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第147話 《アマラの視点》滅亡へのプレリュード
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「来てやったぞ、エスペラント教国の教皇様よ」
俺は今エスペラント教国の教皇の前に立っている。もちろん俺の隣にはニーグリがいるわけだがな。しかし大聖堂にも謁見の間なんてものがあるんだな。さすが大国、俺の国の謁見の間より広いわ。
「……無礼千万だな。一国の王ともあろうものが先触れもなくやって来るか。しかも神聖なる大聖堂の壁を破壊して入ってくるとは」
おうおう、怒ってる怒ってる。てめぇごときが怒ったところで恐くもなんともないんだがな。どうせ今からここは地獄となる。大聖堂の壁をちょっと壊したくらい大した事ないだろ。
「そんなことよりクリフォト教を廃止しろっていうお前らの要望の返事を持ってきてやったぞ」
「聞こうか」
「ああ、答えはクソ喰らえだ。むしろ貴様らがアルテア教を捨て、クリフォト教を国教としろ。そうすれば命は助けてやるぞ」
くたばれ、と言わんばかりに親指をサムズダウンさせて鼻で笑ってやった。俺の白い歯もキラリと輝くぜ?
「愚かな。それは我らエスペラント教国、ひいてはこの大陸の全ての他の国に対する宣戦布告と受け取られるだろう。下がって戦争の準備でもするがいい。開戦の場所は追って連絡しよう」
あー、そういや戦争のルールにそんなのあったな。最初の開戦場所は本来は宣戦布告を行った方が決めるのが慣例のはずなんだが。軽く見てるってことか。
「いやいや、それには及ばないよ教皇様」
「従者如きに発言を許した覚えはない。下がるがいい」
おいおい、ニーグリを前に凄い態度だなこいつは。ニーグリが魔力を抑えているとはいってもこのヤバさがわからんのか。
「僕は従者じゃないんだな。僕の名はニーグリ。このクリフォト教に君臨する神、いや魔王となる存在だ。クリフォトの木を世界に根付かせるため、君たちには犠牲になってもらうよ」
ニーグリがにこやかに伝えると、周りに緊張が走ったようだな。周りの奴らも最初は俺達を見下したような目をしていたが、すぐに戦士の目になりやがった。衛兵どもはなかなか訓練されているようだな。もっとも、俺とニーグリにとってはゴミカス同然だが。
「こいつらをひっ捕らえろ! 殺しても構わん! いや、むしろ殺すのだ!」
「へーっ、できるのかそれ? おもしろいな、やってみろよ」
教皇はニーグリが何者かわかったのか、まともに顔色を変えて周りに命令する。出来もしないことを部下に押し付けんなよな。
「聖下、この私にお任せ下さい。神剣カリーンを手にした私に敵う者はいません」
そのおっさんは教皇と俺達の間に入り、道を塞ぐように立ちはだかる。煌めくほどの美しさを放つ刃に綺羅びやかな装飾のされた剣。あれが神剣カリーンか。なるほど、確かに凄まじい力を感じる。
「嬉しいね、神剣カリーン探していたんだ。わざわざ持って来てくれるなんてとても親切なおじさんだね。お礼に死に方を選ばせてあげるよ。真っ二つがいい? 首を跳ねられるのがいい? それとも苦しみ抜いて死んでみたい?」
ニーグリがわきわきと肘を振って目を輝かせている。いや、こんなときまで仕草が女の子なんかい。
「戯れ言を。このカリーンの斬れ味、堪能するがいい!」
おっさんが神剣カリーンを振りかぶってニーグリに斬りかかる。
……おせぇ。人間にしちゃやるようだがあんなもんニーグリに通じるかよ。
「あれれれれー? 斬れてないよ? 神剣ってこんなにナマクラなの?」
あろうことかニーグリはそのおっさんの全力の一撃を左腕の手首で受け止めた。さすがにこれは俺でもやる勇気ないわ。
「な、なんだと!?」
「あ、そうか。おじさんの腕がナマクラなんだね。エストガレスで見たあの子だったらその剣で僕の手首くらい切り落とせただろうなぁ。名前なんて言ったかな?」
「遊んでないでさっさと剣を回収してくれ。その剣の神気は俺にはちとキツイ」
全く、神剣というだけあって凄い神気だ。神気ってのは悪魔にとっては毒みたいなもんだが、このレベルの神気を持つ剣で斬られたら子爵級じゃひとたまりもない。恐らく俺でも斬られたらかなりの傷を負うだろう。候爵と公爵でここまでの差があるのかよ。
「うん、そうだね。じゃあおじさん、この剣もらうね?」
そう言い終わるが早いか、おっさんの首が跳んだ。なんてことはない、ニーグリが凄まじい早さで手刀を出しただけだ。恐らく俺以外には見えちゃいないだろうがな。
「な、なんということだ……!」
「聖下、お逃げください!」
わらわらと神官やら騎士やらが教皇を庇うように集まる。俺達に斬りかかるわけでもなく、あくまで教皇を庇うように動いているわけか。
「なぁニーグリ。この教皇だけ生かして逃がしてやろうぜ」
「え、なんで?」
「俺達の恐怖を教皇が語る。それもまたいいんじゃないかと思うんだ」
そう。教皇自らが俺達の恐怖を語り俺達の存在を世に知らしめるのだ。そうすれば俺は誰もが一目置く存在となる。俺の承認欲求を満たすいいアイデアじゃないか。
「君って本当に承認欲求の塊だよね。君の場合は貧しい生まれによる劣等感から来るものかな。ほんと、どろどろしてて根深くて僕好みの業の深い欲望だね」
そこは頬を染めるとこじゃねーだろ。なんでそんなうっとりしてるんだよ。
「やかましいわ。じゃあ始めようか。レディース&ジェントメン。今宵始まるは殺戮の宴でございます。死の恐怖をごゆるりとお楽しみくださいませ」
俺は目一杯腕を広げ、高らかに宣言する。さぁ始めようか。これは戦いじゃねぇ。一方的な虐殺だ。
俺は今エスペラント教国の教皇の前に立っている。もちろん俺の隣にはニーグリがいるわけだがな。しかし大聖堂にも謁見の間なんてものがあるんだな。さすが大国、俺の国の謁見の間より広いわ。
「……無礼千万だな。一国の王ともあろうものが先触れもなくやって来るか。しかも神聖なる大聖堂の壁を破壊して入ってくるとは」
おうおう、怒ってる怒ってる。てめぇごときが怒ったところで恐くもなんともないんだがな。どうせ今からここは地獄となる。大聖堂の壁をちょっと壊したくらい大した事ないだろ。
「そんなことよりクリフォト教を廃止しろっていうお前らの要望の返事を持ってきてやったぞ」
「聞こうか」
「ああ、答えはクソ喰らえだ。むしろ貴様らがアルテア教を捨て、クリフォト教を国教としろ。そうすれば命は助けてやるぞ」
くたばれ、と言わんばかりに親指をサムズダウンさせて鼻で笑ってやった。俺の白い歯もキラリと輝くぜ?
「愚かな。それは我らエスペラント教国、ひいてはこの大陸の全ての他の国に対する宣戦布告と受け取られるだろう。下がって戦争の準備でもするがいい。開戦の場所は追って連絡しよう」
あー、そういや戦争のルールにそんなのあったな。最初の開戦場所は本来は宣戦布告を行った方が決めるのが慣例のはずなんだが。軽く見てるってことか。
「いやいや、それには及ばないよ教皇様」
「従者如きに発言を許した覚えはない。下がるがいい」
おいおい、ニーグリを前に凄い態度だなこいつは。ニーグリが魔力を抑えているとはいってもこのヤバさがわからんのか。
「僕は従者じゃないんだな。僕の名はニーグリ。このクリフォト教に君臨する神、いや魔王となる存在だ。クリフォトの木を世界に根付かせるため、君たちには犠牲になってもらうよ」
ニーグリがにこやかに伝えると、周りに緊張が走ったようだな。周りの奴らも最初は俺達を見下したような目をしていたが、すぐに戦士の目になりやがった。衛兵どもはなかなか訓練されているようだな。もっとも、俺とニーグリにとってはゴミカス同然だが。
「こいつらをひっ捕らえろ! 殺しても構わん! いや、むしろ殺すのだ!」
「へーっ、できるのかそれ? おもしろいな、やってみろよ」
教皇はニーグリが何者かわかったのか、まともに顔色を変えて周りに命令する。出来もしないことを部下に押し付けんなよな。
「聖下、この私にお任せ下さい。神剣カリーンを手にした私に敵う者はいません」
そのおっさんは教皇と俺達の間に入り、道を塞ぐように立ちはだかる。煌めくほどの美しさを放つ刃に綺羅びやかな装飾のされた剣。あれが神剣カリーンか。なるほど、確かに凄まじい力を感じる。
「嬉しいね、神剣カリーン探していたんだ。わざわざ持って来てくれるなんてとても親切なおじさんだね。お礼に死に方を選ばせてあげるよ。真っ二つがいい? 首を跳ねられるのがいい? それとも苦しみ抜いて死んでみたい?」
ニーグリがわきわきと肘を振って目を輝かせている。いや、こんなときまで仕草が女の子なんかい。
「戯れ言を。このカリーンの斬れ味、堪能するがいい!」
おっさんが神剣カリーンを振りかぶってニーグリに斬りかかる。
……おせぇ。人間にしちゃやるようだがあんなもんニーグリに通じるかよ。
「あれれれれー? 斬れてないよ? 神剣ってこんなにナマクラなの?」
あろうことかニーグリはそのおっさんの全力の一撃を左腕の手首で受け止めた。さすがにこれは俺でもやる勇気ないわ。
「な、なんだと!?」
「あ、そうか。おじさんの腕がナマクラなんだね。エストガレスで見たあの子だったらその剣で僕の手首くらい切り落とせただろうなぁ。名前なんて言ったかな?」
「遊んでないでさっさと剣を回収してくれ。その剣の神気は俺にはちとキツイ」
全く、神剣というだけあって凄い神気だ。神気ってのは悪魔にとっては毒みたいなもんだが、このレベルの神気を持つ剣で斬られたら子爵級じゃひとたまりもない。恐らく俺でも斬られたらかなりの傷を負うだろう。候爵と公爵でここまでの差があるのかよ。
「うん、そうだね。じゃあおじさん、この剣もらうね?」
そう言い終わるが早いか、おっさんの首が跳んだ。なんてことはない、ニーグリが凄まじい早さで手刀を出しただけだ。恐らく俺以外には見えちゃいないだろうがな。
「な、なんということだ……!」
「聖下、お逃げください!」
わらわらと神官やら騎士やらが教皇を庇うように集まる。俺達に斬りかかるわけでもなく、あくまで教皇を庇うように動いているわけか。
「なぁニーグリ。この教皇だけ生かして逃がしてやろうぜ」
「え、なんで?」
「俺達の恐怖を教皇が語る。それもまたいいんじゃないかと思うんだ」
そう。教皇自らが俺達の恐怖を語り俺達の存在を世に知らしめるのだ。そうすれば俺は誰もが一目置く存在となる。俺の承認欲求を満たすいいアイデアじゃないか。
「君って本当に承認欲求の塊だよね。君の場合は貧しい生まれによる劣等感から来るものかな。ほんと、どろどろしてて根深くて僕好みの業の深い欲望だね」
そこは頬を染めるとこじゃねーだろ。なんでそんなうっとりしてるんだよ。
「やかましいわ。じゃあ始めようか。レディース&ジェントメン。今宵始まるは殺戮の宴でございます。死の恐怖をごゆるりとお楽しみくださいませ」
俺は目一杯腕を広げ、高らかに宣言する。さぁ始めようか。これは戦いじゃねぇ。一方的な虐殺だ。
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