27 / 50
27.閑話:彼女との出会い (リック視点)
しおりを挟む
世話の意味がわかってから、彼女との関係が変わっていった。
冷たくあしらう暇などなく、令嬢らしからぬ行動をする彼女を必死で止める毎日。
突然フラッと居なくなり、探してみるといつもとんでもないところから現れる。
その度に捕まえて王子の元へ連れて帰るのが日常になっていった。
「こんなところで何をしているのですか!王妃様のお茶会に行くのではなかったのですか?」
「そうだったわね、ごめんなさい。花に見惚れていたらはぐれてしまったの。だけどリック見て、この花すごく綺麗でしょう?」
彼女は花壇に咲く白い花を指さすと、屈託のない笑みを浮かべる。
しかし僕は花と同じ白いワンピース姿の彼女に魅入ってしまった。
「どうしたの?」
彼女の声にハッと我に返ると、僕は慌てて彼女の手を握る。
「花はもう十分見たでしょう。皆が心配しております、戻りましょう」
彼女ははぁいと返事をすると、大人しく僕の後ろをついてきたのだった。
彼女を知れば知るほど、僕の知っている令嬢という者から逸脱している。
最初の頃感じたあざとさは狙っているのではなく、何も考えていないのだと気が付いた。
彼女は自分を飾らずいつもありのまま。
楽しければ笑い、悔しければ泣き、負けん気が強く、王子と真正面からぶつかる。
感情が豊かで公爵家の令嬢とは到底思えなかった。
嫌なことは我慢せず、すぐに逃げ出そうとする。
その姿は見ていて頭が痛い。
手芸や音楽、ダンスなど嫌な稽古事から逃げ出しては、騎士やメイドがあたふたと探し始める。
変に頭が良いためなかなか捕まらず、余計にたちがわるかった。
何度か叱った事があるけれど、彼女曰く子供だから好きに生きたいのだとか。
大人になれば嫌なことを嫌と言えなくなるからだと。
大人びているのか幼稚なのか、本当に彼女はつかめない。
だがそんな理論が城で許されるはずもない。
僕も彼女を探すのをよく手伝った。
隠れる場所は様々で、立入禁止と書かれた場所だったり、来客用の部屋だったり、木の上だったりと。
普通の令嬢では考えられない場所にいるんだ。
「なっ!?こんなところに!?ここは使用人の屋敷ですよ」
「わぁお、リック良くここがわかったわね」
窓越しに彼女は目を丸くすると、笑いながらピョンと窓から飛び降りる。
「エリザベス様、扉から出て下さい、危ないですよ!」
「まぁ~いいじゃない。一階なんだし怪我なんてしないわよ」
エリザベスはクルリと回って見せると、ニッコリ微笑んだ。
その姿は令嬢に見えるが……いや普通の令嬢はスカートをたくし上げて窓から飛び降りはしない。
僕は慌てて彼女の腕を掴むと、お城へと連行する。
大人しくついてくる彼女を手を握って先導していると、いつの間にか隣に並んでいた。
「ねぇリック、よくあそこにいるってわかったわね。ところで二人で居る時はリサでいいわよ。クリスだってそう呼んでいるんだから」
「いえ、エリザベス様と呼ばせて頂きます」
まったく何を言い出すのか……騎士である僕が王妃になるだろう彼女を愛称で呼べるはずがない。
呆れた表情を浮かべると、彼女は不満げにプクっと頬を膨らませた。
「いいじゃない。最初の頃よりは仲良くなったんだし、ねっ、呼んでみて、リック」
彼女は前に回り込むと、立ちふさがるように僕の瞳を覗き込んだ。
その姿に立ち止まると、思わず言葉を詰まらせる。
澄んだ瞳に僕の姿が映し出され、その瞳によくわからない感情が込み上げた。
「ほら、はやく」
「……ッッ。わかりました。ふぅ……リサ様、今はダンスのお時間ですよね?なのにどうしてあんな居たのですか?」
「へぇっ!?、あー、えー、うん、そうなのだけれど……えへへ」
「ダンスがお嫌いなのは承知しておりますが、皆探し回ってますよ。嫌なことから逃げるのはそろそろおやめください。もう子供ではないでしょう。ダンスは貴族嗜み、恥をかくのはリサ様ですよ」
そうもう僕たちは子供ではない。
徐々にエリザベス様が女性らしく体が変わってきている。
そう自覚すると、胸がなぜかモヤモヤしてしまう。
「えー、はぁ……わかったわよ……。せっかくリサと言ってくれたのに、説教なんて……ブツブツ」
肩を落とす彼女の姿に僕は小さく笑うと、ギュッと手を握り、繋いだまま歩き始めた。
言い聞かせただけで逃げ癖が治るはずもなく、頻度は少なくなったが、それでも逃げ出すリサを見つけては連れ戻していた。
最初は探すのに四苦八苦していたが、慣れればパターンがわかってくる。
大人には気が付かないだろう、彼女独特の逃げ方。
それを見つけ出してからは、簡単に彼女を捕まえることが出来るようになった。
冷たくあしらう暇などなく、令嬢らしからぬ行動をする彼女を必死で止める毎日。
突然フラッと居なくなり、探してみるといつもとんでもないところから現れる。
その度に捕まえて王子の元へ連れて帰るのが日常になっていった。
「こんなところで何をしているのですか!王妃様のお茶会に行くのではなかったのですか?」
「そうだったわね、ごめんなさい。花に見惚れていたらはぐれてしまったの。だけどリック見て、この花すごく綺麗でしょう?」
彼女は花壇に咲く白い花を指さすと、屈託のない笑みを浮かべる。
しかし僕は花と同じ白いワンピース姿の彼女に魅入ってしまった。
「どうしたの?」
彼女の声にハッと我に返ると、僕は慌てて彼女の手を握る。
「花はもう十分見たでしょう。皆が心配しております、戻りましょう」
彼女ははぁいと返事をすると、大人しく僕の後ろをついてきたのだった。
彼女を知れば知るほど、僕の知っている令嬢という者から逸脱している。
最初の頃感じたあざとさは狙っているのではなく、何も考えていないのだと気が付いた。
彼女は自分を飾らずいつもありのまま。
楽しければ笑い、悔しければ泣き、負けん気が強く、王子と真正面からぶつかる。
感情が豊かで公爵家の令嬢とは到底思えなかった。
嫌なことは我慢せず、すぐに逃げ出そうとする。
その姿は見ていて頭が痛い。
手芸や音楽、ダンスなど嫌な稽古事から逃げ出しては、騎士やメイドがあたふたと探し始める。
変に頭が良いためなかなか捕まらず、余計にたちがわるかった。
何度か叱った事があるけれど、彼女曰く子供だから好きに生きたいのだとか。
大人になれば嫌なことを嫌と言えなくなるからだと。
大人びているのか幼稚なのか、本当に彼女はつかめない。
だがそんな理論が城で許されるはずもない。
僕も彼女を探すのをよく手伝った。
隠れる場所は様々で、立入禁止と書かれた場所だったり、来客用の部屋だったり、木の上だったりと。
普通の令嬢では考えられない場所にいるんだ。
「なっ!?こんなところに!?ここは使用人の屋敷ですよ」
「わぁお、リック良くここがわかったわね」
窓越しに彼女は目を丸くすると、笑いながらピョンと窓から飛び降りる。
「エリザベス様、扉から出て下さい、危ないですよ!」
「まぁ~いいじゃない。一階なんだし怪我なんてしないわよ」
エリザベスはクルリと回って見せると、ニッコリ微笑んだ。
その姿は令嬢に見えるが……いや普通の令嬢はスカートをたくし上げて窓から飛び降りはしない。
僕は慌てて彼女の腕を掴むと、お城へと連行する。
大人しくついてくる彼女を手を握って先導していると、いつの間にか隣に並んでいた。
「ねぇリック、よくあそこにいるってわかったわね。ところで二人で居る時はリサでいいわよ。クリスだってそう呼んでいるんだから」
「いえ、エリザベス様と呼ばせて頂きます」
まったく何を言い出すのか……騎士である僕が王妃になるだろう彼女を愛称で呼べるはずがない。
呆れた表情を浮かべると、彼女は不満げにプクっと頬を膨らませた。
「いいじゃない。最初の頃よりは仲良くなったんだし、ねっ、呼んでみて、リック」
彼女は前に回り込むと、立ちふさがるように僕の瞳を覗き込んだ。
その姿に立ち止まると、思わず言葉を詰まらせる。
澄んだ瞳に僕の姿が映し出され、その瞳によくわからない感情が込み上げた。
「ほら、はやく」
「……ッッ。わかりました。ふぅ……リサ様、今はダンスのお時間ですよね?なのにどうしてあんな居たのですか?」
「へぇっ!?、あー、えー、うん、そうなのだけれど……えへへ」
「ダンスがお嫌いなのは承知しておりますが、皆探し回ってますよ。嫌なことから逃げるのはそろそろおやめください。もう子供ではないでしょう。ダンスは貴族嗜み、恥をかくのはリサ様ですよ」
そうもう僕たちは子供ではない。
徐々にエリザベス様が女性らしく体が変わってきている。
そう自覚すると、胸がなぜかモヤモヤしてしまう。
「えー、はぁ……わかったわよ……。せっかくリサと言ってくれたのに、説教なんて……ブツブツ」
肩を落とす彼女の姿に僕は小さく笑うと、ギュッと手を握り、繋いだまま歩き始めた。
言い聞かせただけで逃げ癖が治るはずもなく、頻度は少なくなったが、それでも逃げ出すリサを見つけては連れ戻していた。
最初は探すのに四苦八苦していたが、慣れればパターンがわかってくる。
大人には気が付かないだろう、彼女独特の逃げ方。
それを見つけ出してからは、簡単に彼女を捕まえることが出来るようになった。
1
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる