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目だけで息の根を止めそうなほど鋭い視線で晴臣に睨みあげられた遼平くんが、もう一度深く頭を下げた。
「…椎名くんの言うとおりだ。僕は…何の非もない君に対して、それくらい酷い仕打ちをした。本当に、本当にごめん」
一言の弁解もせず、ただただ頭を下げ続ける遼平くんの姿に、事故に遭う前に聞いたことが悪い夢なんかではなかったと思い知らされる。
「…謝って」
私がポツリと呟くと、頭を下げたままの遼平くんが、怪訝そうに顔を上げた。
「え?」
「私じゃなくて、晴臣に。私なんかより、晴臣のほうがずっと辛かったはずだから」
目を見張る晴臣にも、遼平くんは頭を下げた。
「…千歳があなたを許しても、俺は一生許すつもりはない。…でも、事故現場の混乱の中で、千歳に適切な応急処置をしてくれたことだけは感謝してる」
「…永美のときは…なにもしてやれなかったから…」
苦しそうに絞り出す遼平くんの手が、小刻みに震える。
「ご…ごめん!私の不注意で辛いこと思い出させちゃって」
「何でちーちゃんが謝るの?全部僕が悪いのに。それに…君を救える一助になれたことで、僕自信救われたんだ。前に進む力をもらえた気がする」
左半分はボコボコだけど、困ったような遼平くんの微笑みは、見たことないほど穏やかだった。
「本当にありがとう…そして、本当にごめん」
この「ごめん』は、きっと、正真正銘、私の八年分の思いへの答え。
「…大丈夫。私には、晴臣がついてるから。…だから、遼平くんもいつか、誰かの隣で心から安らげる日が来るのを祈ってる」
精一杯明るく言うと、遼平くんはもう一度穏やかに微笑み、病室を去っていった。
二人きりになった病室に、微妙な沈黙が流れると、晴臣がわざとらしい咳払いをして話はじめた。
「…別にアイツのこと庇うつもりなんて毛頭ないけどさ…きっかけはともかく、千歳のことは大切にするつもりだったと思うよ」
晴臣はどこまでも私に甘い。
自分が一番の被害者なのに、私の傷を軽くしようとしてくれているらしい。
でも、真面目な遼平くんのことだから、本当にそうなのかもしれない。
現に、私を抱いたのは最初の一度だけ。
おそらく、父から晴臣と光越、そしてeternoとの関係を聞かされたであろう直後を除いて、その後はキス止まりだった。
そもそも、遼平くんはあの夜本当に私を抱いたのだろうか?
今となっては確かめる術もないけれど。
「あの…光越とeternoの契約はどうなるの?いきなり打ち切りになったりしないよね?」
「心配しなくても、年末交わした契約は期間満了になる三年後まで有効だよ。その後どうなるかはアイツ次第だろう」
「そう…良かった」
三年もあれば、大丈夫。
もう私にできることは何もないけれど、遼平くんならきっと、永美ちゃんと作ったeternoを守っていけるはず。
ほっと胸を撫で下ろしていると、不貞腐れた顔の晴臣に
「もういいから、余計なことばっか考えてないで、怪我人は大人しく寝てろ!」
と叱られてしまった。
「…椎名くんの言うとおりだ。僕は…何の非もない君に対して、それくらい酷い仕打ちをした。本当に、本当にごめん」
一言の弁解もせず、ただただ頭を下げ続ける遼平くんの姿に、事故に遭う前に聞いたことが悪い夢なんかではなかったと思い知らされる。
「…謝って」
私がポツリと呟くと、頭を下げたままの遼平くんが、怪訝そうに顔を上げた。
「え?」
「私じゃなくて、晴臣に。私なんかより、晴臣のほうがずっと辛かったはずだから」
目を見張る晴臣にも、遼平くんは頭を下げた。
「…千歳があなたを許しても、俺は一生許すつもりはない。…でも、事故現場の混乱の中で、千歳に適切な応急処置をしてくれたことだけは感謝してる」
「…永美のときは…なにもしてやれなかったから…」
苦しそうに絞り出す遼平くんの手が、小刻みに震える。
「ご…ごめん!私の不注意で辛いこと思い出させちゃって」
「何でちーちゃんが謝るの?全部僕が悪いのに。それに…君を救える一助になれたことで、僕自信救われたんだ。前に進む力をもらえた気がする」
左半分はボコボコだけど、困ったような遼平くんの微笑みは、見たことないほど穏やかだった。
「本当にありがとう…そして、本当にごめん」
この「ごめん』は、きっと、正真正銘、私の八年分の思いへの答え。
「…大丈夫。私には、晴臣がついてるから。…だから、遼平くんもいつか、誰かの隣で心から安らげる日が来るのを祈ってる」
精一杯明るく言うと、遼平くんはもう一度穏やかに微笑み、病室を去っていった。
二人きりになった病室に、微妙な沈黙が流れると、晴臣がわざとらしい咳払いをして話はじめた。
「…別にアイツのこと庇うつもりなんて毛頭ないけどさ…きっかけはともかく、千歳のことは大切にするつもりだったと思うよ」
晴臣はどこまでも私に甘い。
自分が一番の被害者なのに、私の傷を軽くしようとしてくれているらしい。
でも、真面目な遼平くんのことだから、本当にそうなのかもしれない。
現に、私を抱いたのは最初の一度だけ。
おそらく、父から晴臣と光越、そしてeternoとの関係を聞かされたであろう直後を除いて、その後はキス止まりだった。
そもそも、遼平くんはあの夜本当に私を抱いたのだろうか?
今となっては確かめる術もないけれど。
「あの…光越とeternoの契約はどうなるの?いきなり打ち切りになったりしないよね?」
「心配しなくても、年末交わした契約は期間満了になる三年後まで有効だよ。その後どうなるかはアイツ次第だろう」
「そう…良かった」
三年もあれば、大丈夫。
もう私にできることは何もないけれど、遼平くんならきっと、永美ちゃんと作ったeternoを守っていけるはず。
ほっと胸を撫で下ろしていると、不貞腐れた顔の晴臣に
「もういいから、余計なことばっか考えてないで、怪我人は大人しく寝てろ!」
と叱られてしまった。
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