からジオルドの元婚約者になったロベリアを欲する貴族達から縁談の話が持ち上げられていた事。
二つ目はジオルドが愛した平民のマリアは、実は『娼婦』と言う職業で、ジオルドを愛してはおらず、仕事としてジオルドと関係を持っていたこと。
そして三つ目はマリアには他に愛する男がいて結婚もしている事。
マリアの身辺調査をした際にわかった事実だったが、ジオルドがこの真実を知ったときにどれだけのショックを受けるのか。
我が子を憐れに思いつつも自業自得だと国王は長い廊下を歩き出した。
パーティーが終わり、皆が自分の屋敷へ帰った後、国王の執務室に呼ばれたジオルドは憤慨していた。
父である国王に勝手に婚約破棄を婚約解消にされていた事。
憎き公爵令嬢であるロベリアに罰を与えられなかったこと。
そして今言われた、王位継承権の剥奪。
「何故ですか!何故私が剥奪されなくてはならないのですか!」
「お前は何か勘違いをしていないか?お前が王太子であったのは何故か」
「それは王太子の器であったからで」
「たわけが。そんなわけがなかろう。お前は第二王子で、双子の第三王子もおる。お前でなくても良いのだ。ただ、お前の婚約者がロベリア嬢だったからという理由で、お前は王太子でいられたのだ」
そう。ジオルドは双子で第二王子だった。
第二というからには第一王子もいた。
いたのだが、隣国の皇女に一目惚れをして婿として隣国へ行ってしまった為に、第二王子のジオルドか第三王子が王位継承権第一位となった。
年齢が一歳でも違っていたなら話は簡単だった。
けれど、第二第三王子は双子。序列を付けるには難しかった。
そこで、ロベリアの公爵家の後ろ楯を貰える方が王位継承権第一位とした。
「そんな!それなら第三王子のリカルドも王位継承権は貰えないではないですか!あいつはまだ婚約者がいないはずです!」
「先日、男爵令嬢と婚約が纏まったと伝えただろう。また話を聞いていなかったのか」
ため息混じりに言う国王に、尚も真っ赤な顔で反論するジオルドに、周りに待機していた騎士達も残念なものを見る目になっている。
「男爵!!たかが男爵なら、マリアでも良いではありませんか!!優しい心を持つマリアなら国母に相応しいし、平民の気持ちもわかるなら平民からの支持も」
「お前は馬鹿か?どこをどう解釈しているかは知らんが、男爵と平民では雲泥の差がある。そんなこともわからんのか。それに、そのマリアとやらが支持されるというのも浅薄。調べた所、そのマリアとやらは平民の中でも下の部類にあたる者だと言うではないか。同じ平民だとして、自分よりも下の者が上に立つなど…羨み妬む対象になる方が多いであろうな。そして、貴族からは蔑まれる。はたして、そのマリアとやらは幸せになれると思うか?」
「そんな…そんなことは…」
現実を突きつけられ、真っ青になってカタカタと震えながら首を横に振るジオルドに「そんなことも考えつかんなど、やはり王の器ではないな」と独りごちた国王は座っていた椅子から立ち上がると、ジオルドを冷たい瞳で見下ろした。
「それに、今回の件で令嬢を持つ全ての貴族から、万が一にもお前がロベリア嬢との婚約破棄を言い出し次の婚約者を探すとしても、娘を婚約者にする事は拒否すると言われてな。そうなると、お前を王族に残すとすれば王位継承権剥奪が妥当。そして、もしマリアとやらを妻に娶るのならば王族…いや、貴族位剥奪だ」
冷たい瞳で「良く考えろ」とだけ伝え、国王は護衛騎士達を引き連れて部屋から出て行った。
取り残されたジオルドは力無く床に膝を付き、突きつけられた現実に絶望するしかなかった。
「そういえば…陛下。ジオルド殿下にお伝えしなくて良かったのですか?」
窓から月の明かりが差し込む長い廊下で歩く国王に、すぐに守れるよう斜め後ろに控えるように歩く一人の騎士が聞く。
何の事かわかっているらしい国王は苦笑して立ち止まり、窓から見える月を見上げた。
「私も親馬鹿なものでな。流石にこれ以上あやつを傷付けるのはな…」
「そうですか…」
「まぁ、私が言わなくても、いつかは…とは言っても近日中になるだろうが…わかるだろうよ」
「…そうですね…」
「まぁ、その時は父親として慰めてやるさ…」
ジオルドの知らない三つの真実。
一つ目は、婚約解消のだいぶ前からジオルドの元婚約者になったロベリアを欲する貴族達から縁談の話が持ち上げられていた事。
二つ目はジオルドが愛した平民のマリアは、実は『娼婦』と言う職業で、ジオルドを愛してはおらず、仕事としてジオルドと関係を持っていたこと。
そして三つ目はマリアには他に愛する男がいて結婚もしている事。
マリアの身辺調査をした際にわかった事実だったが、ジオルドがこの真実を知ったときにどれだけのショックを受けるのか。
我が子を憐れに思いつつも自業自得だと国王は長い廊下を歩き出した。
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