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35.本物の聖女 (杏奈視点)
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それから王子と一緒に彼も私の部屋へやってくるようになった。
王子との二人だけの時間が少なくなってしまったことを残念に思う反面、どこかほっとする自分がいる。
彼と二人っきりだと、どうしても浮かれてしまうから。
それに3人でテーブルを囲んで話せば、王子とも今まで通り会話が出来る。
自分の気持ちに気づいてしまってから、彼とうまく話せなかったから。
夕刻になった頃、ネイサンはハッと何かを思い出したかと思うと、約束があるのだと慌てて部屋を出て行く。
そんな彼を見送ると、久方ぶりに王子と二人っきりになった。
何とも言えない沈黙が流れる中、王子は優し気な目でこちらを見つめる。
「あいつは頭は良いんだがな、抜けているところがある。ところでネイサンはどうだ?いい奴だろう?」
どうしてそんな質問をするのかしら?
もしかして……私と彼との仲を気にして……いえいえ、そんな、まさか……。
自惚れも肌裸足い……。
「えっ、はい、最初は少し驚きましたけれど、とても話やすい方です。それにお話は楽しいものばかりですし、こちらと私の世界についても詳しくて色々と勉強になります」
どんな反応をしているのか気になるが、王子の姿を真っすぐに見られない。
胸が高鳴り思わず目を伏せると、足元に差し込む夕日を見つめた。
「よかった。こんなこと言うのはあれかもしれないが、ネイサンもあなたを気に入っている。彼は貴族だが、まだ未婚で婚約者もいない。よかったら彼と出かけるといい」
そう言いながら王子は2枚の券を取り出すと、私へ差し出した。
驚き顔を上げ券を見てみると、そこに食事券と書かれている。
「あの……これは……」
「有名なレストランの招待券だ。そちらの世界にはこういった券があるのだろう?この制度は以前きた聖女が宣伝として編み出したものだ。話がそれたが、ここは異世界の料理を食べられると評判がいい店で、あいつも好きなはずだ。普通は男から声を掛けるのが礼儀なのだろうが、聖女様となると皆恐れ多くて出来ない。だからあなたにこれを渡しておく」
そっと彼を見上げると、いつもの優しい笑みを浮かべている。
これって私とネイサンの仲を取り持とうとしているのかしら。
さっきの質問は、私がネイサンをどう思っているのか知りたかっただけ……。
それってつまり……王子にとって私は……。
私は何も答えることが出来ず券を受け取ると、ありがとうございますと小さく呟いた。
翌日、もらった券を眺めていると、ネイサンがやってきた。
慌てて券をポケットに入れると、扉を開ける。
だがその先にはネイサンのみで、王子の姿はない。
気を遣ったのかと思うと、胸がチクリと痛んだ。
「ほうほう、聖女様が来た時代以前来られた聖女様よりも数段技術が進んでいるようですね。文献を見る限り、離れて会話をする機械はあったようですが、持ち運びが出来、さらに離れた相手と文字で会話できるというのはすごいですね」
「はい……」
彼と話しているのに、頭の中は王子のことばかり。
王子の望みは私が彼を食事に誘う事……。
今日は私が誘いやすいように気を遣って、ここへこなかったのかな……。
それはつまり……王子にとって私は只の聖女で……。
スカートのポケットに入れたままの券を、ギュッと握りしめると気持ちが落ちていく。
上の空の私に気が付いたのか、ネイサンはペンとノートを片付けると、真っすぐにこちらを見つめた。
「……大丈夫ですか?」
ハッと顔を上げると、慌てて首を横へふる。
その刹那手に持っていた券が床に落ちると、ネイサンがおもむろに拾い上げた。
「これは確か王子が取り寄せていた……?」
「あっ、それは、その……」
「もしかして王子から渡されたのですか?僕を誘えと……?」
私はコクリと頷きながら頭を垂れると、口を閉ざした。
「はぁ……全くひどい王子だ……。まぁ……知ってましたけど……。あー、すみません。聖女様が王子に好意を抱いているのは城中皆が知っておりますよ。まさかこんなお節介をするなんて」
最初の方はボソボソと話聞き取れなかったが、後半の言葉に慌てて顔を上げると、彼は苦笑いを浮かべ困った表情を見せる。
えぇどうして、皆が知っているなんてッッ、誰にも話していないのに……。
「えぇ!?あの……どっ、どうして……」
「ふふっ、見ていればわかりますよ」
恥ずかしい……。
思わず顔を覆い項垂れる。
「これは僕から王子に返しておきます。聖女様は彼と一度話した方がいいかもしれないですね」
ネイサンはそう呟くと、そっと立ち上がり部屋を出ていった。
王子との二人だけの時間が少なくなってしまったことを残念に思う反面、どこかほっとする自分がいる。
彼と二人っきりだと、どうしても浮かれてしまうから。
それに3人でテーブルを囲んで話せば、王子とも今まで通り会話が出来る。
自分の気持ちに気づいてしまってから、彼とうまく話せなかったから。
夕刻になった頃、ネイサンはハッと何かを思い出したかと思うと、約束があるのだと慌てて部屋を出て行く。
そんな彼を見送ると、久方ぶりに王子と二人っきりになった。
何とも言えない沈黙が流れる中、王子は優し気な目でこちらを見つめる。
「あいつは頭は良いんだがな、抜けているところがある。ところでネイサンはどうだ?いい奴だろう?」
どうしてそんな質問をするのかしら?
もしかして……私と彼との仲を気にして……いえいえ、そんな、まさか……。
自惚れも肌裸足い……。
「えっ、はい、最初は少し驚きましたけれど、とても話やすい方です。それにお話は楽しいものばかりですし、こちらと私の世界についても詳しくて色々と勉強になります」
どんな反応をしているのか気になるが、王子の姿を真っすぐに見られない。
胸が高鳴り思わず目を伏せると、足元に差し込む夕日を見つめた。
「よかった。こんなこと言うのはあれかもしれないが、ネイサンもあなたを気に入っている。彼は貴族だが、まだ未婚で婚約者もいない。よかったら彼と出かけるといい」
そう言いながら王子は2枚の券を取り出すと、私へ差し出した。
驚き顔を上げ券を見てみると、そこに食事券と書かれている。
「あの……これは……」
「有名なレストランの招待券だ。そちらの世界にはこういった券があるのだろう?この制度は以前きた聖女が宣伝として編み出したものだ。話がそれたが、ここは異世界の料理を食べられると評判がいい店で、あいつも好きなはずだ。普通は男から声を掛けるのが礼儀なのだろうが、聖女様となると皆恐れ多くて出来ない。だからあなたにこれを渡しておく」
そっと彼を見上げると、いつもの優しい笑みを浮かべている。
これって私とネイサンの仲を取り持とうとしているのかしら。
さっきの質問は、私がネイサンをどう思っているのか知りたかっただけ……。
それってつまり……王子にとって私は……。
私は何も答えることが出来ず券を受け取ると、ありがとうございますと小さく呟いた。
翌日、もらった券を眺めていると、ネイサンがやってきた。
慌てて券をポケットに入れると、扉を開ける。
だがその先にはネイサンのみで、王子の姿はない。
気を遣ったのかと思うと、胸がチクリと痛んだ。
「ほうほう、聖女様が来た時代以前来られた聖女様よりも数段技術が進んでいるようですね。文献を見る限り、離れて会話をする機械はあったようですが、持ち運びが出来、さらに離れた相手と文字で会話できるというのはすごいですね」
「はい……」
彼と話しているのに、頭の中は王子のことばかり。
王子の望みは私が彼を食事に誘う事……。
今日は私が誘いやすいように気を遣って、ここへこなかったのかな……。
それはつまり……王子にとって私は只の聖女で……。
スカートのポケットに入れたままの券を、ギュッと握りしめると気持ちが落ちていく。
上の空の私に気が付いたのか、ネイサンはペンとノートを片付けると、真っすぐにこちらを見つめた。
「……大丈夫ですか?」
ハッと顔を上げると、慌てて首を横へふる。
その刹那手に持っていた券が床に落ちると、ネイサンがおもむろに拾い上げた。
「これは確か王子が取り寄せていた……?」
「あっ、それは、その……」
「もしかして王子から渡されたのですか?僕を誘えと……?」
私はコクリと頷きながら頭を垂れると、口を閉ざした。
「はぁ……全くひどい王子だ……。まぁ……知ってましたけど……。あー、すみません。聖女様が王子に好意を抱いているのは城中皆が知っておりますよ。まさかこんなお節介をするなんて」
最初の方はボソボソと話聞き取れなかったが、後半の言葉に慌てて顔を上げると、彼は苦笑いを浮かべ困った表情を見せる。
えぇどうして、皆が知っているなんてッッ、誰にも話していないのに……。
「えぇ!?あの……どっ、どうして……」
「ふふっ、見ていればわかりますよ」
恥ずかしい……。
思わず顔を覆い項垂れる。
「これは僕から王子に返しておきます。聖女様は彼と一度話した方がいいかもしれないですね」
ネイサンはそう呟くと、そっと立ち上がり部屋を出ていった。
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