113 / 173
15-9
しおりを挟む
目の前で人が振られるところなんて初めて見た。
何と声をかけて良いか分からず、オロオロしていると、光城がテーブルに置かれたロックグラスの中身を一気に飲み干した。
かと思ったらフハハハハハハッ!と笑い出す。
「み、光城さん!?」
気でも触れたのかと覗き込むと、光城の目は至って正常だった。
「あの志織が宣戦布告するなんて!やはり僕の目に狂いはなかった。若く、美しく、家柄も悪くない君と結婚すれば、嫉妬に狂った志織は近いうちに必ずや僕のものになってくれるはず!!」
「な、何バカなこと言ってるんですか!…ってまさか、これまでの結婚も全部ママさんを手に入れるために…!?」
「千歳ちゃんから見ればバカバカしいかもしれないけど、こっちは大真面目でね」
呆気にとられていると、光城がポンとテーブルの上の呼び鈴を押し、すぐに新しいウイスキーの入ったロックグラスが運ばれてきた。
ただし、それを運んできたのはママさんではなかった。
「ほら、もう僕と君の顔を見たくないほど怒ってる」
歪んでる。
こんなことで子どものように目を輝かせるなんて。
「間違ってます!ママさんが本当に光城さんのこと好きなら尚更!!絶対傷ついてる!!」
「どうしてそんなことが分かるの?」
「…え?」
「君も、同じだったから?」
思いがけない指摘に、胸の奥がギクリと嫌な音を立てて軋んだ。
「…だから君は、晴臣という者がありながら手塚くんと寝たの?」
「そ…そんなことありません!私はずっと、遼平くんのことが好きで…!」
「本当に?」
光城の目が鋭く光った。
「光城家はさ、僕がこんなだから、かなり前…晴臣が中学生の頃くらいからアイツのこと狙ってたんだよね。でも、毎回『自分は千歳と結婚してLotusを継ぐから』の一点張りで」
中学生?
そんなに前から晴臣は自分が光越の創業者一族だということを知っていたの?
「今年の夏頃に、正式に断られたんだ。『やっと男として見てもらえるようになったから』って。呆れたよ。そんなので今までよく結婚するって言ってたなって。でも、あんなに嬉しそうな晴臣は初めてだったよ」
夏―。
私が一度遼平くんのことを諦める決意をして、晴臣と試しに付き合ってみることにしたときだ。
さっき私を追い出した晴臣と別人のような、当時の晴臣が脳裏に浮かんで胸が痛い。
いたたまれなくなって、目の前のグラスを呷ると、果実のような香りと、爽やかな酸味が口の中に広がって、余計に胸が詰まった。
そんな私に光城が追い打ちをかける。
「ねえ?アレは本当に、単に晴臣の独りよがりだったの?だとしたら、千歳ちゃん、相当悪い女だね」
何と声をかけて良いか分からず、オロオロしていると、光城がテーブルに置かれたロックグラスの中身を一気に飲み干した。
かと思ったらフハハハハハハッ!と笑い出す。
「み、光城さん!?」
気でも触れたのかと覗き込むと、光城の目は至って正常だった。
「あの志織が宣戦布告するなんて!やはり僕の目に狂いはなかった。若く、美しく、家柄も悪くない君と結婚すれば、嫉妬に狂った志織は近いうちに必ずや僕のものになってくれるはず!!」
「な、何バカなこと言ってるんですか!…ってまさか、これまでの結婚も全部ママさんを手に入れるために…!?」
「千歳ちゃんから見ればバカバカしいかもしれないけど、こっちは大真面目でね」
呆気にとられていると、光城がポンとテーブルの上の呼び鈴を押し、すぐに新しいウイスキーの入ったロックグラスが運ばれてきた。
ただし、それを運んできたのはママさんではなかった。
「ほら、もう僕と君の顔を見たくないほど怒ってる」
歪んでる。
こんなことで子どものように目を輝かせるなんて。
「間違ってます!ママさんが本当に光城さんのこと好きなら尚更!!絶対傷ついてる!!」
「どうしてそんなことが分かるの?」
「…え?」
「君も、同じだったから?」
思いがけない指摘に、胸の奥がギクリと嫌な音を立てて軋んだ。
「…だから君は、晴臣という者がありながら手塚くんと寝たの?」
「そ…そんなことありません!私はずっと、遼平くんのことが好きで…!」
「本当に?」
光城の目が鋭く光った。
「光城家はさ、僕がこんなだから、かなり前…晴臣が中学生の頃くらいからアイツのこと狙ってたんだよね。でも、毎回『自分は千歳と結婚してLotusを継ぐから』の一点張りで」
中学生?
そんなに前から晴臣は自分が光越の創業者一族だということを知っていたの?
「今年の夏頃に、正式に断られたんだ。『やっと男として見てもらえるようになったから』って。呆れたよ。そんなので今までよく結婚するって言ってたなって。でも、あんなに嬉しそうな晴臣は初めてだったよ」
夏―。
私が一度遼平くんのことを諦める決意をして、晴臣と試しに付き合ってみることにしたときだ。
さっき私を追い出した晴臣と別人のような、当時の晴臣が脳裏に浮かんで胸が痛い。
いたたまれなくなって、目の前のグラスを呷ると、果実のような香りと、爽やかな酸味が口の中に広がって、余計に胸が詰まった。
そんな私に光城が追い打ちをかける。
「ねえ?アレは本当に、単に晴臣の独りよがりだったの?だとしたら、千歳ちゃん、相当悪い女だね」
1
あなたにおすすめの小説
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる