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第159話 アーカサス砦攻略戦1
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あれから半年程が経ち、僕らはニーグリンドとエストガレスとの国境近くにあるロウェン大平原に陣取っていた。なぜかっていうとエストガレス王国がニーグリンドに対して宣戦布告を行ったからだ。
そしてエリオット王太子や将軍等の重鎮がテントの中で会議を開いているんだけど、そこには僕とサルヴァンも参加していた。
「アーカサスの砦には悪魔らしき人影もありますね。恐らく爵位持ちの悪魔もいると思われます」
砦の様子を見に行っていたミラが報告する。彼女の遠視があれば砦の見える位置まで移動する手間もない。この陣地から砦までの距離はおよそ10キロほどだ。その距離であれば3キロも進めば射程に入ることになる。
「そうか。レッサーデーモンなんかはいないのか?」
「この場にはいませんが、戦場で呼び出すと思われます。聖霊の中には神域への昇華を使えるものも数多くいますのでレッサーデーモンクラスならどうということはないでしょう」
王太子殿下はレッサーデーモンの存在を警戒しているようだけど、こちらには多くの人工聖霊がいる。レッサーデーモン程度は瞬時に殲滅可能だろう。そうなると敵は人間の兵士と爵位持ちの悪魔となる。
「こちらの提示した開戦時期は明後日だ。だが向こうもこちらがここに陣取っているのは把握しているだろうな。果たしてあいつらが開戦時期を守るのか?」
戦争にはルールがある。宣戦布告の際に日取りと場所を指定するんだけど、破ったから罰則があるわけじゃない。ただ他の国から卑怯者のそしりを受け社会的に非難されるだけだ。世界中を敵に回しているニーグリンドにしてみれば痛くも痒くもないだろう。
「どうでしょうかね? 僕らとしては敵の目をこちらに向けて時間を稼ぎたいんですけどね。それだったらさっさと開戦して戦果を挙げるのもありだと思います」
「なるほど、確かにその方がこちらに注目せざるをえんな」
アマラ達の対処も必要だがクリフォトの木を放置するわけにはいかない。アマラが注目しているのは間違いなく僕らのはずだ。であればこの場で僕らの存在を示して奴の注意をこちらに向けさせることができるだろう。
その間にライミスさん達がクリフォトの木を破壊するのだ。クリフォトの木は元エスペラントの聖都にあるのがわかっている。だったら破壊するしかないよね?
ただ公爵級の悪魔が守っている可能性もあるからね。ライミスさん達だけじゃなく筋肉の誓いの人達と教会のエクソシスト達、そして自律型の人工聖霊も同行する予定だ。王国が保有している対悪魔の戦力としては最強クラスとなる。
最悪なのはニーグリがクリフォトの木を守っている場合だけど、その時のための逃げる秘策はちゃんと用意してあるのだ。守っていなくても破壊したのに気づかれたら襲ってくる可能性もあるわけだし。
「ええ。予定ではライミスさん達が聖都に向かうのは一月後ですね。それまでは僕らも負けを許されません」
飛空艇を使えば1日で着く距離だ。しかし目立つためエスペラント教国領に入る前に降りてそこからは馬車になる。
発つのを一ヶ月後にしたのはこちらが攻めてる間に攻め込まれる危険性を考慮してのことだ。相手は悪魔なのだからこちらの目をかい潜って攻め込まれるかもしれないからね。僕がアマラならそうするだろう。
「そうだな。ところでの開戦予定場所はここから3キロ程先の街道になるが、どう戦うべきだと思う?」
「存在感を示すなら力押しですかね。最初にお互いの部隊がずらりと並ぶので、いきなりリーネの深淵気発衝で度肝を抜いてやればいいと思います」
何でも開戦のマナーらしく、指定した場所にお互いの軍が並び、お互いの存在を確認してから戦が始まるそうだ。その後は街や砦の奪い合いになるわけだけど、最初に負けると当然攻め込まれる立場になるため、多くの場合はそこで停戦交渉になることが多いという。
だけど今回はそうならない。僕らの勝利条件は魔王ニーグリを倒し、人間をやめたアマラも倒し、そしてクリフォトの木を滅ぼさないといけないのだ。これはもはや滅ぼすか滅ぼされるかの戦いなのだから。
「おお、あの究極魔法の一つか、それはいいな。確かに敵側の目をこちらに向けなければならんからな。派手なやつで度肝を抜いて一気呵成に攻め落とすとしようか」
殿下はニマニマしながら顎を触り愉快そうだ。こちらに目を向けるためとはいえ、宣戦布告の際に僕らが参戦することをわざわざ告げてあるからね。最初は様子見かそれとも凶悪な戦力を回してくるか。それを見極める必要があるのだ。
「攻め落とした後は砦に結界を張ります。あいつらの戦力の中心は悪魔になるはずですからね。疲弊を狙うなら大量のレッサーデーモンを逐次投入してくるでしょう」
「なるほど、通常の戦とは勝手が違う、というわけですな」
「そうなりますね。人間相手の常識は通じないと考えていいと思います。レッサーデーモン程度であれば対策済みですけど」
とはいえ、人工聖霊が使える魔法は実はそんなに多くない。姿形は自由でも能力に関しては元にした魔法と魔石に左右される。神域への昇華を元に作るなら最低でもオーガロードに相当するレベルのモンスターの魔石が必要だ。
しかしそんなモンスターがポコポコ存在しているわけはない。となるとそれらを相当数集めるためにはダンジョンとなる。結局そこでもザルス様の協力が必要不可欠だったのだ。
「つまり数で押される心配は薄い、ということですな。ですが相手は曲がりなりにも魔王の軍隊ですからな。個の力は侮れませぬゆえ油断……、失礼。魔王ニーグリの恐怖を直接知る貴方がたに言うセリフではありませんでしたな」
「いえ、将軍。お気持ちごもっともでございます」
僕の話を聞いても油断しないあたり将軍はさすがだと思う。王国の魔導士の中には人工聖霊と契約して勝った気になってる人もいたからねぇ……。そういう奴から死んでいくんだと将軍様に怒鳴られてる人もいたな。
「……もうじき開戦か。悪魔相手だけなら楽なんだがな」
サルヴァンがボソッとつぶやく。これはニーグリンドという国家相手との戦争でもあるため、敵は悪魔だけじゃない。
人を殺すのが初めて、というわけではないけどやっぱり気分のいいものじゃないし望んでやろうとは思えないのだ。
多くの人が死ぬ。
そしたらまた僕達みたいなストリートチルドレンが増えるだろう。
それがたまらなく嫌だ。
そしてエリオット王太子や将軍等の重鎮がテントの中で会議を開いているんだけど、そこには僕とサルヴァンも参加していた。
「アーカサスの砦には悪魔らしき人影もありますね。恐らく爵位持ちの悪魔もいると思われます」
砦の様子を見に行っていたミラが報告する。彼女の遠視があれば砦の見える位置まで移動する手間もない。この陣地から砦までの距離はおよそ10キロほどだ。その距離であれば3キロも進めば射程に入ることになる。
「そうか。レッサーデーモンなんかはいないのか?」
「この場にはいませんが、戦場で呼び出すと思われます。聖霊の中には神域への昇華を使えるものも数多くいますのでレッサーデーモンクラスならどうということはないでしょう」
王太子殿下はレッサーデーモンの存在を警戒しているようだけど、こちらには多くの人工聖霊がいる。レッサーデーモン程度は瞬時に殲滅可能だろう。そうなると敵は人間の兵士と爵位持ちの悪魔となる。
「こちらの提示した開戦時期は明後日だ。だが向こうもこちらがここに陣取っているのは把握しているだろうな。果たしてあいつらが開戦時期を守るのか?」
戦争にはルールがある。宣戦布告の際に日取りと場所を指定するんだけど、破ったから罰則があるわけじゃない。ただ他の国から卑怯者のそしりを受け社会的に非難されるだけだ。世界中を敵に回しているニーグリンドにしてみれば痛くも痒くもないだろう。
「どうでしょうかね? 僕らとしては敵の目をこちらに向けて時間を稼ぎたいんですけどね。それだったらさっさと開戦して戦果を挙げるのもありだと思います」
「なるほど、確かにその方がこちらに注目せざるをえんな」
アマラ達の対処も必要だがクリフォトの木を放置するわけにはいかない。アマラが注目しているのは間違いなく僕らのはずだ。であればこの場で僕らの存在を示して奴の注意をこちらに向けさせることができるだろう。
その間にライミスさん達がクリフォトの木を破壊するのだ。クリフォトの木は元エスペラントの聖都にあるのがわかっている。だったら破壊するしかないよね?
ただ公爵級の悪魔が守っている可能性もあるからね。ライミスさん達だけじゃなく筋肉の誓いの人達と教会のエクソシスト達、そして自律型の人工聖霊も同行する予定だ。王国が保有している対悪魔の戦力としては最強クラスとなる。
最悪なのはニーグリがクリフォトの木を守っている場合だけど、その時のための逃げる秘策はちゃんと用意してあるのだ。守っていなくても破壊したのに気づかれたら襲ってくる可能性もあるわけだし。
「ええ。予定ではライミスさん達が聖都に向かうのは一月後ですね。それまでは僕らも負けを許されません」
飛空艇を使えば1日で着く距離だ。しかし目立つためエスペラント教国領に入る前に降りてそこからは馬車になる。
発つのを一ヶ月後にしたのはこちらが攻めてる間に攻め込まれる危険性を考慮してのことだ。相手は悪魔なのだからこちらの目をかい潜って攻め込まれるかもしれないからね。僕がアマラならそうするだろう。
「そうだな。ところでの開戦予定場所はここから3キロ程先の街道になるが、どう戦うべきだと思う?」
「存在感を示すなら力押しですかね。最初にお互いの部隊がずらりと並ぶので、いきなりリーネの深淵気発衝で度肝を抜いてやればいいと思います」
何でも開戦のマナーらしく、指定した場所にお互いの軍が並び、お互いの存在を確認してから戦が始まるそうだ。その後は街や砦の奪い合いになるわけだけど、最初に負けると当然攻め込まれる立場になるため、多くの場合はそこで停戦交渉になることが多いという。
だけど今回はそうならない。僕らの勝利条件は魔王ニーグリを倒し、人間をやめたアマラも倒し、そしてクリフォトの木を滅ぼさないといけないのだ。これはもはや滅ぼすか滅ぼされるかの戦いなのだから。
「おお、あの究極魔法の一つか、それはいいな。確かに敵側の目をこちらに向けなければならんからな。派手なやつで度肝を抜いて一気呵成に攻め落とすとしようか」
殿下はニマニマしながら顎を触り愉快そうだ。こちらに目を向けるためとはいえ、宣戦布告の際に僕らが参戦することをわざわざ告げてあるからね。最初は様子見かそれとも凶悪な戦力を回してくるか。それを見極める必要があるのだ。
「攻め落とした後は砦に結界を張ります。あいつらの戦力の中心は悪魔になるはずですからね。疲弊を狙うなら大量のレッサーデーモンを逐次投入してくるでしょう」
「なるほど、通常の戦とは勝手が違う、というわけですな」
「そうなりますね。人間相手の常識は通じないと考えていいと思います。レッサーデーモン程度であれば対策済みですけど」
とはいえ、人工聖霊が使える魔法は実はそんなに多くない。姿形は自由でも能力に関しては元にした魔法と魔石に左右される。神域への昇華を元に作るなら最低でもオーガロードに相当するレベルのモンスターの魔石が必要だ。
しかしそんなモンスターがポコポコ存在しているわけはない。となるとそれらを相当数集めるためにはダンジョンとなる。結局そこでもザルス様の協力が必要不可欠だったのだ。
「つまり数で押される心配は薄い、ということですな。ですが相手は曲がりなりにも魔王の軍隊ですからな。個の力は侮れませぬゆえ油断……、失礼。魔王ニーグリの恐怖を直接知る貴方がたに言うセリフではありませんでしたな」
「いえ、将軍。お気持ちごもっともでございます」
僕の話を聞いても油断しないあたり将軍はさすがだと思う。王国の魔導士の中には人工聖霊と契約して勝った気になってる人もいたからねぇ……。そういう奴から死んでいくんだと将軍様に怒鳴られてる人もいたな。
「……もうじき開戦か。悪魔相手だけなら楽なんだがな」
サルヴァンがボソッとつぶやく。これはニーグリンドという国家相手との戦争でもあるため、敵は悪魔だけじゃない。
人を殺すのが初めて、というわけではないけどやっぱり気分のいいものじゃないし望んでやろうとは思えないのだ。
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