強い祝福が原因だった

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ケーキを買いに2

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 仲睦まじく、微笑み合って部屋へと入って行ったのはラウルとガブリエル。


「……」


 執事に頼んだ手紙はまだソレイユ家には届いていない。ラウルが来ているのはどうして、訪問の報せは聞いていない、ガブリエルに向ける優しくて愛に溢れた瞳は何。聞きたくて、問い質したい事は山程ある。今すぐ客室に飛び込んでラウルを問い詰めたいのに、足は地面に縫い付けられたように動いてくれない。

 体も固まってしまったのか、動いてくれない。


「…………」


 上機嫌でスイーツを買いに行きたかったのに、ラウルとガブリエルの姿を見て気持ちは落ちてしまった。
 2人が客室に入って行くのを目撃したエイレーネーを使用人達は囁き声で嘲笑う。冷めた瞳で一瞥してやれば、大袈裟な程体を跳ね逃げて行く。度胸がないくせに陰口を叩く口だけは立派だ。
 強く手を握り締め、何事もなかったようにエイレーネーは客室の前を通り過ぎた。

 ……室内から聞こえる声は小さいのに、2人の仲の良さを突き付けられるのは、どうしてなのか。

 外に出て空気を肺一杯に吸い込み、吐き出した。ラウルとガブリエルのことは、今は忘れていよう。折角の美味しいスイーツも台無しとなる。イヴと食べて愚痴を聞いてもらって終わりだ。
 正門まで向かい、門番に買い物に行くとだけ告げて街へ向かった。エイレーネーが何処へ行こうと興味はなくても、行先を告げないと後から煩く聞かれる。

 ホロロギウム公爵家からある程度離れると転移魔法を使い街へ降りた。

 高等技法である転移魔法は、イヴの持ってきたダグラスの魔法書で猛特訓をした甲斐あって習得した。
 長距離は魔力消費が激しくて使用は難しく、屋敷から街までなら距離が短いので簡単に行ける。馬車を必要としないのも転移魔法あってこそ。

『マダム・シルヴィア』に入ると身形の良い貴婦人や令嬢が多くいた。貴族や裕福な平民がよく訪れる。ガラスケースに入れられたケーキの前に立つ。違う種類を選んでイヴと感想を言おう。4種類にしたいのに気になるケーキが5種類もある。


「……よし」


 5種類とも買ってしまえとエイレーネーは顔を上げて給仕を呼んだ。が、一寸遅かった。別の客に呼ばれて行ってしまった。次にしようと抱くも、客の声に聞き覚えがあった。







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