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サロンへ招待1

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 クロレンス王立学院には、学生が申請して使えるサロンがある。貴族の階級によって使用可能なサロンは異なる。公爵令嬢であるシェリは、最上級のサロンの予約を申請した。
 申請が通ったと聞くとある女子生徒に接触を試みた。


「マリーベル・ライトカラーさんね?」
「は、はい……っ」


 件のマティアスの元主人。
 薄い金髪に空色の瞳の、弱気な少女といった印象だった。
 

「先日、ヴェルデ様が貴女に元従者について話を聞きに来たでしょう?」
「はいっ」
「その件について、わたしからも貴女に話があるの。都合が良ければ、今日の放課後サロンに来てくれるかしら?」
「も、勿論です。マティが危ない目に遭っているとラグーン様に言われてから、ずっとマティが気になってて」


 主人と従者という関係ながらも、親戚という近い関係と愛称で呼ぶことから2人の仲が親しかったのが伺える。
 マリーベルにサロンの場所と時間を告げ、早足に去った。アデリッサが何を企むにせよ、取り巻きを使ってシェリを監視するのは造作もない。
  

「あら?」


 前方から歩いて来るのはミルティー。随分と眠そうだ。
 歩きながら船を漕いでいるのは気のせいじゃない。


「ミルティーさん」
「! あ、お、オーンジュ様!」


 シェリに呼ばれて眠気が吹っ飛んだのか、此方が驚く程にビックリされて、シェリが後ずさってしまった。


「夜更かしでもしたのかしら?」
「は、はい。ちょっと【聖女】の魔法の練習をしていたら、朝になっていて……」
「そう」


 【聖女】の魔法の難易度はシェリでは到底知り得ない。まだまだ未熟とはいえ、ミルティーは努力を怠らない少女。だが、詰めすぎると却って良くない結果を引き起こす。ミエーレも、魔法の研究が楽しいからと夜更かしし過ぎて寝不足になり、万年目の下の隈が消えなくなった。


「食堂に行きましょう。眠気覚ましのコーヒーをご馳走しましょう」
「え? 宜しいのですか? ぜひ!」


 シェリも丁度カフェモカを飲みたい気分だった。
 ミルティーと一緒に食堂に着いた。カウンターへ行き、受付にコーヒー(ミルク多め)とクリームたっぷりのカフェモカを注文。番号が書かれた札を持ち、テーブルに目を向けると。


「あれ? オーンジュ様。彼方で寝ていらっしゃるのは」
「ミエーレ……」


 テーブルに突っ伏して寝ている金色の頭を発見。後ろ姿だけで相手がミエーレと判明した。2人はミエーレの眠るテーブルに座った。
 ミルティーが彼の寝顔を凝視する。


「こうやって見ると、ミエーレ様ってとても綺麗ですよね」
「昔から、顔だけは良いもの」
「オーンジュ様とミエーレ様は、昔馴染みなんですよね?」
「そうよ。父親同士の仲が良いから、小さい頃からよく遊んだわ」
「レーヴ殿下と会う前から交流があったのですか?」
「ええ」


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