【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ

文字の大きさ
158 / 188

第155話 《サルヴァンの視点》王城の中庭にて

しおりを挟む
「いよいよなんだな……」

 皆が寝静まった王城の中庭で俺は一人寝転がって月を見ていた。月はこうこうと輝き中庭を優しく照らしている。薄っすらと雲がかっちゃいるがそれが返って神秘的にすら思えてしまう。

 平民の俺なんかがこうして王城の中庭で寝転がっていられるのも俺達龍炎光牙が龍神ザルス様の試練をクリアしたおかげだろう。そのせいで神の使徒だとか持ち上げられてしまっちゃいるけどな。

「俺達はただ貧しさから抜け出したくて必死に足掻いていただけだったんだがな……」

 その手の先に何かを求めるように俺は月に向かって手を伸ばす。もちろん掴めるわけがない。

 思えばルウの奴が拡大解釈というとんでもないスキルを手に入れたことから全てが始まったんだったな。才能や成長の強化ブーストなんていうとんでもない魔法によって俺達の力は開花した。そのおかげもあり俺達は瞬く間に急成長してこの王都アプールでもトップクラスの冒険者にまでなった。

 後輩達を飢えさせることもなくなり、独り立ちできるよう支援できるほどになれた。確かにそれは俺達が望んだ未来だったし、誇らしく思う。しかしまさか世界の命運まで任せれるなんて思わなかったぜ。正直俺の器じゃねぇよな、なんて思ってる。

「でもやらなきゃならねぇよな。リーダーの俺が弱気じゃあいつらを引っ張ってやれねぇもんな」

 そうだ、俺はあいつらのリーダーだ。正直ルウの方が向いているんじゃないか、と思って相談したこともあったっけ。そしたらあいつ言ってたよな。

『僕らはサルヴァンで繋がった仲だよ。サルヴァンが居なかったら僕は飢えて死んでいたかもしれない。リーネもアレサも救えなかったと思う。そして何より後輩達が一番頼りにしているのはサルヴァン、君なんだ。だからサルヴァンしかいないんだよ、僕らのリーダーになれるのはね』

 そうだ、俺の背中にはあいつらがいる。俺が守り、俺を支えてくれる頼れる仲間たちがいるからな。だからこの戦い負けるわけにはいかない。

「サルヴァン様……?」

 寝そべっている俺を覗く顔が一つ。なんというかとんでもない美少女だな、と思ったら皇女様じゃないか。確かナターシャ様だったかな。なんでこんなとこに一人でいる?

「ナターシャ様、このような夜更けに護衛もつけずどうされました」

 まだ開戦していないとはいえ、アマラやニーグリ達から逃げて来たんだろうが。もし追手を差し向けられていたら非常に面倒くさいことになるんだがな。

「そうでございますね。ではサルヴァン様が今から私を護衛してくださいませ」

 薄っすらと優しく目を細めて微笑む。この笑顔の破壊力すげぇな。おっと、紳士に振る舞わないとな。

「名誉ある大任謹んで承りました。お部屋までお送り致しましょう」

 俺は起き上がると彼女の前に跪いた。うーん今度貴族の礼儀作法とか勉強した方がいいかもしれんな。俺の恥は龍炎光牙の恥になっちまうからな。

「ええ、ですがその前に少しお話をしたいと思っております」
「私めにですか?」

 皇女様が俺にか。アマラやニーグリに関しては確かに俺達が一番良く知っているからそのことかもしれんな。でも正直そこまで深い関わりがあるわけじゃないんだが。

「ええ、隣失礼いたしますね。サルヴァン様も楽になさってくださいまし」

 皇女様が俺の横に並び、ちょこんと腰を下ろす。高貴な方のはずなんだが草むらに腰を下ろすとは意外だな。

 ふわりと良い香りがした。こういうのをなんていうんだ?
 ふろーらるだっけ?
 なんかこう甘く鼻腔をくすぐる香りで、冷静でいようと必死に頑張ってる俺の心臓の鼓動を容易に早くする。

「こ、皇女様いけません。私のような下賤な者の隣に座るなど……!」

 浮いた話のない俺にはちょっと耐えられそうにないぞ。しかしここで変に鼻の下を伸ばすなどあっちゃならんしなぁ。

「龍神ザルス様に見出された御方が下賤な方のわけないですよ。あまり御自分を卑下なさらないでください」
「そうは言いましても俺なんて平民ですし、貧しい生まれの孤児ですよ!?」

 思わず距離を取ろうとする俺の二の腕を皇女様が自らの腕で絡め取る。

 ち、近い近い!

「お待ちくださいませ。サルヴァン様は命の恩人でもございます。それに身分などアルテア様の前ではあってないようなものでございます。サルヴァン様も私も、アルテア様の御前であれば等しく神の子なのです」
「でもここは王城でございますし……」

 本人がそれで良くても周りが納得するわけないんだよな。身分や生まれなんてものは権威の象徴たる王城じゃ絶対だろ。とはいえ、あまり邪険にするわけにもいかんよな……。

「ただお話をしたいと、それだけでございます。それすら叶わぬものなのですか?」
「い、いえ……。それでお話というのは?」

 頼むから上目遣いやめてくれ。俺みたいな単純な男なんてそれで容易に陥落する自覚があるんだよ。

「アマラのことでございます。一体彼は何者なのでございましょう」

 やはりアマラのことか。ま、俺が知ってる範囲なんてたかが知れているけどな。

「あいつは俺達と同じストリートチルドレンですよ」
「ストリートチルドレン、と言いますとつまり孤児だったということですね」
「ええ。俺達の中には親の顔も知らない者もいますし、戦争によって命からがら逃げて流れ着いた者など色々です。運良く孤児院に入れた者達と違い、俺達は常に貧しさや病気、不当な暴力に抗いながら身を寄せて生き抜いてきました。アマラもそんな中の一人だったはずです」

 そうだ。だがあいつと俺達には決定的な違いがあった。恐らくだが、これが決定的な違いを生んだのだろう。

「だったはず……?」
「ええ。ここからは俺達の想像でしかないんですけどね。あいつは不幸にも出会ってしまったんですよ。ドレカヴァクという最悪の悪魔に」
「ドレカヴァクと言いますと確か貴方がたが滅ぼした魔神でしたわね」
「ええ。あいつはドレカヴァクと契約して力を得てしまった。貧しさから抜け出すためにあいつは自分の周りの人間を差し出したんです。貧しさがあいつの心を蝕んだのでしょう。飢えってのは本当に辛いんです。生きるためにゴミを漁ることもあるし、物乞いをしてお金を恵んでもらうこともある。僅かなお金のために身体を売る話なんて珍しくもなんともないんですよ」
「…………」

 おっと、皇女様には刺激の強い話だったかもしれんな。だが事実だ。飢えを知らない者には想像もつかない話だろうな。

「そしてドレカヴァクに付け込まれ悪魔に魂を売り渡してしまったんだと思います。あくまで想像ですけどね」

 もし俺が先にドレカヴァクと出会っていたらどうなっていただろうか?
 俺にはみんなを守るんだ、という信念があった。仲間は売らなくてもそうでない相手なら容赦なく売り渡していたかもな。いや、よそう。仮定の話など意味がない。

「そうなのですね。ある意味ではドレカヴァクは全ての始まりの悪魔なのかもしれません。ならこれはお伝えしないといけないでしょう」
「え?」
「ドレカヴァクは公爵級悪魔として復活しております」
「なんだって……!?」

 はぁっ!?
 あいつの魔石は怖くて使えないとルウが収納して永遠に封印しているんだがな。一体これはどういうことなんだ?
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。 勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。 事態は段々怪しい雲行きとなっていく。 実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。 異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。 【重要なお知らせ】 ※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。 ※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

処理中です...