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第146話 《アマラの視点》ニーグリンド国王アマラ
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「王というものがここまで面倒なものだとは思わなかったぞ……」
俺は執務室で書類に判を押しながらため息をついた。俺は確かにこのニーグリンドという国の最高権力者の地位に着いた。しかしそれだけでは国民はこの俺を褒め称えないんだよなぁ。
一応配下に着いた元の重鎮どもは俺に媚びちゃいるがそんなもん上っ面だけ、っていうのがありありとわかる。正直ムカつくが国の運営というものをわかっていない俺にとっては簡単に首をすげ替えられるもなじゃないのが腹立たしい。
俺は王様になればもっと贅沢ができ、国民が俺を褒め称えるものだとばかり思っていたが現実は甘くない。確かに食事は豪勢だしとても美味い。女も抱き放題だが俺に喜んで抱かれるのは配下の人魔くらいだな。普通の人間だと怖がって泣きながらだぞ?
そんで国民は俺を見れば恐怖に慄き命乞いをするか逃げ惑うだけだ。俺が欲しいのは称賛であって怖がられることじゃねーっつーのによ。
「あははは。でも結構良い王様してるじゃないか。褒め称えられたいから国民にいい暮らしをさせるっていう動機はとても素晴らしいと思うよ」
ニーグリはふわふわ浮かぶ謎の球体に乗りながら声をあげて笑う。相変わらずのゴスロリ女装姿なのだが腹が立つことに良く似合っている。こいつが本当の女だったら絶対抱きついてるが、男だとわかっていることが辛うじて俺の理性を保たせていた。
「そ、そうか? 元宰相とかいうやつに言ったら鼻で笑われたぞ?」
そうだ、国を動かす頭脳が欲しかったから宰相の奴は生かしてやった。最初のうちは俺に対して畏敬の念があったが、今じゃ説教までかましやがる。
「アマラはそういうところバカだよね。腹芸ができないからたかが人間の貴族どもに軽く見られるんだよ。それでも善政のお陰でクリフォト教に心酔する者も出てきてくれるようになったのは嬉しいな。おかげで魔王になる日は近いと思うよ」
にぱにぱと無邪気な笑顔を浮かべながらほっぺを両手で覆う。こいつ仕草まで可愛いでやんの。なんで男に生まれた?
「そうなのか。それは良かった。でも本当なんだろうな? クリフォトの木がこの国に植えられれば国民はこの俺を崇めるようになるっていうのは」
「本当だよ。君がいるからクリフォトの木から生まれた悪魔はクリフォト教の信者に手を出さない。それどころか恩恵すら与えるだろう。そうなればますます信者は増えていく。そして君はクリフォト教のトップでもあるんだ。崇められて当然だよね?」
理屈は通っているよな?
善政のおかげで少しは俺を敬う国民も出てきたようだが、まだ俺を直視すると怖がる奴が多いのも事実だ。俺が王位に就いて1年は経ったんだが、理想はまだ遠いか。
全ての国民が俺を崇め、そして称える様を想像する。その白昼夢の中では皆が俺の名を呼び、跪いて平伏していた。女の子は「キャーアマラ様素敵ー! 抱いてー!」と黄色い声をあげ、野郎どもは「この生命アマラ様のために!」と忠誠を誓うのだ。
まさにそれは俺の理想そのもの。うん、いいじゃないか。国民の称賛を一身に浴びる存在こそ俺の目指すべき場所だ。好き勝手に振る舞うのも楽しいが、称賛を受ける高揚感には敵わないもんだ。
「それで、エスペラント教国の件はどうするつもりだい?」
「ああ、見せしめにちょうどいいんじゃないかと思ってるよ。クリフォト教を廃止とか呑めるわけねーだろ。寝言は寝て言えってやつだな。もうじき返事の期限も来る。宣戦布告でもしてやろうかね?」
こっちには爵位持ちの悪魔や人魔が結構な数いるからな。単純な戦力なら負けはねぇはずだ。それに俺の武威を見せつければきっと多くの国民が俺を褒め称えるに違いない。
「うんうん、でもクーデターで荒れた国の復興の途中なんだから戦争は悪手だよ」
「じゃどうすんだよ」
確かに悪魔の力を借りたおかげで尋常じゃない速度で復興はされている。それでもまだまだ問題は山積みなんだよな。正直俺の脳みそじゃ解決できんわ。
「君と僕とでエスペラント教国に行けばいいじゃないか。あの国には神剣がある。それを回収しておきたいしね」
「へーっ、意外と好戦的じゃないか。俺とお前が本気で暴れたら国の一つくらい楽に滅ぶだろ」
公爵級と候爵級だぞ。それこそ俺とニーグリだけで一国を滅ぼす自信あるわ。だけど配下の力を見せつけるのも必要だと言ったのはお前だろ。
「魔王になるのが本懐だしね。それに、クリフォトの木を植えるには多くの血が必要なんだよ」
「なるほど、同時に条件を満たそうって腹なわけか」
クリフォトの木を植えるには魔王になることと多くの血が必要らしい。正確にはクリフォトの枝であるレイモンが大地に根を下ろし、大樹となるそうだ。
「そういうこと。僕と君がいる限りこの国は安泰であると知れば多くの称賛や信者が期待できるからね。だからやろうよ」
ニーグリは俺の近くまで来ると耳元で囁いた。息吹きかけんじゃねぇこそばゆい。思わず身震いしちまっただろうが……。
「わ、わかったよ。やってやんよ」
ま、今さら人を殺しても何の感情も湧かないから別にかまわんがな。もう何人殺したかなんて数えちゃいねぇけど、王様になってから人を殺すのは初めてになるのか。
「ふふっ、楽しくなりそうだね」
「俺は別に人殺しがしたいわけじゃないんだがな……」
そう言いつつも、自分が今ニヤけているのがハッキリとわかる。好き勝手に暴れる理由を作ってくれてありがとうな、エスペラントの教皇様よ。
俺は執務室で書類に判を押しながらため息をついた。俺は確かにこのニーグリンドという国の最高権力者の地位に着いた。しかしそれだけでは国民はこの俺を褒め称えないんだよなぁ。
一応配下に着いた元の重鎮どもは俺に媚びちゃいるがそんなもん上っ面だけ、っていうのがありありとわかる。正直ムカつくが国の運営というものをわかっていない俺にとっては簡単に首をすげ替えられるもなじゃないのが腹立たしい。
俺は王様になればもっと贅沢ができ、国民が俺を褒め称えるものだとばかり思っていたが現実は甘くない。確かに食事は豪勢だしとても美味い。女も抱き放題だが俺に喜んで抱かれるのは配下の人魔くらいだな。普通の人間だと怖がって泣きながらだぞ?
そんで国民は俺を見れば恐怖に慄き命乞いをするか逃げ惑うだけだ。俺が欲しいのは称賛であって怖がられることじゃねーっつーのによ。
「あははは。でも結構良い王様してるじゃないか。褒め称えられたいから国民にいい暮らしをさせるっていう動機はとても素晴らしいと思うよ」
ニーグリはふわふわ浮かぶ謎の球体に乗りながら声をあげて笑う。相変わらずのゴスロリ女装姿なのだが腹が立つことに良く似合っている。こいつが本当の女だったら絶対抱きついてるが、男だとわかっていることが辛うじて俺の理性を保たせていた。
「そ、そうか? 元宰相とかいうやつに言ったら鼻で笑われたぞ?」
そうだ、国を動かす頭脳が欲しかったから宰相の奴は生かしてやった。最初のうちは俺に対して畏敬の念があったが、今じゃ説教までかましやがる。
「アマラはそういうところバカだよね。腹芸ができないからたかが人間の貴族どもに軽く見られるんだよ。それでも善政のお陰でクリフォト教に心酔する者も出てきてくれるようになったのは嬉しいな。おかげで魔王になる日は近いと思うよ」
にぱにぱと無邪気な笑顔を浮かべながらほっぺを両手で覆う。こいつ仕草まで可愛いでやんの。なんで男に生まれた?
「そうなのか。それは良かった。でも本当なんだろうな? クリフォトの木がこの国に植えられれば国民はこの俺を崇めるようになるっていうのは」
「本当だよ。君がいるからクリフォトの木から生まれた悪魔はクリフォト教の信者に手を出さない。それどころか恩恵すら与えるだろう。そうなればますます信者は増えていく。そして君はクリフォト教のトップでもあるんだ。崇められて当然だよね?」
理屈は通っているよな?
善政のおかげで少しは俺を敬う国民も出てきたようだが、まだ俺を直視すると怖がる奴が多いのも事実だ。俺が王位に就いて1年は経ったんだが、理想はまだ遠いか。
全ての国民が俺を崇め、そして称える様を想像する。その白昼夢の中では皆が俺の名を呼び、跪いて平伏していた。女の子は「キャーアマラ様素敵ー! 抱いてー!」と黄色い声をあげ、野郎どもは「この生命アマラ様のために!」と忠誠を誓うのだ。
まさにそれは俺の理想そのもの。うん、いいじゃないか。国民の称賛を一身に浴びる存在こそ俺の目指すべき場所だ。好き勝手に振る舞うのも楽しいが、称賛を受ける高揚感には敵わないもんだ。
「それで、エスペラント教国の件はどうするつもりだい?」
「ああ、見せしめにちょうどいいんじゃないかと思ってるよ。クリフォト教を廃止とか呑めるわけねーだろ。寝言は寝て言えってやつだな。もうじき返事の期限も来る。宣戦布告でもしてやろうかね?」
こっちには爵位持ちの悪魔や人魔が結構な数いるからな。単純な戦力なら負けはねぇはずだ。それに俺の武威を見せつければきっと多くの国民が俺を褒め称えるに違いない。
「うんうん、でもクーデターで荒れた国の復興の途中なんだから戦争は悪手だよ」
「じゃどうすんだよ」
確かに悪魔の力を借りたおかげで尋常じゃない速度で復興はされている。それでもまだまだ問題は山積みなんだよな。正直俺の脳みそじゃ解決できんわ。
「君と僕とでエスペラント教国に行けばいいじゃないか。あの国には神剣がある。それを回収しておきたいしね」
「へーっ、意外と好戦的じゃないか。俺とお前が本気で暴れたら国の一つくらい楽に滅ぶだろ」
公爵級と候爵級だぞ。それこそ俺とニーグリだけで一国を滅ぼす自信あるわ。だけど配下の力を見せつけるのも必要だと言ったのはお前だろ。
「魔王になるのが本懐だしね。それに、クリフォトの木を植えるには多くの血が必要なんだよ」
「なるほど、同時に条件を満たそうって腹なわけか」
クリフォトの木を植えるには魔王になることと多くの血が必要らしい。正確にはクリフォトの枝であるレイモンが大地に根を下ろし、大樹となるそうだ。
「そういうこと。僕と君がいる限りこの国は安泰であると知れば多くの称賛や信者が期待できるからね。だからやろうよ」
ニーグリは俺の近くまで来ると耳元で囁いた。息吹きかけんじゃねぇこそばゆい。思わず身震いしちまっただろうが……。
「わ、わかったよ。やってやんよ」
ま、今さら人を殺しても何の感情も湧かないから別にかまわんがな。もう何人殺したかなんて数えちゃいねぇけど、王様になってから人を殺すのは初めてになるのか。
「ふふっ、楽しくなりそうだね」
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