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しおりを挟む会場に戻ったダヴィデは中央に集められている襲撃犯を囲む国王や王太子の許に近付き、状況の説明を求めた。王国屈指の魔法使いが何処に行っていたのだと王太子に呆れられ、急用が出来ただけだと躱し話を求めた。王太子は「全く」と呆れながらもダヴィデの求める説明に応じた。
「襲撃犯はやはり敵国の者だ。捕縛された場合に発動する自爆コードが体に刻まれていた」
「解除は」
「もうしてある。爆発する心配はない。会場の修理も他の魔法使い達が現在作業中だ」
「そうか。尋問は騎士に任せるとしよう」
「こらこら、お前が勝手に決めるな。ダヴィデ、お前の急用って……」
途中で王太子の声は途切れた。誰かが喚く声がダヴィデや王太子の許まで届き、何事かと振り向くとラルスが数人の騎士に抑えられながらも損傷が激しい場所で抗っていた。あの場所はローゼライトが爆発に巻き込まれた場所。死者はローゼライトだけと報告を受けている王太子は悲痛な面持ちを浮かべた。
「犠牲者は絶対に出さない計画の筈だったのにっ、何故こんな事に」
「……」
ローゼライトの爆死を偽装した本人がいると知らないのは当然で。ダヴィデは明らかに生きている筈がないのにローゼライトを呼び続けるラルスを見続けた。ローゼライトの話から、彼はアバーテ公爵令嬢のヴィクトリアを好いていると聞かされてそう思っていたのだが様子を見ていると違う気がする。いや、婚約者が無残な死を迎えればたとえ好きな相手がいても取り乱すか、と自分を納得させた。
「陛下」
ラルスを見つめているダヴィデの耳に今度は別の声が入った。相手はよく知る男性——シーラデン伯爵だ。側に養子のフレアはいない。
「伯爵……」
国王もまた王太子と同じで娘を失った伯爵に悲痛な面持ちを見せた。
「ローゼライトの事はお構いなく。不運だった。それだけです」
「だが」
「後日、ローゼライトの死亡届け、並びにベルティーニ公爵家との婚約解消を求めます。受理して頂けますね」
「あ、ああ。伯爵、そなた無理をしていないか」
「いいえ、陛下。私への心配は無用です。今、魔法使い達への魔力回復薬を屋敷で保管している在庫から早急に王宮へ運ぶよう手配しております。修理が終わった頃には届くかと」
「そ、そうか」
「では、私はこれで」
社交界では愛妻家と有名でローゼライトを出産後体を壊し、領地で療養する妻の許へ足繁く通う伯爵に愛人や第二夫人として娘を宛がおうとした貴族は多く、その度に伯爵は断り続けた。子供はローゼライトしかいなくても既に養子のフレアがいる。嫁ぐ前に亡くなってしまっても後継者問題はない。
娘を失った伯爵の冷静さは後継者の問題がないからか、それとも元々ローゼライトに愛情が無かったのか、どう言葉を掛けてやれば良いのか非常に悩んでいた国王を別の意味で悩ませる。
「伯爵ってあんなに冷たい人間だったのか」
王太子もまた、伯爵の態度に驚愕している。
「あれを見るとラルスが増々痛々しい」
「確かシーラデン家の娘とベルティーニ家の坊ちゃんの婚約って、シーラデン家の娘の額にベルティーニの坊ちゃんが傷を付けたからだろう」
「そうだとしても……って、珍しいな。貴族の事情に興味がないダヴィデが知ってるなんて」
内心「やばっ」と焦るものの、決して表面には出さずシーラデン伯爵家が領地で栽培している薬草はダヴィデにとって非常に重宝しており、ローゼライトとも何度か言葉を交わしたことがあるのだと適当に理由付けをした。
王太子もダヴィデ含めた魔法使いがシーラデン家の薬草を重宝していると知っているので疑わず「そうだったのか」と納得した。
「苦しい結果になったが今度は好きになった娘と婚約すればいいだけじゃないのか」
「馬鹿! ラルスはシーラデン嬢を好いていたんだぞ。そんな簡単な話じゃない」
「そうなのか?」
内心「うん?」と首を傾げながら王太子にこんな話を聞いたと出してみた。
「ベルティーニ家の坊ちゃんってアバーテ家の娘が好きだって、何時だったかシーラデン家の娘が言ってたような」
「昔の話だ。確かに昔はアバーテ嬢に片思いしていた。シーラデン嬢の額に傷を作ってしまい、アバーテ嬢と婚約が出来なくなって公爵から大層叱られ落ち込んではいたがラルスはもうシーラデン嬢の事しか……」
まだ王太子の話は続いているがダヴィデの意識は既に違う方へ行っており、全く話を聞いていない。ローゼライトの言う通りラルスはヴィクトリアが好き、だが現在は違うと王太子は話す。
——どうなんだ?
襲撃犯をあしらいつつ、そろそろローゼライトの死を偽装するかと実行に移そうとした時に見えた、足を挫いて動けなくなったヴィクトリアを抱き上げたラルスの瞳には好意の気持ちが出ていた。それを見てローゼライトがいなくてもラルスにはヴィクトリアがいる、安心と言えるだろうと判断してローゼライトの死を偽装した。
「こうなってしまっては、アバーテ家の娘と婚約しても問題ないんじゃ」
「アバーテ嬢には既に婚約者が決まっている。もうすぐ、その発表をする茶会を開く予定だ。ラルスやシーラデン嬢も招待すると張り切っていたのに……これではラルスも参加出来ないな……」
更に内心「うん???」と深く首を傾げる羽目になった。
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