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それぞれの思惑 6
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「暴走…と、いうことは、前会長と私の契約自体なかったことになるんでしょうか?」
さっき廊下で真田翁のことを口にした時と同様、真田会長の視線がスッと冷たくなった。
「父が勝手にしたこととは言え、契約は契約だからね。君が葵との結婚まで持ち込むことに成功すれば、約束どおり真田グループの制服関連の業務は君の会社に委託することになる」
「…そうですか」
「安心した?」
向けられている冷たい視線の中に、薄く批判の色が滲んでいる。
ーだからというわけではないけれどー。
「いえ。今回のお話、お断りさせていただこうと思っていたところでした」
あきらめかけていた、今日のもう一つの目的を果たしにかかる。
「断る…?こんなところまで来ておいて、葵が気に入らないとでも言うのかい?」
「その逆です」
「葵を本気で好きになった?」
「…はい」
「でも、別に父との契約を無しにしなくてもいいのでは?」
「真田グループの会長程の方なら、私の生い立ちについてもとっくに調査済みでしょう?」
「…そうだね。失礼とは思ったけど、調べさせてもらったよ」
「その生い立ちのせいと言っては何ですが…初めてなんです。人を好きになったの」
真田会長は目を細めながら俺が次の言葉を紡ぐのを待った。
「出会いの動機の不純さは消せません。でも、これ以上契約とか取引とか、そういうものを持ち込みたくないんです」
「…そんな甘いことを言う人間は、要らない」
言い捨てた真田会長の顔には、一変してゾッとするほど表情がなかった。
「…それが真田の当主になる人間ならね。でも、大事な娘の結婚相手ならアリかな。まあ、全ては葵の気持ち次第だけど」
コロコロと変わる表情に振り回されながらも、『葵の気持ち次第』と言われ、連鎖的に真田律の顔を思い浮かべてしまう。
「…あの、お聞きしても良いですか?」
「どうぞ?」
「前会長は、何故秘密裏に葵さんの縁談を進めようとしたんでしょうか?」
「それは、昔…あれはまだ律が中学生の頃だったかな。父に約束させたんだよ。『自分が家の決めた女と結婚するから、葵は葵の好きな男と結婚させろ』って」
想像もしていなかった背景に、視界がグニャリと歪む。
中学生って…俺何やってたっけ?
生い立ちのせいで鬱々とはしていたけど、学校行って、テキトーに勉強して、テキトーに部活して、友達と遊んでー。
そんな時分に葵のために、犠牲になることを選ぶなんて。
真田律が、どれ程深く、強く、長い間、葵を想って来たのかを思い知らされ初めて、昨夜葵を抱いたことを後悔した。
「会長は…律さんがどんな思いで前会長と約束をしたのかご存知なんですよね?なのに、こんな形で俺が葵さんに近づいたことを許してくださるんですか?」
「さっきも言ったが葵次第だよ。出会いのきっかけが不純でも、葵が好きになれば問題ないと思っている。相手が、億単位の契約よりも、葵の心の方が価値があると思ってくれるような男なら尚更ね。それに、ちょっと遅くなったくらいですぐ職場に迎えに行くような男が側にいるんだから、葵に自然な出会いは無理だと思ってたし」
真田会長は、テーブルの上の緑茶を一口すすると、続けて真田律をバッサリと切って捨てた。
「そもそも父とあんな約束をして、他の男に大事な葵を委ねようとしたのは律だしね。それに、律は葵の気持ちにとっくに気づいていて、父との約束が成立し得ないと分かっているはずなのに、キミみたいに動こうとしないだろう?その点、葵の父親代わりとしては、律が葵に相応しいとは思えない」
「それなら、真田会長はどうして…あんな、葵さんをこの家に…律さんに繋ぎ止めるような条件を?」
「…単に私が寂しいのと、後継者としては優秀でも、男としてはバカで不器用な息子への親心ってところかな」
「…真田会長は、律さんと葵さんが結ばれるのを望んでるんですか?」
「さあ…どうかな。私は律の父親でもあるけれど、真田グループの会長でもある。会長としての立場から言わせてもらうと、今回の律の縁談は社の今後に大きく影響するからね。律もそれは分かっているはずだよ。…分かりすぎるほどにね」
少なくとも手放しで応援している立場ではないということか。
実際、この人が完全に真田律の味方についていたら、とっくに二人はくっついていただろう。
それなら俺にもまだチャンスはある、と、小さく安堵のため息をついた途端ー
「言っとくけど、キミも『まぁ、アリかな』くらいで、葵に相応しいと思ってるわけじゃないから。このままの、創業者の血族ってだけのお飾り社長のままじゃ話にならないよ」
確実に急所を狙って、グサリと刺してくる。
それも笑顔で。
真田グループの会長の底知れぬ恐ろしさを肌で感じた。
「…あ。天澤くん、そろそろ戻ったほうがいいかもね。律は相当我慢強い方だけど、ストレス発散するために時々葵にこっそり悪戯する癖があるからね」
「えっ!?」
上品なマスクの中年男性が口にすると、『イタズラ』という言葉が、こんなにも卑猥に響くということを初めて知った。
「イ、イタズラって…」
「ただの推測だけど…何度かね…明け方に律が葵の部屋から出て来るの見たことあるんだよね。葵はほら、何でも顔に出るタイプだから一線越えてるとかは絶対ないと思うけど、寝てる葵にキスくらいしてるんじゃないかなぁ」
「キ…ッ!??」
同時に初対面で葵と同じ香りがすると指摘した時の、真田律の過剰反応がフラッシュバックした。
さっきの罪悪感、撤回!!
寝込み襲うとか反則だろう。
俺、少なくとも合意の上だったし。
「そういうことは早く言ってくださいよ!大体、さっき大丈夫っておっしゃったじゃないですか!!」
「まあまあ。葵、あれでなかなか頑固なところがあるから、この家から出るのは間違いないんだし。今日は少しくらい大目に見てやってくれよ」
何が少しくらい大目に、だ!!
「失礼します!!」
慌てて応接室を飛び出すと、背後から今日初めて真田会長が声を出して笑うのが聞こえた。
無意識に、足音を立てず階段を一段抜かしで登り切り、ノックもしないままドアをこじ開けようとしたのを、ギリギリのところで思いとどまった。
息を殺して部屋の前で中の様子を伺うが、何も聞こえてこない。
真田会長から聞いた『イタズラ』という言葉が頭をチラつき、速攻扉を叩いた。
今回もすぐに返事が返ってきて、安心したのは部屋に足を踏み入れるまでだった。
さっきとは違う、甘さと切なさの入り混じった空気に加った、季節とは無関係の湿度が俺の苛立ちを煽った。
「…りっちゃん、ちょっと外してもらえます?」
「え?」
「業務上のことです。今まだ一応就業時間中ですし、守秘義務の関係があるんで。真田さんと二人にしてもらえますか?」
嘘はつかないポリシー、どこに行ったかって?
ご都合主義で申し訳ないけど、男は対象外だ。
こうでも言わなければ、この家で葵と二人になんてなれっこない。
「何かあったんですか?」
不安げに駆け寄ってきた葵を間近に見て、自分の直感が正しかったことを確信する。
…それ、こっちのセリフなんだけどな。
真田律に背を向けるようにして立っていた葵の大きな瞳が、いつもより潤んでいる。
理由は分からない。
でも、葵が泣いてた
何やったんだ?
何言ったんだ?
真田律。
やはり二人の接触を完全に断たなければ、葵がいつまでも泣くことになってしまう。
『葵のこと本当に大事なら、泣かせるなよ』と念を込めて睨んだ後、
「うん。ちょっと緊急事態」
と、握った拳に爪を食い込ませながら、深刻な事態を装って頷く。
その結果、真田律は不快感を隠さなかったものの、葵の部屋から出て行った。
扉が完全に閉じられるまでのわずかな間がじれったい。
隙間がなくなり、密室が形成されると、すぐさま葵を正面から腕の中に閉じ込めた。
「ちょ、唯人?仕事の話じゃ!?」
「泣いてた?」
「…!」
「まつ毛、濡れてる」
ギクッという効果音がしそうなくらい、体を強張らせた葵をなだめるように、下まつ毛を濡らす涙を拭ってやった。
「葵は本当にこれでいいの?」
「え?」
「りっちゃんに援助してもらったタワマンに住んで、毎週末りっちゃんに会いに帰る生活で、本当にいいの?」
言葉にしながら、チリチリと胸が焼けるような痛みが走る。
これからも葵が真田律との関係を持ち続けることへの嫉妬と、焦り。
「それ、は…」
「俺はめちゃくちゃイヤなんだけど。いつまでもりっちゃんに縛られて、泣いてる葵見るの」
「私だってイヤだけど…」
「じゃあもっと俺を利用すればいい。昨日俺に抱かれたときみたいに」
できることなら、このまま何も言わずに抱きかかえて家に連れ帰りたい。
だけど、それじゃ真田会長も真田律も絶対に認めないだろう。
下手したら俺、誘拐犯にされてしまう。
でも、真田会長は全て『葵次第』と言った。
葵が、葵の意思で俺のところに来ると言ってくれればー
長い沈黙の末、葵は決意したような表情で顔を上げた。
これはひょっとして、ひょっとする??
期待を込めて、葵の言葉を待つ。
「私、実家に帰ることにします!!」
「は?」
全く想定外の答えに、ひどく間抜けな声しか出ない。
「真田本家からも会社からも実は意外と近いんです。どうせ父は仕事漬けでほとんどいないから干渉されることもないし、一応私の部屋も残してあるし」
「ちょ、ちょっと待って。葵?さっきの俺の渾身で捨身の口説き文句はどこ行った?」
「あっちの空ですかね?」
吹っ切れたように笑う葵に、つられて笑うことしかできなかった。
さっき廊下で真田翁のことを口にした時と同様、真田会長の視線がスッと冷たくなった。
「父が勝手にしたこととは言え、契約は契約だからね。君が葵との結婚まで持ち込むことに成功すれば、約束どおり真田グループの制服関連の業務は君の会社に委託することになる」
「…そうですか」
「安心した?」
向けられている冷たい視線の中に、薄く批判の色が滲んでいる。
ーだからというわけではないけれどー。
「いえ。今回のお話、お断りさせていただこうと思っていたところでした」
あきらめかけていた、今日のもう一つの目的を果たしにかかる。
「断る…?こんなところまで来ておいて、葵が気に入らないとでも言うのかい?」
「その逆です」
「葵を本気で好きになった?」
「…はい」
「でも、別に父との契約を無しにしなくてもいいのでは?」
「真田グループの会長程の方なら、私の生い立ちについてもとっくに調査済みでしょう?」
「…そうだね。失礼とは思ったけど、調べさせてもらったよ」
「その生い立ちのせいと言っては何ですが…初めてなんです。人を好きになったの」
真田会長は目を細めながら俺が次の言葉を紡ぐのを待った。
「出会いの動機の不純さは消せません。でも、これ以上契約とか取引とか、そういうものを持ち込みたくないんです」
「…そんな甘いことを言う人間は、要らない」
言い捨てた真田会長の顔には、一変してゾッとするほど表情がなかった。
「…それが真田の当主になる人間ならね。でも、大事な娘の結婚相手ならアリかな。まあ、全ては葵の気持ち次第だけど」
コロコロと変わる表情に振り回されながらも、『葵の気持ち次第』と言われ、連鎖的に真田律の顔を思い浮かべてしまう。
「…あの、お聞きしても良いですか?」
「どうぞ?」
「前会長は、何故秘密裏に葵さんの縁談を進めようとしたんでしょうか?」
「それは、昔…あれはまだ律が中学生の頃だったかな。父に約束させたんだよ。『自分が家の決めた女と結婚するから、葵は葵の好きな男と結婚させろ』って」
想像もしていなかった背景に、視界がグニャリと歪む。
中学生って…俺何やってたっけ?
生い立ちのせいで鬱々とはしていたけど、学校行って、テキトーに勉強して、テキトーに部活して、友達と遊んでー。
そんな時分に葵のために、犠牲になることを選ぶなんて。
真田律が、どれ程深く、強く、長い間、葵を想って来たのかを思い知らされ初めて、昨夜葵を抱いたことを後悔した。
「会長は…律さんがどんな思いで前会長と約束をしたのかご存知なんですよね?なのに、こんな形で俺が葵さんに近づいたことを許してくださるんですか?」
「さっきも言ったが葵次第だよ。出会いのきっかけが不純でも、葵が好きになれば問題ないと思っている。相手が、億単位の契約よりも、葵の心の方が価値があると思ってくれるような男なら尚更ね。それに、ちょっと遅くなったくらいですぐ職場に迎えに行くような男が側にいるんだから、葵に自然な出会いは無理だと思ってたし」
真田会長は、テーブルの上の緑茶を一口すすると、続けて真田律をバッサリと切って捨てた。
「そもそも父とあんな約束をして、他の男に大事な葵を委ねようとしたのは律だしね。それに、律は葵の気持ちにとっくに気づいていて、父との約束が成立し得ないと分かっているはずなのに、キミみたいに動こうとしないだろう?その点、葵の父親代わりとしては、律が葵に相応しいとは思えない」
「それなら、真田会長はどうして…あんな、葵さんをこの家に…律さんに繋ぎ止めるような条件を?」
「…単に私が寂しいのと、後継者としては優秀でも、男としてはバカで不器用な息子への親心ってところかな」
「…真田会長は、律さんと葵さんが結ばれるのを望んでるんですか?」
「さあ…どうかな。私は律の父親でもあるけれど、真田グループの会長でもある。会長としての立場から言わせてもらうと、今回の律の縁談は社の今後に大きく影響するからね。律もそれは分かっているはずだよ。…分かりすぎるほどにね」
少なくとも手放しで応援している立場ではないということか。
実際、この人が完全に真田律の味方についていたら、とっくに二人はくっついていただろう。
それなら俺にもまだチャンスはある、と、小さく安堵のため息をついた途端ー
「言っとくけど、キミも『まぁ、アリかな』くらいで、葵に相応しいと思ってるわけじゃないから。このままの、創業者の血族ってだけのお飾り社長のままじゃ話にならないよ」
確実に急所を狙って、グサリと刺してくる。
それも笑顔で。
真田グループの会長の底知れぬ恐ろしさを肌で感じた。
「…あ。天澤くん、そろそろ戻ったほうがいいかもね。律は相当我慢強い方だけど、ストレス発散するために時々葵にこっそり悪戯する癖があるからね」
「えっ!?」
上品なマスクの中年男性が口にすると、『イタズラ』という言葉が、こんなにも卑猥に響くということを初めて知った。
「イ、イタズラって…」
「ただの推測だけど…何度かね…明け方に律が葵の部屋から出て来るの見たことあるんだよね。葵はほら、何でも顔に出るタイプだから一線越えてるとかは絶対ないと思うけど、寝てる葵にキスくらいしてるんじゃないかなぁ」
「キ…ッ!??」
同時に初対面で葵と同じ香りがすると指摘した時の、真田律の過剰反応がフラッシュバックした。
さっきの罪悪感、撤回!!
寝込み襲うとか反則だろう。
俺、少なくとも合意の上だったし。
「そういうことは早く言ってくださいよ!大体、さっき大丈夫っておっしゃったじゃないですか!!」
「まあまあ。葵、あれでなかなか頑固なところがあるから、この家から出るのは間違いないんだし。今日は少しくらい大目に見てやってくれよ」
何が少しくらい大目に、だ!!
「失礼します!!」
慌てて応接室を飛び出すと、背後から今日初めて真田会長が声を出して笑うのが聞こえた。
無意識に、足音を立てず階段を一段抜かしで登り切り、ノックもしないままドアをこじ開けようとしたのを、ギリギリのところで思いとどまった。
息を殺して部屋の前で中の様子を伺うが、何も聞こえてこない。
真田会長から聞いた『イタズラ』という言葉が頭をチラつき、速攻扉を叩いた。
今回もすぐに返事が返ってきて、安心したのは部屋に足を踏み入れるまでだった。
さっきとは違う、甘さと切なさの入り混じった空気に加った、季節とは無関係の湿度が俺の苛立ちを煽った。
「…りっちゃん、ちょっと外してもらえます?」
「え?」
「業務上のことです。今まだ一応就業時間中ですし、守秘義務の関係があるんで。真田さんと二人にしてもらえますか?」
嘘はつかないポリシー、どこに行ったかって?
ご都合主義で申し訳ないけど、男は対象外だ。
こうでも言わなければ、この家で葵と二人になんてなれっこない。
「何かあったんですか?」
不安げに駆け寄ってきた葵を間近に見て、自分の直感が正しかったことを確信する。
…それ、こっちのセリフなんだけどな。
真田律に背を向けるようにして立っていた葵の大きな瞳が、いつもより潤んでいる。
理由は分からない。
でも、葵が泣いてた
何やったんだ?
何言ったんだ?
真田律。
やはり二人の接触を完全に断たなければ、葵がいつまでも泣くことになってしまう。
『葵のこと本当に大事なら、泣かせるなよ』と念を込めて睨んだ後、
「うん。ちょっと緊急事態」
と、握った拳に爪を食い込ませながら、深刻な事態を装って頷く。
その結果、真田律は不快感を隠さなかったものの、葵の部屋から出て行った。
扉が完全に閉じられるまでのわずかな間がじれったい。
隙間がなくなり、密室が形成されると、すぐさま葵を正面から腕の中に閉じ込めた。
「ちょ、唯人?仕事の話じゃ!?」
「泣いてた?」
「…!」
「まつ毛、濡れてる」
ギクッという効果音がしそうなくらい、体を強張らせた葵をなだめるように、下まつ毛を濡らす涙を拭ってやった。
「葵は本当にこれでいいの?」
「え?」
「りっちゃんに援助してもらったタワマンに住んで、毎週末りっちゃんに会いに帰る生活で、本当にいいの?」
言葉にしながら、チリチリと胸が焼けるような痛みが走る。
これからも葵が真田律との関係を持ち続けることへの嫉妬と、焦り。
「それ、は…」
「俺はめちゃくちゃイヤなんだけど。いつまでもりっちゃんに縛られて、泣いてる葵見るの」
「私だってイヤだけど…」
「じゃあもっと俺を利用すればいい。昨日俺に抱かれたときみたいに」
できることなら、このまま何も言わずに抱きかかえて家に連れ帰りたい。
だけど、それじゃ真田会長も真田律も絶対に認めないだろう。
下手したら俺、誘拐犯にされてしまう。
でも、真田会長は全て『葵次第』と言った。
葵が、葵の意思で俺のところに来ると言ってくれればー
長い沈黙の末、葵は決意したような表情で顔を上げた。
これはひょっとして、ひょっとする??
期待を込めて、葵の言葉を待つ。
「私、実家に帰ることにします!!」
「は?」
全く想定外の答えに、ひどく間抜けな声しか出ない。
「真田本家からも会社からも実は意外と近いんです。どうせ父は仕事漬けでほとんどいないから干渉されることもないし、一応私の部屋も残してあるし」
「ちょ、ちょっと待って。葵?さっきの俺の渾身で捨身の口説き文句はどこ行った?」
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