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見上げれば、そっぽを向いて晴臣の顔は見えない。
でも代わりに、私の位置からは耳まで真っ赤なのが丸見えだ。
そんなものを見せられようものなら、今の今まで色々限界だった自分を棚に上げて、からかいたくなってしまう。
「何がなしなの?『もうちょっとー』って声?それとも鼻でスリスリ?」
「やめろ。そんな気色悪い声出してない!大体、俺はそんなキャラじゃない!!」
「じゃあ、どんなキャラなのよ?」
「……冷静沈着な大人」
実際は全然違う。
むしろ冷徹非道って感じ。
でも、それが晴臣の目指す理想像なんだろうな。
そして同時に、否が応でも彼の姿を連想させられる。
私が「大人」な彼が好きだったから?
だから、晴臣も彼に近づこうとしたの?
本当の彼は狡くて、弱くて、優しい人だったのに。
晴臣まで彼に囚われる必要なんてない。
「…私は、寝起きの晴臣のほうが好きだな」
本心から自然に出た言葉だった。
でもー
「お前…この間からそういうことばっか言うなよ」
晴臣は酷く複雑な顔をして、私の寝室から出ていった。
え…。
なんか…。
思ってたのと違う。
そんなに深い意味ではなかったけど、『好き』って言ったのに猫がフレーメン反応したときみたいな顔されたし。
でも、まあ。
昨夜はちゃんと眠れたみたいだから良しとするか。
そんなふうに無理矢理自分を納得させてはみたものの。
事態は思ったより深刻だった。
数日経つと晴臣の目の下のクマが、クッキリと復活したのだ。
晴臣は、最初こそ「いいから放っとけって!」と抵抗していた。
ところが、程なくして謹慎処分が解けて光城にこき使われる日々が始まったうえ、定期的に枕を抱えて晴臣の寝室に現れる私に根負けし、当たり前のように私をベッドに招き入れるようになっていった。
私は私で、晴臣が、私が側に居ないと眠れないなんて、笑い事じゃないはずなのに。
晴臣の体の程よい温もりと、時折見せる寝ぼけモードがやたらとツボで、いつの間にか枕を持って晴臣の部屋を訪れるのが楽しみになっていた。
だから、信じて疑わなかった。
この穏やかで幸福な日々が、いつまでも続くのだと。
私のリハビリが終わったことを、晴臣に告げるまでは。
でも代わりに、私の位置からは耳まで真っ赤なのが丸見えだ。
そんなものを見せられようものなら、今の今まで色々限界だった自分を棚に上げて、からかいたくなってしまう。
「何がなしなの?『もうちょっとー』って声?それとも鼻でスリスリ?」
「やめろ。そんな気色悪い声出してない!大体、俺はそんなキャラじゃない!!」
「じゃあ、どんなキャラなのよ?」
「……冷静沈着な大人」
実際は全然違う。
むしろ冷徹非道って感じ。
でも、それが晴臣の目指す理想像なんだろうな。
そして同時に、否が応でも彼の姿を連想させられる。
私が「大人」な彼が好きだったから?
だから、晴臣も彼に近づこうとしたの?
本当の彼は狡くて、弱くて、優しい人だったのに。
晴臣まで彼に囚われる必要なんてない。
「…私は、寝起きの晴臣のほうが好きだな」
本心から自然に出た言葉だった。
でもー
「お前…この間からそういうことばっか言うなよ」
晴臣は酷く複雑な顔をして、私の寝室から出ていった。
え…。
なんか…。
思ってたのと違う。
そんなに深い意味ではなかったけど、『好き』って言ったのに猫がフレーメン反応したときみたいな顔されたし。
でも、まあ。
昨夜はちゃんと眠れたみたいだから良しとするか。
そんなふうに無理矢理自分を納得させてはみたものの。
事態は思ったより深刻だった。
数日経つと晴臣の目の下のクマが、クッキリと復活したのだ。
晴臣は、最初こそ「いいから放っとけって!」と抵抗していた。
ところが、程なくして謹慎処分が解けて光城にこき使われる日々が始まったうえ、定期的に枕を抱えて晴臣の寝室に現れる私に根負けし、当たり前のように私をベッドに招き入れるようになっていった。
私は私で、晴臣が、私が側に居ないと眠れないなんて、笑い事じゃないはずなのに。
晴臣の体の程よい温もりと、時折見せる寝ぼけモードがやたらとツボで、いつの間にか枕を持って晴臣の部屋を訪れるのが楽しみになっていた。
だから、信じて疑わなかった。
この穏やかで幸福な日々が、いつまでも続くのだと。
私のリハビリが終わったことを、晴臣に告げるまでは。
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