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第134話 閉鎖的な村5
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「ちっ、しゃーねーな」
サルヴァンは襲って来た息子の右手首を掴むとそのまま背負って地面に叩きつけた。勇士の紋章にいた頃に叩き込まれた組打ち術というやつだね。一応メンバー全員がこれを叩き込まれているので僕も多少はできる。
「ぐへぇっ!?」
地面に背中を叩きつけられ、息子が呻く。いくら力が強くても彼らは戦闘のプロというわけではない。通用してもせいぜいCランク冒険者までだろう。
「む、息子よ! お、おのれぇい!」
「いや、そっちが問答無用で襲うからだろ。俺らにやり合う意思なんかねぇんだよ。ほれ立てるか?」
村長が酷く憤慨しているが相手にせず息子の方を助け起こす。息子の方はよろけながらも立ち上がり、サルヴァンを睨んでいた。
「こ、これで勝ったと思うなよ……」
「いや、そもそも勝負してるつもりもないんだが。見逃してやるからもう帰れ」
サルヴァンがウンザリした口調で息子に伝える。他のメンバーもやれやれ、といった目で息子を見ていた。その視線に気づき、息子はカァーッと顔を赤らめると急いで村長の方へ逃げていった。
「ちくしょう、バカにしやがって! お前らなんか守り神様にかかればイチコロなんだからな!」
「うむ、その通りだ」
村長の陰に隠れるようにしながら息子がイキる。守り神様とやらは爵位級悪魔だろう。どの程度の悪魔が来るのかわからないけど、そういうの喚び出すのって巫女さんじゃないのかな。
「おもしろい、喚び出して見せてくれ。リーネ、龍炎光牙剣を出してくれないか」
「うん、わかった」
アレサはやるつもりか。出てきたとしても子爵級なら勝算はあるかな。でも守り神様を滅ぼしたらめっちゃ恨まれそう。
アレサはリーネから剣を受け取ると皆を下がらせた。一人でやるつもりらしい。
「いいだろう、 ならフランソワ様をお連れして来るからそこで待っていろ!」
あー、やっぱり喚び出せるの巫女さんだけみたいね。
「え?」
まさか待たされるとは思っていなかったのかアレサは素っ頓狂な声をあげる。いや、なんで僕らがそれに付き合わされなきゃいかんのだ?
「いいぞ、待ってやるからはよ行ってこい」
「ふん、吠え面をかかせてやるからな。行くぞ息子よ」
しかしサルヴァンは待っててやると答え二人に連れてこいと言う。それに応え村長と息子は二人して村の方へ飛んで行った。
「……ほんとに待つの?」
「守り神様とやらが爵位級悪魔なら倒した方がいいだろ。有事の際にそいつが悪さをする可能性もあるからな」
うんまぁ、その可能性は確かにある。僕の予測ではアマラは戦争を引き起こす。そのときに悪魔が国内にいればそいつが村人達を扇動するかもしれない。対盗賊というだけなら爵位級悪魔はどう考えても過剰戦力だ。レッサーデーモンを使役できるみたいだし、それで村の守りは十分だろう。
「それは良かった。私はてっきり2人を行かせてさっさと帰るつもりかと思っていたぞ」
アレサは戦えるのが嬉しいのかニカッと白い歯を見せた。僕もサルヴァンならそうすると思ってたんだけどね。
「それも考えたんだがな。爵位級悪魔がいるなら報告しない訳にはいかなくなるだろ」
「それは確かにそうだな。爵位級悪魔がいるのに放置するのはルウもリーネも立場上できないだろ」
確かにそうかも。ルードが言うように僕もリーネも聖人という立場にいる。爵位級悪魔は人類にとって忌むべき敵、というのが教会の立場だからね。放置すれば説教どころの話では済まないかも。
そして待つことしばし。二人はしっかりと巫女のフランソワ(男)を連れて来た。
「待たせたな、さあフランソワ様。守り神様の御力を奴らに見せてやってください!」
「……あまり気が進まないのですが仕方がありませんね」
息子の方が僕らを指差して巫女さんに訴える。当のフランソワはため息をつきながらも指で何かの印を結び、召喚を始めた。
「我らの守り神偉大なるセルバよ、我らの呼びかけに応えその姿を現したまえ」
巫女が大きく腕を広げ、空を仰いで高らかに呼びかける。するとフランソワの前方に魔法陣が現れ、そこから一体の黒い執事服に身を包んだ老紳士が姿を現した。
杖を手にし、白い口ひげを蓄えた姿は一見すると名家の執事のようだ。ただ人間と決定的に違うのは目か。真っ黒な目には瞳らしきものが見当たらない。そのたった一つの異質さがこの悪魔の異様な雰囲気をより強くしている感じがする。
「お呼びでございますかな?」
「セルバ様、あそこにいる者どもは村の敵にございます。是非御力をお貸しください」
「ふむ……」
セルバに命令したのは巫女ではなく息子の方だった。トレイアはその命令を聞くとその顎を左手で撫で、ほくそ笑む。
「セルバ、今回のことは私が不用意にレッサーデーモンを召喚したのが原因です。できれば殺さずにすませたいのですが」
「……無理ですな。この者達は手加減をして勝てる相手ではないようです。それに……」
瞳がなくてわかりにくいが、セルバの視線は恐らくアレサに向いているのだろう。龍炎光牙剣を持たせれば一対一なら間違いなく僕らの中で最強。それがアレサだ。そのアレサもさっきからニヤけが止まらないようだ。
「皆は下がっていてくれ。どうやら私との一対一をご希望のようだ」
「……わかった」
あのセルバという悪魔、恐らく男爵級なんてものじゃ無さそうだ。間違いなく強い。
「お初にお目にかかる。我が名はセルバ。レディ、名をお聞かせ願えるかな?」
セルバは恭しく礼をして名を尋ねる。
「私はアレサ。お前を屠る者の名だ」
「老骨がたぎりますわい。その名、しかと覚えたぞ……」
アレサは剣を構え、セルバは杖を構えた。セルバの構えは杖を片手に半身。対するアレサは両手で剣を構えている。
「いざ!」
「ゆくぞ!」
そしてアレサとセルバが同時に地を蹴った。
サルヴァンは襲って来た息子の右手首を掴むとそのまま背負って地面に叩きつけた。勇士の紋章にいた頃に叩き込まれた組打ち術というやつだね。一応メンバー全員がこれを叩き込まれているので僕も多少はできる。
「ぐへぇっ!?」
地面に背中を叩きつけられ、息子が呻く。いくら力が強くても彼らは戦闘のプロというわけではない。通用してもせいぜいCランク冒険者までだろう。
「む、息子よ! お、おのれぇい!」
「いや、そっちが問答無用で襲うからだろ。俺らにやり合う意思なんかねぇんだよ。ほれ立てるか?」
村長が酷く憤慨しているが相手にせず息子の方を助け起こす。息子の方はよろけながらも立ち上がり、サルヴァンを睨んでいた。
「こ、これで勝ったと思うなよ……」
「いや、そもそも勝負してるつもりもないんだが。見逃してやるからもう帰れ」
サルヴァンがウンザリした口調で息子に伝える。他のメンバーもやれやれ、といった目で息子を見ていた。その視線に気づき、息子はカァーッと顔を赤らめると急いで村長の方へ逃げていった。
「ちくしょう、バカにしやがって! お前らなんか守り神様にかかればイチコロなんだからな!」
「うむ、その通りだ」
村長の陰に隠れるようにしながら息子がイキる。守り神様とやらは爵位級悪魔だろう。どの程度の悪魔が来るのかわからないけど、そういうの喚び出すのって巫女さんじゃないのかな。
「おもしろい、喚び出して見せてくれ。リーネ、龍炎光牙剣を出してくれないか」
「うん、わかった」
アレサはやるつもりか。出てきたとしても子爵級なら勝算はあるかな。でも守り神様を滅ぼしたらめっちゃ恨まれそう。
アレサはリーネから剣を受け取ると皆を下がらせた。一人でやるつもりらしい。
「いいだろう、 ならフランソワ様をお連れして来るからそこで待っていろ!」
あー、やっぱり喚び出せるの巫女さんだけみたいね。
「え?」
まさか待たされるとは思っていなかったのかアレサは素っ頓狂な声をあげる。いや、なんで僕らがそれに付き合わされなきゃいかんのだ?
「いいぞ、待ってやるからはよ行ってこい」
「ふん、吠え面をかかせてやるからな。行くぞ息子よ」
しかしサルヴァンは待っててやると答え二人に連れてこいと言う。それに応え村長と息子は二人して村の方へ飛んで行った。
「……ほんとに待つの?」
「守り神様とやらが爵位級悪魔なら倒した方がいいだろ。有事の際にそいつが悪さをする可能性もあるからな」
うんまぁ、その可能性は確かにある。僕の予測ではアマラは戦争を引き起こす。そのときに悪魔が国内にいればそいつが村人達を扇動するかもしれない。対盗賊というだけなら爵位級悪魔はどう考えても過剰戦力だ。レッサーデーモンを使役できるみたいだし、それで村の守りは十分だろう。
「それは良かった。私はてっきり2人を行かせてさっさと帰るつもりかと思っていたぞ」
アレサは戦えるのが嬉しいのかニカッと白い歯を見せた。僕もサルヴァンならそうすると思ってたんだけどね。
「それも考えたんだがな。爵位級悪魔がいるなら報告しない訳にはいかなくなるだろ」
「それは確かにそうだな。爵位級悪魔がいるのに放置するのはルウもリーネも立場上できないだろ」
確かにそうかも。ルードが言うように僕もリーネも聖人という立場にいる。爵位級悪魔は人類にとって忌むべき敵、というのが教会の立場だからね。放置すれば説教どころの話では済まないかも。
そして待つことしばし。二人はしっかりと巫女のフランソワ(男)を連れて来た。
「待たせたな、さあフランソワ様。守り神様の御力を奴らに見せてやってください!」
「……あまり気が進まないのですが仕方がありませんね」
息子の方が僕らを指差して巫女さんに訴える。当のフランソワはため息をつきながらも指で何かの印を結び、召喚を始めた。
「我らの守り神偉大なるセルバよ、我らの呼びかけに応えその姿を現したまえ」
巫女が大きく腕を広げ、空を仰いで高らかに呼びかける。するとフランソワの前方に魔法陣が現れ、そこから一体の黒い執事服に身を包んだ老紳士が姿を現した。
杖を手にし、白い口ひげを蓄えた姿は一見すると名家の執事のようだ。ただ人間と決定的に違うのは目か。真っ黒な目には瞳らしきものが見当たらない。そのたった一つの異質さがこの悪魔の異様な雰囲気をより強くしている感じがする。
「お呼びでございますかな?」
「セルバ様、あそこにいる者どもは村の敵にございます。是非御力をお貸しください」
「ふむ……」
セルバに命令したのは巫女ではなく息子の方だった。トレイアはその命令を聞くとその顎を左手で撫で、ほくそ笑む。
「セルバ、今回のことは私が不用意にレッサーデーモンを召喚したのが原因です。できれば殺さずにすませたいのですが」
「……無理ですな。この者達は手加減をして勝てる相手ではないようです。それに……」
瞳がなくてわかりにくいが、セルバの視線は恐らくアレサに向いているのだろう。龍炎光牙剣を持たせれば一対一なら間違いなく僕らの中で最強。それがアレサだ。そのアレサもさっきからニヤけが止まらないようだ。
「皆は下がっていてくれ。どうやら私との一対一をご希望のようだ」
「……わかった」
あのセルバという悪魔、恐らく男爵級なんてものじゃ無さそうだ。間違いなく強い。
「お初にお目にかかる。我が名はセルバ。レディ、名をお聞かせ願えるかな?」
セルバは恭しく礼をして名を尋ねる。
「私はアレサ。お前を屠る者の名だ」
「老骨がたぎりますわい。その名、しかと覚えたぞ……」
アレサは剣を構え、セルバは杖を構えた。セルバの構えは杖を片手に半身。対するアレサは両手で剣を構えている。
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そしてアレサとセルバが同時に地を蹴った。
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