125 / 173
16-9
しおりを挟む
診断結果は頭蓋骨線状骨折と、上腕骨近位端骨折。
頭の方は大げさに聞こえるけれど、脳の損傷はなく、自然に治癒するのを待つだけ。
肩の骨折も手術の必要はなく、保存療法でいくことに。
運転者が高齢で、あまりスピードを出していなかったのが幸いだったらしい。
6時間くらい意識を失っていたのは、ちょっと重めの脳震とうだったようで、大事を取って2日間入院して様子を見ることになった。
「…ってことで、ほんと、石頭で良かったー」
「うるさい。今話かけんな」
「ちょっ…私の意識が戻る前『冷たい態度とってごめん』って半泣きで謝ってなかった?」
「は?何だそれ?夢でも見てたんじゃねーのか?いいから口開けろ、ほら」
ズイッと差し出されたのは爪楊枝の刺さったりんご…と思しき物体。
「思しき」という表現からも分かるように、パッと見ではりんごとは分からないほど歪な形に切られている。
「晴臣って何でもできるのに、手先だけは異常に不器用だよね」
「うるさい。いいからさっさと食え」
口に入れると、形はともかく、甘酸っぱい味が口内に広がった。
なんだかんだ言いながら、晴臣は目が覚めた瞬間、いや、病院に駆けつけてくれたときから片時も私の側を離れずにいてくれている。
私に対する態度も昔に戻ったようで、すごく居心地がいい。
まだ頭と肩は痛むけれど、事故のゴタゴタが少し落ち着いたところで晴臣に言わなければいけないことがあったことを思い出した。
「あのね、晴臣」
切り出したところで、病室のドアがノックされた。
二人してそちらの方を向き、磨りガラス越しに映るシルエットを確認した途端、病室に緊張が走る。
「手塚です。…入ってもいいかな?」
嘘?
何で遼平くんがここに!?
何しに来たの!!?
ちょうど今、晴臣に全てを知ってしまったことを話そうとしていたところだったのに。
タイミングが悪すぎる。
もしかして、真由先輩から聞いて、私が晴臣に話すのを阻止するために来たとか?
どうしよう!?
どうしたらいいの!!?
一人パニックに陥っている私に気づいていないはずのない晴臣が「どーぞ」と返事をしてしまった。
いつもなら塩を撒いて追い返しかねないのに。
今日に限って、何でー!?
「失礼します」
丁寧を通り越して、他人行儀な挨拶をして入室してきた遼平くんの姿を一目見た私は、絶句した。
左の頬に、車に轢かれた私より重症なんじゃないかと思うほど大きな青あざができていて、本当に知らない人のようだ。
そして、私が何があったのか尋ねるより先に、遼平くんは深く頭を下げた。
「どう謝っても謝りきれないけど…本当にごめん…!」
状況が全く掴めず、オロオロするばかりの私に、晴臣が口を挟んだ。
「その顔やったの、俺」
「ちょ…何でそんなこと!?」
「千歳が事故に遭ったって連絡受けて病院に来たら、この男が居たから…千歳が自分で車に飛び込んだのかと思って…気づいてたらぶん殴ってた」
「そんなことするわけ…!」
「でも、あり得ない話でもないよな。千歳、全部聞いちゃったんだろう?」
頭の方は大げさに聞こえるけれど、脳の損傷はなく、自然に治癒するのを待つだけ。
肩の骨折も手術の必要はなく、保存療法でいくことに。
運転者が高齢で、あまりスピードを出していなかったのが幸いだったらしい。
6時間くらい意識を失っていたのは、ちょっと重めの脳震とうだったようで、大事を取って2日間入院して様子を見ることになった。
「…ってことで、ほんと、石頭で良かったー」
「うるさい。今話かけんな」
「ちょっ…私の意識が戻る前『冷たい態度とってごめん』って半泣きで謝ってなかった?」
「は?何だそれ?夢でも見てたんじゃねーのか?いいから口開けろ、ほら」
ズイッと差し出されたのは爪楊枝の刺さったりんご…と思しき物体。
「思しき」という表現からも分かるように、パッと見ではりんごとは分からないほど歪な形に切られている。
「晴臣って何でもできるのに、手先だけは異常に不器用だよね」
「うるさい。いいからさっさと食え」
口に入れると、形はともかく、甘酸っぱい味が口内に広がった。
なんだかんだ言いながら、晴臣は目が覚めた瞬間、いや、病院に駆けつけてくれたときから片時も私の側を離れずにいてくれている。
私に対する態度も昔に戻ったようで、すごく居心地がいい。
まだ頭と肩は痛むけれど、事故のゴタゴタが少し落ち着いたところで晴臣に言わなければいけないことがあったことを思い出した。
「あのね、晴臣」
切り出したところで、病室のドアがノックされた。
二人してそちらの方を向き、磨りガラス越しに映るシルエットを確認した途端、病室に緊張が走る。
「手塚です。…入ってもいいかな?」
嘘?
何で遼平くんがここに!?
何しに来たの!!?
ちょうど今、晴臣に全てを知ってしまったことを話そうとしていたところだったのに。
タイミングが悪すぎる。
もしかして、真由先輩から聞いて、私が晴臣に話すのを阻止するために来たとか?
どうしよう!?
どうしたらいいの!!?
一人パニックに陥っている私に気づいていないはずのない晴臣が「どーぞ」と返事をしてしまった。
いつもなら塩を撒いて追い返しかねないのに。
今日に限って、何でー!?
「失礼します」
丁寧を通り越して、他人行儀な挨拶をして入室してきた遼平くんの姿を一目見た私は、絶句した。
左の頬に、車に轢かれた私より重症なんじゃないかと思うほど大きな青あざができていて、本当に知らない人のようだ。
そして、私が何があったのか尋ねるより先に、遼平くんは深く頭を下げた。
「どう謝っても謝りきれないけど…本当にごめん…!」
状況が全く掴めず、オロオロするばかりの私に、晴臣が口を挟んだ。
「その顔やったの、俺」
「ちょ…何でそんなこと!?」
「千歳が事故に遭ったって連絡受けて病院に来たら、この男が居たから…千歳が自分で車に飛び込んだのかと思って…気づいてたらぶん殴ってた」
「そんなことするわけ…!」
「でも、あり得ない話でもないよな。千歳、全部聞いちゃったんだろう?」
1
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
溺愛モードな警察官彼氏はチョコレートより甘い!?
すずなり。
恋愛
一人でチョコレート専門店を切り盛りする主人公『凜華』。ある日、仕事場に向かう途中にある交番に電気がついていて。人が立っていた。
「あれ?いつも誰もいないのに・・・」
そんなことを思いながら交番の前を通過しようとしたとき、腕を掴まれてしまったのだ。
「未成年だろう?こんな朝早くにどこへ?」
「!?ちがっ・・・!成人してますっ・・・!」
幼い顔立ちから未成年だと間違われた凜華は証明書を提示し、難を逃れる。・・・が、今度は仕事でトラブルが発生!?その相談をする相手がおらず、交番に持ち込んでしまう。
そして徐々にプライベートで仲良くなっていくが・・・
「俺の家は家族が複雑だから・・・寄って来る女はみんな俺の家族目当てだったんだ。」
彼にも秘密が、彼女にもナイショにしたいことが・・・。
※お話は全て想像の世界です。
※メンタル薄氷の為、コメントは受け付けることができません。
※ただただすずなり。の世界を楽しんでいただけたら幸いです。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する
早瀬佳奈26才。
友達に頼み込まれて行った飲み会で
腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。
あまりの不愉快さに
二度と会いたくないと思っていたにも関わらず
再び仕事で顔を合わせることになる。
上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中
ふと見せる彼の優しい一面に触れて
佳奈は次第に高原に心を傾け出す。
年上幼馴染の一途な執着愛
青花美来
恋愛
二股をかけられた挙句フラれた夕姫は、ある年の大晦日に兄の親友であり幼馴染の日向と再会した。
一途すぎるほどに一途な日向との、身体の関係から始まる溺愛ラブストーリー。
記憶喪失のフリをしたら夫に溺愛されました
秋月朔夕
恋愛
フィオナは幼い頃から、自分に冷たく当たるエドモンドが苦手だった。
しかしある日、彼と結婚することになってしまう。それから一年。互いの仲は改善することなく、冷えた夫婦生活を送っていた。
そんなある日、フィオナはバルコニーから落ちた。彼女は眼を覚ました時に、「記憶がなくなった」と咄嗟にエドモンドに嘘をつく。そのことがキッカケとなり、彼は今までの態度は照れ隠しだったと白状するが、どんどん彼の不穏さが見えてくるようになり……。
年下幼馴染から逃げられない
南ひかり
恋愛
大手リゾート会社に勤める朝倉千秋は、将来ハワイ永住を夢見て着々とキャリアを積んでいた。
入社4年目。念願のハワイ支部転属が決定した矢先、テレビで自社の倒産を知る。
買収したのは近年記録的な成長を遂げる相模リゾート。
それは何年も音信不通だった年下の幼馴染ーー相模悠が経営する会社だった。
「ハワイには行かせない。ずっとオレの傍にいてもらうから」
悠に告げられたのは、ハワイ行きではなく秘書として働くということ。
必死に抵抗する千秋だったが、悠が持ち出した条件は――!?
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる