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10話
しおりを挟む「あああっ!」
指とは質量も硬さも比べられないモノが一気に入ってきた。
一瞬息が出来なくなるも身を裂く痛みが何時までも襲ってこないので恐る恐る息を吸い、吐く。ちゃんと呼吸をしていくと中にある大きなモノの存在感がより増す。
「ラヴィニアっ、力を抜いて」
苦し気なメルの声につられ、チラリと下を見た。
下半身とメルのお腹がくっ付いているように見える。閨教育は全て夫となるメルに委ねるようにと家庭教師に教えられてきた。母親が前以て教える知識に関しては後妻がラヴィニアを嫌っていることから習わず、シルバース夫人も閨教育については一切口出ししてこなかった。
メルを見上げた。澄んだ空色の瞳に戻っていて、言われた通り息を吐いて力を抜きたいのに上手く抜けない。
「無理……!」
「もう、痛くしないから、ラヴィニア良い子だから」
「んう……!」
ゆっくり、ゆっくりと息を吐いて力を抜いていく。
それに合わせメルも動いた。途端体に力を入れてしまう。メルの手が優しく胸を掴み先端を舌で転がし、もう片方を指で弄りだした。
「ああ……ん、あぁ……め、る……」
「動くよ」
「ああ……!」
胸への愛撫でまた中が濡れたのを実感し、体から幾分か力が抜けてきたのを見計らいメルが律動を始めた。さっきまでの痛がるラヴィニアにお構いなしな乱暴な仕草とは違う、ラヴィニアへの気遣いが見て取れる動き。
「あう……ああぁ……」
「ラヴィニア……痛くないか?」
「だい……じょ、ぶ……んんっ」
「なら、いい」
「んあ!」
とん、と心臓のある箇所を指で触れられ、体が大きく跳ねた。触れられただけで強い快楽が押し寄せ、中にいるメル自身を強く締め付けた。よりリアルに感じてしまったメル自身の大きさと硬さ、熱さに恥ずかしさと興奮を覚え、繋がる部分からは愛液が溢れて止まらない。
ラヴィニアのお尻から伝ってシーツにポタポタと落ちる雫は何重にも重なると大きな染みとなっていく。
慣れてくるとメルの動きに合わせて嬌声を上げていた。
抱かれる恐怖も緊張もなくなり、メルに与えられる快楽に溺れるだけ。
止まらない涙をメルの指が掬い、ペロリと舌で舐めとり妖しく笑う。
「ラヴィニア、言ってごらん。俺で感じてるって」
「ぁ……はあ……あああっ! メル……メルの……気持ち、いい……よ……!」
「良い子……」
言ってしまうと心に重みが加わり、息苦しさを覚えた。
自分でメルとの行為に溺れていると自覚しても、言葉にするのとしないのとでは違いがある。
メルの指が結合部の上でぷっくりと膨れている赤い突起をそっと擦った。新たな刺激を与えられラヴィニアの中は締め付けを強くし、喘ぐ声に甘さが増した。
「メル……メル……!」
「いいよ、俺の名前をもっと呼ぶんだ。
……もう何処にも逃がしてやらない、ずっと我慢して優しくしていたのが馬鹿らしくなる」
「メル……?」
快楽に溺れ嬌声を上げながら、メルの最後の言葉が気になった。喘ぎながら不思議そうに見上げたら、見られたくないのか、互いの隙間を無くすほど抱き締められメルの顔が胸に埋められた。
激しくなった律動に合わせ、抜き差しを繰り返すメル自身が段々と大きくなっていき、ラヴィニアは思考を捨て去った。
メルの熱い吐息が胸に掛かって時折心臓の辺りを口付けるから、過剰に体が反応し、中を強く締め付けた。
「く……ラヴィニア、……そろそろ……」
「あ、あ、あ、あぁっ、いやあ……怖いぃ……!」
「このまま俺に任せて、身を委ねていいからっ」
得体の知れない感覚が怒涛の勢いで押し寄せて来てシーツを強く掴んだ。抱き締めてくる腕の力が増す。何度も強く腰を打ち付けられ、最奥に届く度に頭が真っ白になって意識が飛びそうになる。
同じ行動を繰り返されている内、くぐもった声をメルが漏らすと中に熱くてドロドロとしたモノが出された。広がる熱に感じて震えていると漸くメル自身が抜かれた。圧迫感がなくなり、中は寂しそうに大きく開いていたが奥からドロリとしたモノが流れ出た。それすらも今のラヴィニアには感じる要素となり、微かに声を漏らした。
「うあ……」
放出して中から流れ出た精をメルが指で掬ってラヴィニアの中へ擦り付けるように戻していく。快感を与える動作じゃないから刺激は弱くても、達したばかりのラヴィニアにはそれだけで強い刺激となる。
全て中に戻したメルは次に背中と膝裏に手を回して抱き上げてきて、手も使わず隣室への扉を開け更に違う部屋の扉を開けた。そこは浴室で湯船にはたっぷりと入れたての湯が準備されていた。
ミルク色の水面には薔薇の花弁が浮かんでいてラヴィニアは湯船に降ろされた。初めて抱かれた疲労から今は眠くて仕方なく、後ろをメルが座って抱き締めなかったら湯に沈んでいっただろう。
うとうととしているその後ろ、メルにより長いオレンジの髪を後頭部に一つに纏められた。
「寝ていいよ。洗ったらちゃんと拭いた後服を着せてあげるから」
「……うん……」
重く頷いたラヴィニアの瞼はすぐに閉じられた。最後、無意識にメルの名前を呼んだとラヴィニア自身は知らない。
後ろから抱き締める腕の力だけが増した。
「ラヴィニア……」
強引に抱いてしまったせいで要らぬ疲労を与えてしまった。予定では初夜のつもりで優しくする筈だったのに。
他の男の肌を何度も見たと言い、挙句プリムローズを話に出され自制が利かなくなった。他に好きな男がいるという話が嘘だと知ったのは半月以上前。それまではどこの誰だと徹底的に調べ上げた。幸いにもラヴィニアは出奔時、メルが贈ったプレゼントを持って行った為に居場所は最初から把握していた。
ラヴィニアに贈った品全てに居場所を把握する魔法が掛けられていると知るのは贈った本人のみ。ラヴィニアは気付いていない。ラヴィニアの居場所をあまりにも早く突き止めた時、早過ぎると両親に指摘され正直に話すと呆れ果てられた。
ラヴィニアが消えた途端、ラヴィニアの代わりとして異母妹のプリシラを婚約者にと話をしに来たキングレイ侯爵夫人にはシルバース家一同呆れ果てた。メルとラヴィニアの婚約はシルバース夫人と亡くなったラヴィニアの母が生まれた子供が男女だったら婚約させようと約束したから。他人同然である後妻の娘プリシラと婚約させる義理はない。
事実を教えただけなのに侯爵夫人は喚き、プリシラは「メル様あああああぁ!」と泣き叫ぶ始末。
公爵家の騎士に外へ追い出されて漸く帰って行った。
二人の突撃を皮切りに翌日から突撃者が増えていった。
ラヴィニアに好きでいてほしくて敢えて優しい振りをしていたメルにも原因があると母に指摘された時は項垂れた。
「怖がられたら…………ラヴィニアを閉じ込めたくなる」
小さな体を逃がさないよう抱き寄せ、頭に頬を乗せた。
絶対に、二度と逃がしたりしない。
「……」
ラヴィニアに刻んだある魔法の証が心臓付近に浮かんでいる。触れると強制的に快楽を引き起こすそれを行為中、何度か指で触れ口付ける度にラヴィニアは面白いくらい反応した。
今触れたらラヴィニアは飛び起きてしまう。
触れるのは行為中だけにしよう。
青の瞳に似合うドレスも宝石も沢山用意してある。
明日の朝着せるドレスはどれにするか、その前に朝食はラヴィニアの好きなメニューは当然でデザートも付けないといけない。
暇を持て余して退屈にさせるのも駄目、刺繍だけではなく読書も出来るよう書庫室も作らせてある。
「明日は何をしよう」
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