【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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会いに行かないんじゃない。
会いに行けないのだ。

一人で晴臣を待つと決めた日から、時間が流れ過ぎた。
光城の言葉を信じられたのは、せいぜい半年経つ頃までだった。
それから更に二年も経って、会いに行けるほどの自信なんて持ち合わせていない。
もし海外まで自分から会いに行って、晴臣の隣に誰かいたら?
悪い想像ばかりが頭を駆け巡り、私は完全に身動きがとれなくなっていた。

でも、こんなこと言えば、副島さんの思う壺だ。

デザート用のスプーンを握りしめたまま黙りこくっていると、副島さんは軽くため息を吐いた。

「ごめん。ちょっと意地悪な質問だったね。食べよう」

デザートに出てきたティラミスは大好物のはずなのに、今日はやけに苦味だけ強くて、後味が悪く感じた。

食事を終えた後は、副島さんの車でマンションまで送ってもらう。
最初は断っていたけれど、ミーティングの度に押し問答するのが面倒で、いつの間にか当たり前になっていた。

副島さんは聡い人だ。
車内では何も言わない。
言えば、私が車に乗らなくなると分かっているから。

でも、少しずつ、確実に、私との距離を縮めてくる。

「寂しくなったらいつでも呼んで」

ほら。
いつもは『お疲れ様。また月曜日に』がお決まりのセリフなのに、今日に限ってそんなことを言う。

「大丈夫です。お疲れさまでした」

精一杯の強がりを言って、誘惑を振り払った。

マンションの自分の部屋の玄関どころかエントランス前でもう足が鉛のようにズシリと足が重くなる。

イヤだ。
帰りたくない。

『寂しくなったら』?
そんなの、あの日からずっとだ。

誰かの温もりが欲しい。
一人で眠りたくない。
でも、その『誰か』は副島さんじゃない。
他の誰でもない。
たった一人だけ。

忙しい環境今の生活を変えるのが怖くて。
変えてしまったら、もう立っていることさえできなくなりそうで。
副島さん他人の好意を受け流すスキルばかりが上達していく。
こんな自分、私だって好きじゃない。

自動ドアのガラスに映る自分に問いかける。

ねえ千歳。
一体いつまでこんな生活を続けるの?

ガラスの中の私は何も答えないまま、ドアが開いてその姿は真っ二つになった。

憂鬱な気分のままエントランスに足を踏み入れようとして、足が止まる。
スーツ姿の男性が、どこかの部屋を呼び出している最中らしい。

時間も時間なので、下を向いて、目を合わせないようにして待つ。

訪問先が留守だったのか、男性は中に入らずに諦めてやがてこちらへ歩いてきた。

俯いたまま、相手が通り過ぎるのを待っていると、その人はピタリと足を止め、懐かしい声で私を呼んだ。

「…ちーちゃん?」
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