9 / 44
9話
しおりを挟む夢の出来事だと思考が停止してくれれば、ぼんやりとしたまま身に降りかかっている現状から目を逸らせるのではないかと。抱く余裕さえ、最早ない。
冷たいメルの手がゆっくりと豊満な膨らみを脇から掬うように寄せ、全体を掌で覆われると「んうっ」とラヴィニアが声を漏らした。メルの掌が胸の先端に当たった。小さな痺れが走り、思わず声が出た。
体にメルが掛けた重力の余韻がまだ残っているせいで動くのが億劫で抵抗する意思が湧かない。無理矢理にされたキスの時も魔力を注がれた。その意味を理解しようと考えるよりも、メルが胸に顔を近付けて先端を舌で触れた。
「きゃ……!」
今度は大きな痺れとなってラヴィニアの体を得体の知れない感覚が襲った。
先端を舌でコロコロと転がせて、硬くなったら歯を使って甘噛みされ、口に含んでいない方はメルの手が止まりなく弄ってくる。
指先で引っ掻かれたのと歯に挟まれて舐められるのを同時にされ、声は甘さを濃くした。
無理矢理なのにメルに触れられて気持ち悪さはない。
気持ち良さしか感じられない。
「あ、や、メルっ、やだ怖いっ」
「ん……怖い? 俺以外の男の体を何度も見たんだろう? 怖いわけあるか」
「ああ……っ!」
服のボタンを数個しか留めず、肌を露出させたメルに照れて理由を話したら揶揄われ、ついムキになって嘘の話を放った。
異性の体を見たという発言はあまりに軽率だった。つまり、今と同じことを何度もしたと自分で言っているのと同じ。
違う、と叫べばメルは止めてくれるだろうか。……でも、とラヴィニアは飽きずに胸へ愛撫を施される気持ちよさに喘ぎながら思考する。
メルは自分を捨てて酷い言葉を放ったラヴィニアを憎んでいる。傷付いた心をプリムローズに癒してもらうのではなく、自分に報復することでメルが満足するなら……。このまま抱かれてしまえばメルのモノになれる、メルが飽きるその時まで側にいられるのなら。
「メルが乱暴に、するから、だよ」
「これが? 乱暴ねえ……」
一か月前、悪女になりきってメルを拒絶した。なら、今も嫌な女になってメルを拒絶したらいい。
何時か、メルに飽きられても未練がなくなるくらい酷く扱われるように。
胸から下へ下がりながら肌への口付けは忘れず、触れられる度にぴくん、とラヴィニアの体は反応する。おへそに口付けられ、擽ったさで体が跳ねた。気にした風もなくメルに両脚を無理矢理開かれた。
「やだあ……!」
誰にも見られたことがなく、自分ですら見ない場所を見られて羞恥心が一気に集中した。手で抵抗しようにも体はやっぱり動いてくれない。
「胸だけでかなり感じたんだな。見るだけで分かるくらい濡れてる」
「っ!」
どういう意味を持つか分からないが嘲笑う言葉に違う意味の恥ずかしさが襲う。嫌がるラヴィニアの声は聞こえている筈なのに、お構いなしのメルが両脚を広げたまま間に顔を近付け下から上へ舐めた。
胸の愛撫とは比べられない強い刺激に襲われ声が溢れる。表面全体を舐められている最中、ある場所に吸い付かれ一際大きな声で啼いた。
「は……はあ…………いたっ!」
息を切らしても休憩は与えられず、中に熱い刺激が走った。気持ちよさなんて皆無の痛みと熱が襲い掛かった。
「痛い、メル、痛い!」
「すぐに慣れる」
「無理ぃ、いた……痛い……!」
胸の愛撫と中心を舐められていた快感はあっという間に消え去り、中を無理矢理開かれる強い痛みに涙を流すしかない。口で何度訴えてもメルは聞き入れず、更に中を広げられる感覚と強い痛みが襲う。
目を強く閉じ歯を食い縛っても止められない悲鳴がラヴィニアから絶え間なく叫ばれているのに無理矢理中を広げるメルの動きは止まってくれない。
「痛いって言う割にはかなり濡れてるな」
「メル、お願い……もっと優しく、優しくやって……!」
「ラヴィニアの態度次第、かな」
態と音を鳴らして水音を聞かされ恥ずかしくて耳まで真っ赤にしても、メルが最後に言った言葉がどういう意味なのか知りたかった。
ラヴィニアに強烈な痛みを与えていたものが抜かれた。体を動かせないラヴィニアは、濡れている二本の指を舐めたメルが自分を見て笑って初めて入れられていたのが指だと知った。先程の痛みで幾つもの涙が瞳から零れた。指で雫を拾われ、それを舐め取ったメルがゾッとする程の艶笑を見せた。
「俺の気分次第でラヴィニアをキングレイ家に戻すこともキングレイ家よりも酷い場所に放り込むこともできる」
「……」
今のラヴィニアは実家から除籍された元侯爵令嬢。メルの気紛れで引き取られただけで、外に放り出されてしまえばただの小娘でしかない。
「……私は……メルに何をしたらいいの……?」
「ずっと傍にいろ。それだけでいい」
要するにどんな風に扱っても困らない存在が欲しいだけだったのだと解釈しそうになるとメルに口付けられる。プリムローズとキスをした唇とキスをするのは嫌なのに、この状況で身を甘く蕩けさせるキスをされると抵抗する意思等最初から芽生えない。
メルのキスに夢中になって痛みを意識の隅へ追いやりたい。メルから注がれる魔力を苦しいながらも飲み込むが量が多い。飲んでも飲んでもメルの魔力を注がれ、顔を逸らして逃げたくても顎を強く掴まれ動かせずにいた。
「んう……んんっ……! んあ……くる、しい……よ……メル……!」
「……我慢しろ……もう少しで……」
「んん……!」
メルの魔力を飲み続けていると違和感が生まれ、心臓の鼓動が早まり全身の体温が上がっていく。
「ん……」
漸く唇が離れ、最後に注がれた魔力を飲み込んでラヴィニアは涙で濡れた視界でメルを見上げた。息が荒く、体を襲う熱の正体を聞きたいのに、蕩けそうな甘い顔をしながら昏く濁った空色の眼で見下ろすメルから目を逸らせられない。
動かせないのを頭に置いてメルへ手を伸ばそうとしたら全身に掛けられていた重力がやっと抜けていたようで。伸ばした手はメルの大きな手が掴んで手の甲に何度もキスをされる。
「ぅあ……あ……」
触れるだけのキスなのに、キスしているのは手の甲なのに、メルの唇に触れられるだけでぴくぴくと小さく跳ね感じてしまう。さっきまでそんなことはなかったのに。
嬉しそうな気持を隠す気がないメル。疑問を多分に含んだ声でメルを呼ぶも「今からたくさん気持ち良くしてやる」と言われた直後――メルの指が下半身に伸びた。
また指を入れられ、あの痛みが襲い掛かる。
ラヴィニアが嫌と叫んでも指を入れられた。
「あああぁ……」
最初の痛みはどこへ、二度目は中を圧迫する感覚はあれど次に感じたのは快楽のみ。
ホッとした顔をしたメルに気付けず、二本の指がラヴィニアのイい場所を見つけ出してそこをずっと触れ続けるせいで嬌声を上げ続ける。メルと繋いだ手を強く握って快楽に耐えた。
「……可愛いな」
不意に呟かれた台詞は今まで何度もメルから贈られた言葉だが体の感度が上がってしまうくらい喜ぶとはラヴィニア自身思わなかった。
痛みは消えて快楽だけを拾うようになったのはメルが注ぎ続けた魔力に正解がある。何らかの魔法を行使するのに魔力を注がれたのだ。
メルを見ると湧き上がる罪悪感と後悔の後に必ず付いて来る愛しさ。
プリムローズとの一件が無かったら、何事もなく日々を過ごし、軈て結婚式を挙げて、正式に夫婦となっていた。
夫婦としての初夜ならメルは最初から優しくしてくれたのだろうか……
繋ぐ手を離されメルを見やるとラヴィニアが留めたボタンを外して服を脱いでいるところ。適度に鍛えられ、引き締まった上半身は日焼けを知らない白い肌がメルに似合い過ぎて直視出来ない。疲れているフリをして目を逸らしていてもメルは絶対に向かせてくる。
「や……」
「俺を見ていろ」
頬にキスをし、一旦離れたメルは。
下も全て脱ぎ去り、自身を表面に何度か擦ると一気に挿入した。
1,023
あなたにおすすめの小説
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。
自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。
彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。
そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。
大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる