44 / 188
第43話 剣聖アレーテ
しおりを挟む
それから準備も終わり、北の門を出て街道を歩いていた。時刻は午前10時を少し回ったくらいかな?
道の周りは草原でとても見晴らしがいい。草原なのでたまに小動物を見かけることがある。こういう場所でも餌になる動物がいるため魔物に遭遇することもある。もっとも、見晴らしがいいもんだから近づいて来たら簡単にわかっちゃうんだけどね。
「終わったぞ。収納を頼む」
アレサが剣に付いたハーピーの血を軽く振って飛ばし、布で拭く。襲って来たのはハーピー8体なんだけど、僕は防壁で馬車を守っていただけ。リーネとサルヴァンは出番無し。当然アレーテさんもリオネッセさんも見ていただけだ。
つまりアレサが1人で片付けてしまったのだ。いやそれにしても凄かった。防壁を足場にして駆け上がりながら空中戦を繰り広げ、一刀のもとに斬り伏せていくアレサ。なんというか、カッコよかった!
「もうあの程度では相手にならないわね。いい動きだったわ。無駄も淀みもなく美しい動線。さすがは私の弟子ね」
「全ては師匠の教えの賜物でございます!」
アレーテさんがアレサに拍手を贈ると、アレサは畏まって頭を下げる。アレサのアレーテさんリスペクトは半端なく、その甲斐もあってアレサの上達ぶりは目覚しいものがあった。教えてまだ1ヶ月足らずだというのにこの上達ぶり。きっとどっちも凄いんだろうな。
それから30分ほど歩いただろうか。少し遠くに人型の何かが見えた。それはこちらに向かって歩いており、その数も10体くらいはいそうだ。
「なんだありゃ?」
「うーん、ここからだとわかりにくいな」
なんか虫っぽいけど立ってるしなぁ。人型の虫かぁ、なんかそんなのいたな。
「あれはクラックオンだな。蟻人間といったところか」
ああ、そうだ。確か図鑑で見たっけ。クラックオン。人型の蟻で5~20くらいの徒党を組んで目に付いた獲物を襲う肉食の魔物だ。確か甲殻に覆われていて硬いんだっけ。冷気に弱いからリーネの魔法で瞬殺出来ると思うけど。
「ちょうどいいわね。少し師匠らしいところを見せておこうかしら」
アレーテさんは馬車から降りると、自らに目隠しをし始めた。
「師匠がなさるのですか?」
「ええ。よく見ておきなさい。目ではなく空気を感じるの。今はまだ難しいと思うけど、これでもあなたが通るべき通過点に過ぎないのよ?」
「通過点……」
アレーテさんはすらりと剣を抜き、そのまま前へと歩き始める。少ししてその姿がしっかり分かるところまで近づくとアレーテさんが駆ける。
クラックオン達はそれに反応し、アレーテさん目掛けて走り出した。その動きには統率性があり、縦1列から左右交互にバラけて襲い掛かる。
「うわっ!」
その様子を見て心臓が跳ねた。チラリとアレサを見るが、その挙動を一瞬足りとも逃すまいと凝視しているようだ。マジで大丈夫なん?
と思ったけど杞憂だった。
クラックオンの連携の取れた攻撃をするりとかわし、1団をすり抜ける。最後の1匹をかわしたところで身体を反転させた。
そこからの動きが凄すぎた。
なんというか、剣を振っているのは間違いないんだけど、全く見えないんだよね。剣を振った瞬間身体を捻っているみたいだからそれで判断できるんだけど、振り抜いたと思った頃にはクラックオンは胴を、首をあるいは胸を切り裂かれて倒れていった。そして未だ襲い来るクラックオンの攻撃を軽々とかわしては剣で切り捨てていく。
「すごぉい! まるで踊っているみたい!」
リーネが目を輝かせて見ている。
アレサはゴクリと唾を呑み込んだ。
サルヴァンは目を見開いて固まっている。
そりゃそうだ。あの動きを目隠しをしてやってのけているんだもの。言葉も出ないよ。
「あれが剣の頂点……!」
アレサは身体を震わせ笑っていた。きっとアレサは感謝し、身震いしているんだと思う。自分が目指すべき到達点を見せてくれたことに感謝し、その頂きに立った自分を想像したのかもしれない。
そして戦いはあっさりと終わった。最後の一体はその首を跳ねられても腕を振り回していたが、やがて動かなくなって地面に倒れ伏したのだ。
そしてアレーテさんが目隠しを外す。御者の人が再び馬車を動かすと、僕は回収のために。アレサさんは出迎えるためにアレーテさんの方に走り出した。
「師匠! お見事でした!」
「ふふっ。いい? これは通過点よ。間違えてはダメ。もっと先に私はいるわ。追ってきなさい」
「はい、師匠!」
アレサがアレーテさんの言葉に感動している間に僕はクラックオンたちの遺体を回収する。どれも綺麗な切り口で重ね合わせたらくっつくんじゃないかと思えるほどだ。
あれが剣聖かぁ……。僕の目指している場所ではないけど、心が震えちゃったよ。
道の周りは草原でとても見晴らしがいい。草原なのでたまに小動物を見かけることがある。こういう場所でも餌になる動物がいるため魔物に遭遇することもある。もっとも、見晴らしがいいもんだから近づいて来たら簡単にわかっちゃうんだけどね。
「終わったぞ。収納を頼む」
アレサが剣に付いたハーピーの血を軽く振って飛ばし、布で拭く。襲って来たのはハーピー8体なんだけど、僕は防壁で馬車を守っていただけ。リーネとサルヴァンは出番無し。当然アレーテさんもリオネッセさんも見ていただけだ。
つまりアレサが1人で片付けてしまったのだ。いやそれにしても凄かった。防壁を足場にして駆け上がりながら空中戦を繰り広げ、一刀のもとに斬り伏せていくアレサ。なんというか、カッコよかった!
「もうあの程度では相手にならないわね。いい動きだったわ。無駄も淀みもなく美しい動線。さすがは私の弟子ね」
「全ては師匠の教えの賜物でございます!」
アレーテさんがアレサに拍手を贈ると、アレサは畏まって頭を下げる。アレサのアレーテさんリスペクトは半端なく、その甲斐もあってアレサの上達ぶりは目覚しいものがあった。教えてまだ1ヶ月足らずだというのにこの上達ぶり。きっとどっちも凄いんだろうな。
それから30分ほど歩いただろうか。少し遠くに人型の何かが見えた。それはこちらに向かって歩いており、その数も10体くらいはいそうだ。
「なんだありゃ?」
「うーん、ここからだとわかりにくいな」
なんか虫っぽいけど立ってるしなぁ。人型の虫かぁ、なんかそんなのいたな。
「あれはクラックオンだな。蟻人間といったところか」
ああ、そうだ。確か図鑑で見たっけ。クラックオン。人型の蟻で5~20くらいの徒党を組んで目に付いた獲物を襲う肉食の魔物だ。確か甲殻に覆われていて硬いんだっけ。冷気に弱いからリーネの魔法で瞬殺出来ると思うけど。
「ちょうどいいわね。少し師匠らしいところを見せておこうかしら」
アレーテさんは馬車から降りると、自らに目隠しをし始めた。
「師匠がなさるのですか?」
「ええ。よく見ておきなさい。目ではなく空気を感じるの。今はまだ難しいと思うけど、これでもあなたが通るべき通過点に過ぎないのよ?」
「通過点……」
アレーテさんはすらりと剣を抜き、そのまま前へと歩き始める。少ししてその姿がしっかり分かるところまで近づくとアレーテさんが駆ける。
クラックオン達はそれに反応し、アレーテさん目掛けて走り出した。その動きには統率性があり、縦1列から左右交互にバラけて襲い掛かる。
「うわっ!」
その様子を見て心臓が跳ねた。チラリとアレサを見るが、その挙動を一瞬足りとも逃すまいと凝視しているようだ。マジで大丈夫なん?
と思ったけど杞憂だった。
クラックオンの連携の取れた攻撃をするりとかわし、1団をすり抜ける。最後の1匹をかわしたところで身体を反転させた。
そこからの動きが凄すぎた。
なんというか、剣を振っているのは間違いないんだけど、全く見えないんだよね。剣を振った瞬間身体を捻っているみたいだからそれで判断できるんだけど、振り抜いたと思った頃にはクラックオンは胴を、首をあるいは胸を切り裂かれて倒れていった。そして未だ襲い来るクラックオンの攻撃を軽々とかわしては剣で切り捨てていく。
「すごぉい! まるで踊っているみたい!」
リーネが目を輝かせて見ている。
アレサはゴクリと唾を呑み込んだ。
サルヴァンは目を見開いて固まっている。
そりゃそうだ。あの動きを目隠しをしてやってのけているんだもの。言葉も出ないよ。
「あれが剣の頂点……!」
アレサは身体を震わせ笑っていた。きっとアレサは感謝し、身震いしているんだと思う。自分が目指すべき到達点を見せてくれたことに感謝し、その頂きに立った自分を想像したのかもしれない。
そして戦いはあっさりと終わった。最後の一体はその首を跳ねられても腕を振り回していたが、やがて動かなくなって地面に倒れ伏したのだ。
そしてアレーテさんが目隠しを外す。御者の人が再び馬車を動かすと、僕は回収のために。アレサさんは出迎えるためにアレーテさんの方に走り出した。
「師匠! お見事でした!」
「ふふっ。いい? これは通過点よ。間違えてはダメ。もっと先に私はいるわ。追ってきなさい」
「はい、師匠!」
アレサがアレーテさんの言葉に感動している間に僕はクラックオンたちの遺体を回収する。どれも綺麗な切り口で重ね合わせたらくっつくんじゃないかと思えるほどだ。
あれが剣聖かぁ……。僕の目指している場所ではないけど、心が震えちゃったよ。
52
あなたにおすすめの小説
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます
空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。
勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。
事態は段々怪しい雲行きとなっていく。
実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。
異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。
【重要なお知らせ】
※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。
※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる