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午後からも何となく気まずい雰囲気のままだった。
こんなに早く時間が過ぎて欲しいと思いながら仕事をするのは、入社以来初めてだ。
でもこういうときに限って、仕事が山積みだったりするのは、午前中不在にしていたからなので仕方がない。
気付けばフロアには真由先輩と二人だけ。
更に増す気まずさを打ち消すように、レビューサイトから必死に情報収集をしていると、真由先輩が近づいてくる気配がした。
無意識に体を強ばらせながらマウスをスクロールしていると、デスクにコロンという音。
目を遣ると生キャラメルが二つ置かれていた。
「はい、遅くまでお疲れ様。そのサイトからの拾い上げが終わったら上がっていいよ。飛鳥はとっくにだし、私ももう帰るから。今日は本当にごめんね。帰り、気をつけてね。お先に」
「あ、いえ。ありがとうございます。お疲れさまでした」
パッと顔を上げて挨拶すると、ふわっとしたいつもの優しい笑顔。
それを見て安心したのは束の間で、そのまま消えていくと思われた真由先輩のヒールの音が途中で止まり、耳慣れた声が静かなフロアに響いた。
「何が『ごめん』なんですか?」
缶コーヒーを手にした晴臣が、販促部の入り口で冷たい目をして小柄な真由先輩を見下ろしていた。
「千歳に何かしたんですか?事と次第によっては許しませんけど」
真由先輩は晴臣の絶対零度の眼差しに怯むことなく、腕組みをして小さな体をややふんぞり返らせて大きく見せた。
「…ええ、したわ。あなた達が正式に付き合うことになったって聞いたから、蓮見ちゃんには椎名くんなんかより手塚社長の方がお似合いってつい本当のこと言っちゃったのよ」
怒りでブチッと血管が切れたような顔をした晴臣が、押し殺した声で即座に言い返す。
「ご心配なく。あんなアラフォーで枯れかけのオッサンなんかより、俺の方が千歳のこと幸せにできる自信あるんで」
二人の間にバチバチと火花が散っているのが見えそうだ。
止めなければと思うけれど、私が割って入ったところで変な巻き込まれ方をして一番ダメージを受けそうで動けずにいると、どんどんエスカレートしていく。
「そうかしら?その割に蓮見ちゃん、椎名くんのこと全然男として好きそうじゃないじゃない。なのに急に付き合うことになったなんて。蓮見ちゃんの弱みでも握って脅しだんじゃないでしょうね?女はね、好きな男の隣じゃないと幸せになれないのよ」
「千歳は誰かを想うより、想われる方が合ってるんです。報われないのに好きな男の隣にいつまでもしがみついている貴女なんかとは違う。妙な考え押し付けないでください」
こんなに早く時間が過ぎて欲しいと思いながら仕事をするのは、入社以来初めてだ。
でもこういうときに限って、仕事が山積みだったりするのは、午前中不在にしていたからなので仕方がない。
気付けばフロアには真由先輩と二人だけ。
更に増す気まずさを打ち消すように、レビューサイトから必死に情報収集をしていると、真由先輩が近づいてくる気配がした。
無意識に体を強ばらせながらマウスをスクロールしていると、デスクにコロンという音。
目を遣ると生キャラメルが二つ置かれていた。
「はい、遅くまでお疲れ様。そのサイトからの拾い上げが終わったら上がっていいよ。飛鳥はとっくにだし、私ももう帰るから。今日は本当にごめんね。帰り、気をつけてね。お先に」
「あ、いえ。ありがとうございます。お疲れさまでした」
パッと顔を上げて挨拶すると、ふわっとしたいつもの優しい笑顔。
それを見て安心したのは束の間で、そのまま消えていくと思われた真由先輩のヒールの音が途中で止まり、耳慣れた声が静かなフロアに響いた。
「何が『ごめん』なんですか?」
缶コーヒーを手にした晴臣が、販促部の入り口で冷たい目をして小柄な真由先輩を見下ろしていた。
「千歳に何かしたんですか?事と次第によっては許しませんけど」
真由先輩は晴臣の絶対零度の眼差しに怯むことなく、腕組みをして小さな体をややふんぞり返らせて大きく見せた。
「…ええ、したわ。あなた達が正式に付き合うことになったって聞いたから、蓮見ちゃんには椎名くんなんかより手塚社長の方がお似合いってつい本当のこと言っちゃったのよ」
怒りでブチッと血管が切れたような顔をした晴臣が、押し殺した声で即座に言い返す。
「ご心配なく。あんなアラフォーで枯れかけのオッサンなんかより、俺の方が千歳のこと幸せにできる自信あるんで」
二人の間にバチバチと火花が散っているのが見えそうだ。
止めなければと思うけれど、私が割って入ったところで変な巻き込まれ方をして一番ダメージを受けそうで動けずにいると、どんどんエスカレートしていく。
「そうかしら?その割に蓮見ちゃん、椎名くんのこと全然男として好きそうじゃないじゃない。なのに急に付き合うことになったなんて。蓮見ちゃんの弱みでも握って脅しだんじゃないでしょうね?女はね、好きな男の隣じゃないと幸せになれないのよ」
「千歳は誰かを想うより、想われる方が合ってるんです。報われないのに好きな男の隣にいつまでもしがみついている貴女なんかとは違う。妙な考え押し付けないでください」
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