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26.閑話:彼女との出会い (リック視点)
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僕は騎士の家に生まれた。
名はリチャード、父に連れられ物心ついてすぐに城へ赴き、クリストファー王子と対面した。
そして将来僕は彼の騎士になるのだと説明されたんだ。
父と王は昔馴染みで、王直属の騎士隊長。
父を尊敬し背中を見て育った僕は、将来クリストファーを守るのだと、騎士の道へと進むことになった―――――。
剣の訓練はもちろん、王子との信頼関係を築くためにと父と一緒に頻繁に城を訪れる。
彼の傍に立っていると、文武両道、学問にも長け、品行方正とは言えないが……優秀な王子。
そんな彼の周りには人が集まり、カリスマ性がある。
常に高みを目指す姿に共感できた。
会話をし彼の人間性を見ていくと、主になるに相応しい人だと改めて実感したのだった。
そんなある日僕は父に呼び出され、公爵家の令嬢の世話役を頼まれた。
何でも王子の婚約者候補になる令嬢らしい。
聞いた時は、どうして僕が令嬢の世話なんてと不満でいっぱいだった。
令嬢はうるさいし、すぐに泣きだすし、正直相手にするのは苦手だ。
紹介されたのは公爵家の令嬢、エリザベス。
凛とした立ち振る舞いで如何にもご令嬢という感じだった。
はぁ……面倒だ、婚約候補だろうがなんだろうが、僕の主はクリストファー王子。
こんな令嬢の世話をしている暇があれば、外で剣の訓練をしていたほうがよほど将来のためになるのに。
「ごきげんよう、クリストファー王子。そちらは騎士のリチャード様ですわね。私公爵家のエリザベスと申しますわ」
甲高い声に、不服さを隠さず令嬢へ視線を向けると、伝わっていないのかニコニコと笑顔を浮かべる。
その笑みを冷めた瞳で一瞥し、差し出された手を無視すると、彼女は不満げに唇を噛んだ。
泣くのだろうかと眉を寄せながら見つめていると、彼女はコロッと表情を変え僕を真っすぐに見つめ返す。
「あら、言葉がわからないの?剣ばかりやりすぎて、脳が筋肉になってしまっているのかしら」
予想だにしていなかった言葉に一瞬目が点になった。
カッと怒りが込み上げると、彼女を睨みつける。
何だこの令嬢は、僕に喧嘩をうっているのか?
彼女は勝ち誇った笑みを浮かべ、ほら、言い返してみなさいよと挑発的な態度を見せた。
だめだ、落ちつけ。
ここで言い返せば彼女の思うつぼ。
こういうのは無視が一番いい。
僕はグッと怒りを堪えると、彼女から視線を逸らせ口を閉ざした。
第一印象はお互い最悪だっただろう。
気が強くて、生意気な令嬢そんな印象だった。
もちろん仲がいいとは到底言えない。
だが父に世話をしろと言われた以上このままではいけないとわかっていた。
これからこの令嬢の世話をしなければいけないと思うと憂鬱で仕方がない。
だが王子と過ごすには、彼女もセットとしてついてきてしまう。
クリスはそんな僕たちの関係に気が付いていないのか、お構いなしだった。
王子と彼女の話を聞く分には、彼女も王子と同じく知識が豊富だと知った。
そこはまぁ……評価できるが、あざとらしい態度や仕草がどうしても気になってしまう。
婚約者候補なのだからそれが悪いという訳ではないが、楽しそうに話す二人を見て嫉妬心のような気持が芽生えた。
王子の一番傍にいたのは自分だったのにと、今思えば幼稚染みた感情だった。
彼女との関係はぎこちないまま暫くしたある日、王子はエリザベスを挑発し庭へ出ると、突然木登りを始めた。
王子の奇行は長い付き合いで知っている。
得意げな表情で木の上から見下ろすクリスの姿に、エリザベスは悔し気に唇を噛むと、突然スカートを持ち上げた。
「ちょっ、エリザベス様、何をなさろうとしているのですか?」
「なにって見てわからない?登るのよ。負けっぱなしはイヤなの!」
彼女は強く地面を蹴ると、王子を睨みつけながら太い枝に足をかけしがみつく。
「いけません、ってあなた令嬢でしょう!はしたないですよ」
「そんなの関係ないわ。あんなどや顔見せられて、黙っている方が耐えられない。絶対に見返してやるのよ」
エリザベスは木の枝に座る王子を見上げると、ガシガシと登っていった。
そこでようやくこの令嬢が普通でないと気が付いた。
こんな令嬢を見たことがない。
父の言っていた世話をいうこと言葉は、話し相手になり信頼関係を築くことだと思っていたが、本当に世話をするのだと理解したんだ。
名はリチャード、父に連れられ物心ついてすぐに城へ赴き、クリストファー王子と対面した。
そして将来僕は彼の騎士になるのだと説明されたんだ。
父と王は昔馴染みで、王直属の騎士隊長。
父を尊敬し背中を見て育った僕は、将来クリストファーを守るのだと、騎士の道へと進むことになった―――――。
剣の訓練はもちろん、王子との信頼関係を築くためにと父と一緒に頻繁に城を訪れる。
彼の傍に立っていると、文武両道、学問にも長け、品行方正とは言えないが……優秀な王子。
そんな彼の周りには人が集まり、カリスマ性がある。
常に高みを目指す姿に共感できた。
会話をし彼の人間性を見ていくと、主になるに相応しい人だと改めて実感したのだった。
そんなある日僕は父に呼び出され、公爵家の令嬢の世話役を頼まれた。
何でも王子の婚約者候補になる令嬢らしい。
聞いた時は、どうして僕が令嬢の世話なんてと不満でいっぱいだった。
令嬢はうるさいし、すぐに泣きだすし、正直相手にするのは苦手だ。
紹介されたのは公爵家の令嬢、エリザベス。
凛とした立ち振る舞いで如何にもご令嬢という感じだった。
はぁ……面倒だ、婚約候補だろうがなんだろうが、僕の主はクリストファー王子。
こんな令嬢の世話をしている暇があれば、外で剣の訓練をしていたほうがよほど将来のためになるのに。
「ごきげんよう、クリストファー王子。そちらは騎士のリチャード様ですわね。私公爵家のエリザベスと申しますわ」
甲高い声に、不服さを隠さず令嬢へ視線を向けると、伝わっていないのかニコニコと笑顔を浮かべる。
その笑みを冷めた瞳で一瞥し、差し出された手を無視すると、彼女は不満げに唇を噛んだ。
泣くのだろうかと眉を寄せながら見つめていると、彼女はコロッと表情を変え僕を真っすぐに見つめ返す。
「あら、言葉がわからないの?剣ばかりやりすぎて、脳が筋肉になってしまっているのかしら」
予想だにしていなかった言葉に一瞬目が点になった。
カッと怒りが込み上げると、彼女を睨みつける。
何だこの令嬢は、僕に喧嘩をうっているのか?
彼女は勝ち誇った笑みを浮かべ、ほら、言い返してみなさいよと挑発的な態度を見せた。
だめだ、落ちつけ。
ここで言い返せば彼女の思うつぼ。
こういうのは無視が一番いい。
僕はグッと怒りを堪えると、彼女から視線を逸らせ口を閉ざした。
第一印象はお互い最悪だっただろう。
気が強くて、生意気な令嬢そんな印象だった。
もちろん仲がいいとは到底言えない。
だが父に世話をしろと言われた以上このままではいけないとわかっていた。
これからこの令嬢の世話をしなければいけないと思うと憂鬱で仕方がない。
だが王子と過ごすには、彼女もセットとしてついてきてしまう。
クリスはそんな僕たちの関係に気が付いていないのか、お構いなしだった。
王子と彼女の話を聞く分には、彼女も王子と同じく知識が豊富だと知った。
そこはまぁ……評価できるが、あざとらしい態度や仕草がどうしても気になってしまう。
婚約者候補なのだからそれが悪いという訳ではないが、楽しそうに話す二人を見て嫉妬心のような気持が芽生えた。
王子の一番傍にいたのは自分だったのにと、今思えば幼稚染みた感情だった。
彼女との関係はぎこちないまま暫くしたある日、王子はエリザベスを挑発し庭へ出ると、突然木登りを始めた。
王子の奇行は長い付き合いで知っている。
得意げな表情で木の上から見下ろすクリスの姿に、エリザベスは悔し気に唇を噛むと、突然スカートを持ち上げた。
「ちょっ、エリザベス様、何をなさろうとしているのですか?」
「なにって見てわからない?登るのよ。負けっぱなしはイヤなの!」
彼女は強く地面を蹴ると、王子を睨みつけながら太い枝に足をかけしがみつく。
「いけません、ってあなた令嬢でしょう!はしたないですよ」
「そんなの関係ないわ。あんなどや顔見せられて、黙っている方が耐えられない。絶対に見返してやるのよ」
エリザベスは木の枝に座る王子を見上げると、ガシガシと登っていった。
そこでようやくこの令嬢が普通でないと気が付いた。
こんな令嬢を見たことがない。
父の言っていた世話をいうこと言葉は、話し相手になり信頼関係を築くことだと思っていたが、本当に世話をするのだと理解したんだ。
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