思い込み、勘違いも、程々に。

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先王の願い故に②

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 1つに纏められていた本来の色がするりと現れた。驚愕に瞠目する国王と愛人。2人の違いは、彼の人の正体を知っているか、麗しい見目に見惚れてか、である。
 前者は国王、後者は愛人。見る見るうちに顔を青くする国王を眠そうながらもその人は捉えて離さない。


「あ……有り得ない……っ、に、偽者だっ、本者なら有り得ない!」
「へ、陛下、一体何が」


 困惑とする愛人を抱き締め得体の知れない化け物から守る体勢に入られ、小さく欠伸を零した彼は自らが落とした茶髪のカツラを拾った。


「先王は……たった1人の王子であるからと其方を甘やかしてしまったと後悔していた。気持ちは分からないでもないが先王の過ちと言うのなら、唯一がそれだろう」
「戯言を! 貴様は隣国が遣わした偽者だ、本者の訳がないっ!」


「残念だけれどね陛下」と割って入ったオルトリウスは場違いな微笑を浮かべ「この人は本者。君が王太子だった頃顔を合わせていた隣国の先王本人さ」と告げた。嘘だ! と国王は叫んだ。


「私の父と隣国の先王、そして貴方の年代はほぼ同じ。なのにその者は」


 国王は下から上まで彼を目で追った。離宮で最も日当たりの好い部屋で療養している父は、病を患ってはいるが元気に過ごしているものの、歳には勝てないようで年相応の見目をしている。対し、オルトリウスは同じ年代の者と比べると若く見える。
 しかし国王がそうだとは信じない相手の見目は若作りの言葉では済ませられない。

 どこをどう見ても20代の美しい男性。紫がかった銀糸と青の瞳……特徴だけで言えば隣国の先王と同じ。年齢だけが合わない。


「思い出してみなさいよ、国王陛下。隣国の先王がこの国に来ていた時を」


 オルトリウスに言われ国王は過去の記憶を探った。
 隣国との関係が本格的に改善したのは、国王が10歳に満たない頃。両国の関係を国民や周辺諸国にアピールする為のパーティーを開催した際、隣国の王は目の前にいる男と変わらない容姿をしていた。
 それから何度か目にしていたが印象に強く残ったのは、現在の国王シリウスが即位した際の戴冠式。王太子へ王位を譲る儀にての先王は……異様な姿だった。顔はベールによって包まれ、目に見える素肌は全て隠されていた。異様な姿に若干恐怖を抱いたのを思い出した。

 その異様な姿で1度だけ父を訪ねたことがあった。友好国の王に会いに来たというのに、全身を隠す姿は何事かと自身は怒りを覚えたのに、父は先王を歓迎していた。


「父上は……知っていたから、なのですか……? 隣国の先王が肌を隠していた理由を」
「ああ……彼には随分と世話になった。私がああしていた理由を聞いても変わらなかった。こうしてやって来たのも恩があるから故。国王よ……其方が愛する者とその娘を今後も王族でいさせたかったのなら、王としての務めを果たすべきだったのだ」
「私は果たしていた! その上でリグレットの望みを叶えてやりたかった! 父が娘の願いを叶えたいと思って何が悪い」
「あのね……」


 どんな言葉を重ねようと国王は理解しないと悟ったオルトリウスと隣国の先王はそれぞれ小さく息を吐いた。個人としては兎も角、国王として国の為、民の為に尽くしてきた功績は認められるもの。王妃セラフィーナもその点に関してだけは国王を評価している。恋愛脳と言うべきか、愛する者を守ろうと幸せにしてやろうという気持ちは2人にだってある。

 隣で愛人が国王に便乗して喚く。
 不意にオルトリウスはとある旨を訊ねようと口を開き掛けるも、隣から待ったを掛けられた。
 オルトリウスを制止した彼はジッと国王と愛人を見下ろし、軈てふいっと逸らした。


「なんだったの?」
「いや……彼の女神ならば、この2人をどう見るかと……」
「ふむ……どうも見ないと思うよ。あの女神様は人間が好きで、尚且つ、純粋な心を持った人間の願いは叶えてやりたくなる。彼等にはないものだから無理だろうね」
「そうか」


 気紛れに人間の願いを叶える隣国の女神が原因で面倒が起きていても女神の力は絶大で、滅びを待つだけの国を建て直せたのも女神の力あってこそ。
 但し、力加減というものを知らないせいで現在の王族数名が普通の人間の枠から外された。


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