【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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11ー4

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川瀬七海―
高校の頃、晴臣を解放してあげてと詰め寄って来た子のうちの一人だ。
当時の私は、いちいち相手にするのが面倒くさくて、制服のネームプレートをぼんやり眺めてやり過ごしていたから、名前だけは覚えている。

でもどうして彼女がeternoにいるの?
いつ再会したんだろう?
もしかして二人の関係はずっと続いていた?

不安と猜疑心が竜巻になって胸をかき乱す。

最後の切り札のはずだった晴臣に、思い切り足元を掬われてしまった。

「その反応…やっぱりちーちゃんもこれを見たんだね」

遼平くんは浴衣の帯の隙間から、私が持ってきたのとは別のスマホを取り出し、なりすましのアカウントを開いて見せた。

いやだ。見たくないー

思い切り顔を背けると、遼平くんはあっさりとスマホを帯の中に戻した。

「どちらかと言うと、椎名くんの方がちーちゃんに夢中に見えたのに…そんな反応するなんて、意外だな」

自分の気持ちに誰よりも驚いている私の心に、遼平くんが、静かに寄り添う。

「ずっとそばにいるのが当たり前だった人が居なくなるのは、辛いよね」

私のとは比較にならない絶対的な孤独に絡め取られる。

もうだめだ。
逃げられない。

「同情でもいい。椎名くんの代わりでもいいから、そばにいて」

前に進めば『是』
引き返そうとすれば『非』
動けばなんらかの意思表示をすることになってしまう。

そして、今の私にはどちらかを選ぶことなんて、到底できない。

その場に突っ立ったまま動けないでいると、私の向こうにある玄関の戸を、遼平くんがそっと閉めた。
その手が軽く背中を押せば、廊下は動く歩道と化し、あっという間に二人を寝室まで誘った。

同時に背中に添えられていただけの手が、身体に絡みつき、首筋に温かく、湿った唇が触れた。

「体、冷たくなってる」

馴染みのない感触にビクッと身をこわばらせると、遼平くんは一度唇を離し、大きく深呼吸した。
それから、私を自分の方に向き直らせ、あやすように頭を包み、これ以上ないほど優しく髪を撫でた。

「…僕に…温めさせて」

遼平くんは、こんな所まで来ておいて、心の底から求められて尚何も言わない私を責めることなく、冷え切った唇に自分の唇を重ねた。

触れられたところからじわりと温もる。

あの夜とは違う。
口づけは徐々に深まっていき、遼平くんの口から流れ込んだ熱が、身体に一つ一つ火を灯していった。
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