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サロンへの招待3
しおりを挟むマリーベルの話によると、アデリッサがマティアスに目を付けたのは父ナイジェル公爵に届け物を渡しに魔法研究所へやって来たのが始まりと言う。
所長を務めるライトカラー男爵とは親しく、アデリッサが忘れ物を届けに行った時、男爵と共にマティアスもいたのだ。
「マティはよく父の手伝いをしていたので、研究所へはよく行っていたのです」
「なるほど。そこでアデリッサと会ったのね」
「はい。恐らくですが、父がナイジェル公爵様にマティの自慢話をアデリッサ様がいる前でしたのが原因かと思うのです」
親戚であるマティアスの魔法の才能は男爵も将来有望だと太鼓判を押すほどのもの。ヴァンシュタインの天才と張り合えるといつも自慢していた。マティアス自身は恐縮してばかりで尊大な態度は決して取らなかった。
マティアスの魔法の才能とついでに見目の良さに目を付けたアデリッサが、無理矢理彼を従者に欲したのはそれからすぐのこと。
「マティアスが従者になる前、あなたの周囲で異変は起きなかった?」
「……その、非常に申し辛いのですが……私物が無くなったり、上から水を掛けられたり物を落とされることが増えました」
「やっぱり……」
取り巻きを使ってマリーベルに嫌がらせをし、止めてほしかったら自分の従者になれとマティアスに迫ったのだろう。魔法研究所にいることは知ったのだ、後は彼が来る日を狙って会い、脅して無理矢理従わせたのだ。
「マティがいきなりアデリッサ様の元へ行くと言った時は悲しかったです……でも、マティがいなくなった途端、嫌がらせがなくなったからもしかしたらとは思っていました……」
「男爵にそのことは……」
「いえ……心配させてはいけないと話していません。父は、マティが公爵令嬢に気に入ってもらえて良かったと喜んでいるので……私からは……」
「……」
魔法の研究に熱心な変わり者といえど、高位貴族と繋がりを持ちたいのはどこの貴族も同じ。
暗く、俯くマリーベルに安心させてやれる言葉はシェリにはない。
事が公になれば、無理矢理とはいえマティアスも罪に問われる。
アデリッサの行動はまだまだ見張る必要がある。
が、同時に早く自分も行動しないと、予想している、自分に“魅了の魔法”を使ってレーヴに足蹴りにする作戦を実行される。
予想でしかないのに、確信が持てるのはアデリッサの行動が読みやすいからだ。
「マティアスがアデリッサに何をさせられているかは、ごめんなさい、まだ詳しくは言えないわ」
「はい……」
「でも、彼が被害者というのは此方も把握してる。なるべく、罪が軽くなるように動くつもり。そこは心配しないで」
「ありがとうございます……!」
羨ましい、と抱く。
2人は幼い頃からの付き合いで、お互いの気持ちを確認し、時間をかけて絆を深めていった。
自分とレーヴも幼い頃に婚約を交わしたのに、1度も心を開いてもらえなかった。実際は開いていたらしいが、肝心の本人に一切伝わってない。
レーヴを諦めるからと贈り物は処分済み。
だって、彼は元には戻れないから……。
「……」
今更になって、処分は早計だったと後悔し始めたシェリだった。
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