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しおりを挟む風の魔法を上手に使ってドレスを脱ぎ、浴室に入ると天井に吊るされた小さなシャンデリアが明かりを灯した。橙色の光に照らされた浴室は広々としており、宙に浮いていた水玉から勢いよくお湯が浴槽に注がれあっという間に満杯になった。
ダヴィデは毎日こんな浴室を使っているのかと感嘆としつつ、髪の毛を下ろしたローゼライトはまず体を洗おうと椅子に座った。別の水玉がローゼライトの頭上に現れると浴槽にお湯を注ぐ勢いはなく、ゆっくりと適温のお湯が流れ出る。髪全体を濡らし、次に洗髪剤はどれかと周りを見たらボトルがこっちだと言わんばかりにローゼライトの顔の前を浮いた。
「これね」
便利な魔法だと、明日ダヴィデに方法を教えてもらうとしつつ、ローゼライトはボトルから洗髪剤を適量手に取った。
「いい香り」
何の花の香りだろうか。薔薇とはまた違う甘い香り。好きな香りだと微笑み、手で泡立て髪を洗っていった。
泡を宙に浮かんだ水玉から注がれるお湯で洗い流し、今度は体を洗う番となった。こちらもボトルが唐突に浮かんだのですぐに分かった。一緒に浮かんでいたスポンジに液体を染み込ませ、少しお湯に含み泡立てていく。もこもことした弾力のある白い泡と洗髪剤と同じ香りが心やすらぐ。泡で体を丁寧に洗い、背中部分は手こずったもののなんとか洗えた。
一人でお風呂に入った経験がなかった為、不安に感じていたのに一人でも入れると知った。良い経験だ。
髪を上に一つに纏めて浴槽に入ると少し熱いが心地よいお湯が体を包み込んだ。
「癒される……」
今頃会場はどうなっているのか。ラルスは無事ヴィクトリアと脱出しているか気になるがローゼライトの他に死者はいず、命にかかわる大怪我を負った者もいないと語ったダヴィデの言葉を信じる。
「お父様に話しておいて良かった」
前以て話すつもりはなかったのに父の前になると隠し事も嘘も通用しないとなって口にしてしまう。今回はきっとそれで良いのだ。
ローゼライトは鼻ギリギリまで体をお湯に沈めた。
お風呂から上がり、タオルは浴室の隣にある棚にあると教えられたので引き戸を開けた。大量のタオルがあり、適当に手に取って吃驚した。ふわふわなのだ。初めて会った時、空腹で倒れていたダヴィデに生活力は皆無の気配がしていた。実際はしっかりと生活していると分かり、何故あの時空腹で倒れていたのかが非常に気になる。本人曰く、食べるのを忘れていただけらしいが。
タオルで体を自分で拭くのも初めてで、普段侍女がしてくれるように拭いていき、下着を身に着け、服を着た。ワンピースだから一人でも着られる。
「しまった、化粧品やボディクリームを忘れてた」
お風呂上りは必ず体や顔のケアを徹底してするのに大事な道具の存在が頭から抜け落ちていて、肩を落としながら明日街へ買いに行くとする。シーラデン家御用達の商人から購入している化粧品と同等の物が街で売っているかのかとふと抱いた。
「どうせなら、自分で作ってみようかしら」
ローゼライト自身魔法薬に詳しく、薬草の知識も十分持ち得ている。自分で自分に合う化粧品を作る。今までになかった発想を得て嬉々とした様子で着替えを終え、ダヴィデの戻りを待った。
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