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「はいじゃあ蓮見ちゃん、今年のクリスマスコフレのコンセプトは?」
ほら。
前回この質問は遼平くんの役割だったはず。
「えー…っと、『復刻と革新』でしたっけ?」
「そう!前回の新商品の流れを受けて、パッケージや商品デザインは創業年に爆発的ヒットを記録したものを元にアレンジしていて、色合いや品質は今のトレンドに合わせてグレードアップさせてるの」
言われてみれば、遼平くんの部屋で見せてもらった資料の中に、ステンドグラスを背景にしたフライヤーがあった…気がする。
遼平くんに自分の気持ちを言えない苦しさのせいで、最初の方に見た創業当時のページの記憶はおぼろげだ。
そうこうしている間にも、迷いのない手付きで進められていた松本さんのメイクが完成した。
衣装は、カラフルなステンドグラスの背景に負けない、それでいて色合いはしっかり馴染む紫陽花のような優しい薄紫のグラデーションのドレス。
「ああ…、想像以上だわ」
真由先輩は噛みしめるようにそう言ってくれたものの、今日の控室は、それと呼ぶには似つかわしくない物置(のような)場所で、姿見はもちろん卓上ミラーさえもなかった。
「松本さん、手鏡を…」
公開撮影なので、いつも以上に仕上がりを確認しておきたかったのに。
「ごめん!蓮見ちゃん。日が暮れてくるとガラスの色味が変わってくるから。もう行って!」
真由先輩に背中をドンッと押され、廊下に投げ出された。
平日の午後とは言え、人気スポットには観光客から地元の親子連れやカップルでなかなかの賑わいを見せている。
そんな中突然現れた、明らかに場違いな格好の私。
尖った矢のような、周りの好奇の視線が襲いかかってくる。
つい今しがた全く鏡で自分の姿を確認できなかったことが自信のなさを増長させ、足がすくむ。
真由先輩達が早く追いかけて合流しくれたらいいのに。
片付けが終わらないのかなかなか来てくれない。
お腹まで痛くなって来た。
こんなとき、私いつもどうしてたっけ?
そうだ。
今までは…前回は…晴臣がいたんだ。
『千歳はどんなカッコでも可愛いし、綺麗だ』
なんて晴臣らしくない言葉で励ましてくれたんだっけ。
でも、今ここに晴臣はいないー
せめて遼平くんとカメラマンの待っているステンドグラスのスペースまで行ければ、このいたたまれない状況からは解放される。
自分の足で歩かなきゃ。
グッと背筋を伸ばし、顔を上げ、堂々と、一歩ずつ。
ようやく遼平くん達のいるスペースに辿り着いた。
「社長」
声を掛けると、カメラマンと談笑していた遼平くんがこちらを振り返った。
叔父バカモード全開で「似合ってる」とか「可愛い」とか言ってくれることに大きく期待していた私は、次の言葉を聞いて愕然とした。
「ーーーー永美」
ほら。
前回この質問は遼平くんの役割だったはず。
「えー…っと、『復刻と革新』でしたっけ?」
「そう!前回の新商品の流れを受けて、パッケージや商品デザインは創業年に爆発的ヒットを記録したものを元にアレンジしていて、色合いや品質は今のトレンドに合わせてグレードアップさせてるの」
言われてみれば、遼平くんの部屋で見せてもらった資料の中に、ステンドグラスを背景にしたフライヤーがあった…気がする。
遼平くんに自分の気持ちを言えない苦しさのせいで、最初の方に見た創業当時のページの記憶はおぼろげだ。
そうこうしている間にも、迷いのない手付きで進められていた松本さんのメイクが完成した。
衣装は、カラフルなステンドグラスの背景に負けない、それでいて色合いはしっかり馴染む紫陽花のような優しい薄紫のグラデーションのドレス。
「ああ…、想像以上だわ」
真由先輩は噛みしめるようにそう言ってくれたものの、今日の控室は、それと呼ぶには似つかわしくない物置(のような)場所で、姿見はもちろん卓上ミラーさえもなかった。
「松本さん、手鏡を…」
公開撮影なので、いつも以上に仕上がりを確認しておきたかったのに。
「ごめん!蓮見ちゃん。日が暮れてくるとガラスの色味が変わってくるから。もう行って!」
真由先輩に背中をドンッと押され、廊下に投げ出された。
平日の午後とは言え、人気スポットには観光客から地元の親子連れやカップルでなかなかの賑わいを見せている。
そんな中突然現れた、明らかに場違いな格好の私。
尖った矢のような、周りの好奇の視線が襲いかかってくる。
つい今しがた全く鏡で自分の姿を確認できなかったことが自信のなさを増長させ、足がすくむ。
真由先輩達が早く追いかけて合流しくれたらいいのに。
片付けが終わらないのかなかなか来てくれない。
お腹まで痛くなって来た。
こんなとき、私いつもどうしてたっけ?
そうだ。
今までは…前回は…晴臣がいたんだ。
『千歳はどんなカッコでも可愛いし、綺麗だ』
なんて晴臣らしくない言葉で励ましてくれたんだっけ。
でも、今ここに晴臣はいないー
せめて遼平くんとカメラマンの待っているステンドグラスのスペースまで行ければ、このいたたまれない状況からは解放される。
自分の足で歩かなきゃ。
グッと背筋を伸ばし、顔を上げ、堂々と、一歩ずつ。
ようやく遼平くん達のいるスペースに辿り着いた。
「社長」
声を掛けると、カメラマンと談笑していた遼平くんがこちらを振り返った。
叔父バカモード全開で「似合ってる」とか「可愛い」とか言ってくれることに大きく期待していた私は、次の言葉を聞いて愕然とした。
「ーーーー永美」
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