思い込み、勘違いも、程々に。

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行くしかない

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「……のか……どういうことだ……」
「……?」


 呆然としたまま何事かを零されるも、声が小さくて聞き取れない。私はまずい発言をしてしまった? 

 悶々と考えても浮かばない。リアン様を見上げ直しても青水晶の瞳に翳りがあり、視線が合わない。この光景を誰かに見られたら、それが女子生徒だったら……大変だ。
 リアン様、と言いかけた時。リアン様は私を一瞥すると早足で行ってしまった。


「……」


 1人残された私はリアン様を見ているだけしかなかった。

 あの後、教室に行くがリアン様はいなかった。授業開始前には戻られたが雰囲気が違う。顔を見られなくて私は前を向けない。
 今日初めてまともに会話をした私なんかが婚約の問題に口出しをしたのが原因だったのだろう。デリケートな話題を迂闊に出した私の責任だ。
 ちゃんと謝らないと。
 でも、何時謝れば……。

 お昼は王太子殿下と食べられ、放課後は生徒会で忙しくする王太子殿下の手伝いをしているリアン様。彼にこっそりと接触するタイミングが全くない……。
「フィオーレ」溜め息を吐くと前の席に座るアウテリート様に心配された。


「どうしたの? さっきから、ずっと溜め息を吐いてばかり」
「いえ……ちょっと考え事を……」
「そう? あたしで良ければ、相談くらいは乗れるわよ」
「大丈夫です。大したことじゃないですから」


 無理に笑って誤魔化した。全然大したことなんかじゃない。十分大したことだ。私個人としたら。

 昼休憩は1人になった。
 心配されたが私の気持ちを汲んでアウテリート様は、必要以上に言及してこなかった。彼女の優しさに感謝しつつ、1人教室を出ようとした。


「!」


 まただ……新学期が始まってから感じるあの視線が。
 チラリと教室内を見ても、やっぱり誰も私を見ていない。
 本当に何なのだろう……。


「あ……」


 リアン様がアウテリート様に話しかけてる……。


「……」


 私は行く宛てもなく廊下を歩いた。羨ましい……気も張らず、リアン様と話せるアウテリート様が。
 いくら考えてもリアン様の気を損ねた原因が全然見つからない。
 沈んだ気持ちのままでは、屋敷に戻ってお父様にエルミナを生徒会に勧める話も言えない。
 どうにかして気持ちを元に戻したい。

 そうなるとまずは何か食べないと。
 普段はアウテリート様、2人で行く食堂へ1人で赴いた。此処は毎日人が多い。特に昼休憩時は。
 手軽なパンと飲み物を買おう。

 列の最後尾に並んだのはいいけれど……長い……。1つでもパンを買えるといいけど。

 漸く私の番になった。幸運にもコルネットが1つ余っていた。
 コルネットとホットミルクの入ったマグカップを受け取り、庭園へ向かった。マグカップは後から食堂へ返せば持ち運び自由。
 人があまり来ない奥へ行こうとしたら、朝以来聞いてない声に呼ばれて肩が跳ねた。ホットミルクを零さなくて良かった……。


「……リアン様……?」


 彼、リアン様は普段通りの眠たそうな表情で私を見下ろす。青水晶の瞳から翳りは消えていた。


「1人なのだろう? 俺とおいで。外より、中で食べた方が安全だ」
「あの……でも……」


 リアン様は私の返事を待たず、行ってしまう。無視をして庭園へも行けない、かと言って格上の公爵令息であるリアン様の誘いも断れない。
 行くしかない……。
 私は少し先で待っていてくれたリアン様に付いて行った。
 外より、中で食べると安全という意味がよく分からない。天気は快晴。雨の降る気配はないのに。

 ……この時の私は、自分のこととリアン様のことで頭が一杯で遠くの方から、私を睨み付けるリグレット王女殿下の視線に気付けなかった。


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