思い込み、勘違いも、程々に。

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 取り巻きの令息を連れて立ち去って行った王女殿下が見えなくなると「殿下」とアウテリート様が険しい声色で説明を求めた。


「どうなさるのですか?」
「分かっているだろう。隣国の公爵家、それもグランレオド家のご令嬢に無礼を働いた王女を陛下に叱責してもらうのさ」
「してくれますの?」


 娘に甘い陛下がするとは私でも思えない。


「父上とてそこまで愚かじゃないだろう。愛人が何を言っても、この国では隣国……特に王家、公爵家は決して敵に回したくないのさ。君は隣国の国王陛下と親しい」
「私情で動く方ではないと思いますけれど……。まあ、私を馬鹿にしたとあらば、この国の王族と言えどお父様も黙ってはいませんが」
「長話をするつもりはない」


「フィオーレ嬢」と今度は私が相手になる番となった。立ち上がってお礼をしようとするも手で制された。せめてお礼を述べようとしても首を振られた。


「君には申し訳ないと思っている。リグレットは必ず大人しくさせるから、もう少しだけ辛抱してくれ」
「私は何もありませんから、どうかお気遣いなく……」
「そういう訳にはいかない。君にはエルミナ嬢という、仕事熱心な生徒を推薦してくれた恩もある」
「エルミナが真面目に努力をしているだけで私が褒められる謂われは」
「まあ、そう言わないで」


 本当にないのだ。頑張って生徒会の仕事を熟しているのはエルミナの意思であり、努力の賜物である。
 エルミナに向いても恥ずかしげに頬を赤らめ、俯きがちになってしまっていた。背中を触ると困ったように私を見上げるから、大丈夫だと笑った。


「リアン。おれは帰るから、この後は頼んだ」
「ああ……」


 え!? と驚いたが時遅し。
 城に戻って話し合いをする為に王太子殿下は慌ただしく走って行ってしまった。アウテリート様は席に戻り、温くなったクリームパスタを再び食べ始めた。

 リアン様は此方に来ると眠そうな顔で私を見た。


「リグレットは今日学院にはいないが何があるか分からない。特にフィオーレ嬢。君はリグレットに目を付けられている。1人で行動はしないことだ」
「は、はい」
「ねえリアン様。私、今日は殿下が抜けた生徒会のお仕事を手伝おうと思うの。だから放課後になったら、フィオーレを正門まで送り届けてほしいの」
「アウテリート様!?」


 え?! 
 エルミナがリアン様を好きで、リアン様もエルミナが好きだと話したのに、2人が結ばれるよう協力してくれると約束してくれたのに私とリアン様を一緒にさせるだなんて。


「わ、わたしもその方が安全なのでお願いします」
「エルミナまで」
「お姉様はちょっとのほほんとし過ぎているのです。しっかりとした人といた方が良いに決まっています」
「のほほんって……」


 ちょっと能天気かなとは自分の事ながら呆れるけれど、のほほんと表現される酷さはない。
 困った顔をしてもアウテリート様もエルミナも引いてくれない。
 ……ちょっとだけリアン様と2人になり難い。手首にされたキスの事があるから。会話をしたのもつい最近で接点なんて王太子殿下を通してか、アウテリート様を通してかのどちらかの私にあんなキスをするなんて。理由を知りたいけど怖くて聞けない。


「フィオーレ嬢」
「! は、はい」
「2人もこう言っているんだ。それで良いだろう」
「……はい」


 ここまで来たら覚悟を決めるしかない。
 リアン様を見上げると……微かに笑みを浮かべられた。
 いつも眠そうか、無表情しか見ないリアン様の初めての笑った御顔……。

 一気に顔が熱くなる。見られては困るとコルネットを食べるフリをして俯いた。

 食事が終わった後、アウテリート様に耳がとても真っ赤だったと揶揄われた。


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