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言いたいことは山ほどある。
でも、私が晴臣を傷つけたことに変わりはない。
何を言っても言い訳にしかならない。
それに、あの日の選択を後悔したりしない。
短くても、苦しくても、間違いだらけでも、遼平くんと一緒に過ごした日々は、私にとってかけがえのない時間だった。
昨日の今日でまだとても気持ちの整理なんてできていないけれど、きっといつか、ほろ苦い初恋の思い出になる。
それを、今日知り合ったばかりのこの男に言う必要は、ない。
「…あれ?結構キツい事言ったのに、怒らないんだね?」
「あなたには関係のないことですから」
「本当に?言ったよね。君と手塚くんを別れさせたのは僕だって」
ママさんが嫉妬する顔を見た時と同じように目を輝かせる光城に、腸が煮えくり返りそう。
逆流しそうな怒りを、日本酒で流し込む。
「さっきから気になってたんですけど、それ、どういうことなんですか?」
できるだけ感情を抑えて問いかける私に対して、光城はウイスキーが回ってきたのか饒舌に語り始めた。
「手塚くんに千歳ちゃんを奪われて光越に来たはずの晴臣がさ、バカみたいに必死に僕に頼むんだよ。『eternoとの契約を現状維持で更新してくれ』って」
「現状維持を…社長に頼んだ…?晴臣は、自分は創業者一族だから、入社間もなくてもeternotとの交渉は自分に全権委ねられてるって」
「まさか。いくら身内だからってそんなことしてたら組織が成り立たない。…まあ、晴臣をeternoとの交渉担当に据えたのは、婚約者を奪った相手に、仕返しをするチャンスを与える意図が全くなかったとは言わないけどね」
そんなー。
私が聞いていた話と丸で違う。
父の言うとおり、本当に晴臣の復讐じゃなかったの?
青ざめる私を他所に、光城はeternoとの契約の詳細を語る。
「君が晴臣との婚約の解消を申し出た時点…厳密には晴臣が光越を訪れた時点でeternoとの契約打ち切りは決定事項だったんだ。他のテナントの賃料は売上の20%はもらってるのに対して、eternoは破格の5%。いくら晴臣の母親の頼みだからって明らかに行き過ぎていたからね。ちょうど契約の更新時期だったから、光越としては最高のタイミングだったよ。当然、晴臣にもそれを伝えてあったし、アイツもそのつもりで交渉に臨んだはずだよ」
でも、私が晴臣を傷つけたことに変わりはない。
何を言っても言い訳にしかならない。
それに、あの日の選択を後悔したりしない。
短くても、苦しくても、間違いだらけでも、遼平くんと一緒に過ごした日々は、私にとってかけがえのない時間だった。
昨日の今日でまだとても気持ちの整理なんてできていないけれど、きっといつか、ほろ苦い初恋の思い出になる。
それを、今日知り合ったばかりのこの男に言う必要は、ない。
「…あれ?結構キツい事言ったのに、怒らないんだね?」
「あなたには関係のないことですから」
「本当に?言ったよね。君と手塚くんを別れさせたのは僕だって」
ママさんが嫉妬する顔を見た時と同じように目を輝かせる光城に、腸が煮えくり返りそう。
逆流しそうな怒りを、日本酒で流し込む。
「さっきから気になってたんですけど、それ、どういうことなんですか?」
できるだけ感情を抑えて問いかける私に対して、光城はウイスキーが回ってきたのか饒舌に語り始めた。
「手塚くんに千歳ちゃんを奪われて光越に来たはずの晴臣がさ、バカみたいに必死に僕に頼むんだよ。『eternoとの契約を現状維持で更新してくれ』って」
「現状維持を…社長に頼んだ…?晴臣は、自分は創業者一族だから、入社間もなくてもeternotとの交渉は自分に全権委ねられてるって」
「まさか。いくら身内だからってそんなことしてたら組織が成り立たない。…まあ、晴臣をeternoとの交渉担当に据えたのは、婚約者を奪った相手に、仕返しをするチャンスを与える意図が全くなかったとは言わないけどね」
そんなー。
私が聞いていた話と丸で違う。
父の言うとおり、本当に晴臣の復讐じゃなかったの?
青ざめる私を他所に、光城はeternoとの契約の詳細を語る。
「君が晴臣との婚約の解消を申し出た時点…厳密には晴臣が光越を訪れた時点でeternoとの契約打ち切りは決定事項だったんだ。他のテナントの賃料は売上の20%はもらってるのに対して、eternoは破格の5%。いくら晴臣の母親の頼みだからって明らかに行き過ぎていたからね。ちょうど契約の更新時期だったから、光越としては最高のタイミングだったよ。当然、晴臣にもそれを伝えてあったし、アイツもそのつもりで交渉に臨んだはずだよ」
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