思い込み、勘違いも、程々に。

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先王の願い故に①

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「1つ、聞いていいかい」とオルトリウス。


「愛人の子はいたくリアンちゃんを気に入っているようだけれどきっかけとかあったのかい」
「さあ。あの愛人の子ですから。身分と見目に目が眩んだのでしょう」


 出会った原因はアウムルに会いに来ていたリアンを見てしまったせい。同じ父を持つと言えど、母親の身分が圧倒的な差があり、王女だとしても王太子たるアウムルの人生に関わらせる気は更々なかった。リグレットを溺愛している国王のせいで王妃セラフィーナの命であっても、リグレットの行動を制止できる者がおらず、訪れを禁止していたアウムルの私室に突入してしまったのだ。
 すぐにセラフィーナの耳に入り即刻リグレットを部屋から追い出したがリアンを一目見て気に入ったのはあの愛人の娘なだけあると悟った。


「エーデルシュタイン伯爵令嬢への婚約の打診もこれで話が進むでしょう。ロードクロサイト家には悪い事をしたわ……」


 セラフィーナの目から見ても息子の友人が誰を好きか、はすぐに分かった。子供達が幼い時、何度か王妃主催のお茶会で招待したことがあった。主催者として招待客が問題なく過ごせているか全体を見て回っている際、そこは親心かついアウムルがどうしているか気になって目が向いてしまった。アウムルと一緒にいたリアンがずっと見ていたのがフィオーレ。隣国の公爵家と同じ紫紺色の瞳、珍しい青みがかった銀髪、母親に似た非常に愛らしい女の子に目が釘付けで何度アウムルがリアンを呼び掛けていたか。フィオーレの方も時折リアンを見ていたのをセラフィーナは目撃しており、微笑ましい気持ちを持ったのは覚えている。

 これで進展があればいいと呟くとアウムルが訪れた。


「母上」
「アウムル。愛人の娘の件について報告は受けています。陛下に絆されない見張りを配置したのではなかったの」
「おれの人選ミスです。既に例の騎士は拘束済み、リグレットは先程離宮に放り込んだのを確認しました」


 2度目の脱走が起きないよう、新しく配置した見張りは宰相お勧めの者にした。決して国王達の甘言に惑わされない優秀な騎士だ。
 リグレットがリアンやフィオーレの許へ突撃してすぐに駆け付けたのが幸いし、2人に大きな迷惑を掛けないで済んだ。突撃されたこと自体迷惑であろうが大と小で表すと小にしたい。




  

 ——離宮に連れ戻され、国王や愛人とは別の部屋に入れられたリグレットは鍵を掛けられた扉を叩いていた。


「ねえ! 出してよ! パパとママのいる部屋にしてよ!」


 1人は嫌だと訴え続けるが外の見張りは一切リグレットの声に応えない。
 次第に手が痛く、喉も痛くなって、扉を叩くのも叫び声を上げるのも止めた。部屋には寝台と丸テーブルと椅子しか置かれていない。王宮の私室には、最高級の家具や絵画、ぬいぐるみが沢山あったのに此処には質素で必要最低限の家具しかない。ドレスも今着ているのと所持している中で最も安いドレスを数着だけ所持するのを許された。ただ、装飾品の類の所持は1つも許されなかった。


「パパぁっ、ママ……」


 寝台に座り込み、膝を抱え泣くリグレットを抱き締めてくれる父と母とは別室。1人ぼっちで泣き続けた。

  

 リグレットとは別の部屋で隔離されている国王と愛人は、今し方脱走したリグレットが連れ戻され別室にいるとやって来たオルトリウスに聞かされ激昂した。オルトリウスの側にいる眠そうな人はうつらうつらとしながらも、蒼の瞳はジッと国王を映している。


「そこは怒るのではなく、無事で良かったと安心するところだよ」
「何を言う! リグレットを1人別の部屋にいさせられて安心など出来る筈がない! 幾ら先王の遺言があろうと他国の王族が干渉する等、我が国への侵略行為と同等だ!」
「侵略する気は更々ないから安心しておくれ。仮令、その気があったとしても此方の国にはフリューリングとアリストロシュがいるのを忘れては困るよ?」
「っ」


 2つの貴族家の名を出され、言葉を詰まらせた国王。その名を知らない愛人が側で喚くがオルトリウスは気にせず、側にいる眠そうな人へ視線をやった。


「国王陛下に何か言いたいことはないのかい」
「……」


 無言で頷きオルトリウスの前に出たその人は、警戒心を極限まで上げて見上げる国王を冷たく視界に入れた。


「誰だ、貴様は」
「……我が子が可愛いと思うのは、親であるなら当然の感情だ。馬鹿な子でも愛おしいと」


「けれど」と言葉を切り、徐に手を上げ髪に触れた。


「親であるなら、時として子に厳しく接しなければならない。愛おしいと、可愛いと思えるなら将来の為に尚更」


 少し力を入れて髪を引っ張れば、茶髪はするりと落ち、隠していた本来の色を見せた。

  

  
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