乙女ゲームの世界は大変です。

あみにあ

文字の大きさ
37 / 169
中等部

認められない思い (香澄視点)

しおりを挟む
そんなある日、校庭を歩いていると、裏庭であの女の姿を見つけた。
どうやら二条の友人である華僑と何やら話しているようだ。
私はこっそり近づいていくと、揉める声にそっと身を潜める。

「一条さん、最近どうして二条君を避けているの?」

「えーと、いや~、その……う……ん、避けてはないよ?」

「そんなわけない、あんなに露骨に避けて、気が付かないはずないよ。二条君の様子を見た?最近塞ぎこんでいるんだよ!それに一条さんも無理して笑っているよね?ねぇ……二人の間に何があったの?」

「……何もないよ、二条は何も悪くない。私が勝手に避けているだけ。……自分勝手な事をしてると自覚している。えーと、その……最近変な噂を耳にして、私が二条の婚約者になるとか、もう一度断ってるのにね。だから少し距離を置いた方がいいのかなって」

「……一条さんは二条君と婚約したくはないの?」

「それは……ッッ、私が二条と婚約するなんてありえないの。彼の傍に居るのは私じゃない。何言ってるんだって思ってるよね……。だけど彼の傍に居続けて、気持ちが大きくなったとき……離れていく現実に耐えられる自信がない……」

「一条さんどういう意味?どうしてそんなことがわかるの?」

「それは……ッッ、言えない。でも人の心なんて変わっていくもの。ましてやこの世界ならなおさら……」

彼女は意味深な言葉を呟くと、深く頭を垂れ黙り込んでしまった。

今のはどういうことなの?
彼女もお兄様の事が好きなんじゃないの?
婚約者になりたいんじゃないの?
婚約を断ったなんて知らなかった……。
私は物陰からそっと顔を出すと、弱弱しく笑った彼女の姿が目に映った。

「それにね、香澄ちゃんの誤解も解ければ嬉しいなぁと思ってるの。香澄ちゃんはどうも私に二条が盗られてしまうと思っているみたいでね、あんな可愛い子に敵視されるのは悲しいわ。できれば香澄ちゃんとも笑顔で話せるようになりたい」

衝撃的な言葉に、私はその場から逃げるように離れると、頭の中で彼女の言葉が反芻する。

笑顔で話す?
つまり仲良くなりたいってこと?
こんな私と……?

私の周りに集まてくる女たちは、いつも兄目当ての人ばかり。
仲良く話していても、結局最後には兄を紹介してほしい、そう言ってくる。
私と仲良くなりたいなんて、思っている女なんていなかった。
そうやって何度も何度も裏切られてきたから、私には兄だけでいいそう思ってきた。

だから私に友達なんて一人もいない。
陰でわがままな高飛車な女と言われていることも知っている。
そんな事言うやつらも、私の前ではヘコヘコとご機嫌を取りに来るの。
でも彼女の笑顔は違うの?
お兄様の事は関係なく……純粋に私に向けられていたというの……?
何とも言えぬ気持ちが胸に込み上げてくると、叫びたい衝動にかられた。

あの日から、私は一条彩華の監視をやめ、彼女の言っていた言葉をずっと考えていた。
授業が終わり、下校の合図とともに私は一人廊下を歩いて行く。
すると人気のない校舎裏で兄と彼女が抱き合っている姿が窓の外に映った。
私は勢いのまま階段を駆け下り、校舎裏へ向かうと、二人の間に割り込み、彼女をその場から引き離した。

彼女の手を握り歩き続ける中、前ほどの怒りは感じなくなっていた。
この間話していた言葉が何度も何度も蘇る。
きっとさっきのは兄が捕まえたんだと、彼女から避け続ける理由を聞くために。
頭ではわかっているが、お兄様が奪われてしまう現実を受け入れらない。
だから彼女を連れて、兄が居る学園から必死に離れたの。

彼女は何も言わない。
怒ることも、私の手を振り払う事もしない。
こんな強引に、それも嘘までついてここに連れてきたのに。
行く当てもなく歩き続け、繁華街を抜けた先で人通りが減ると立ち止まる。
彼女がどんな顔をしているのか、恐る恐るに振り返ると、心配そうな彼女の姿が目に映った。

どうして、私の心配なんてするのよ。
どうして、こんな私と友達になりたいなんて言うの?
どうして、あなたは私に笑顔を向けてくれるの?

その笑顔は信じてもいいの……?

何度も何度も問いかけ続ける。
だけど答えは出なくて、口から出てくるのは彼女を突き放すひどい言葉だけ。

違う、違うの、こんな事言いたいんじゃない。
彼女がお兄様と婚約者になりたいと思っていない。
なら私はどうすればいいの?
あなたが消えてくれれば、またお兄様は私のものだけになるの?
だってお兄様が居なくなったら私は、一人になっちゃうんだよ……?

「危ない!」

突然私の体が宙に浮いたかとおもうと、私は道路の反対側へと倒れ込んだ。
すぐに顔を上げると、私の目の前には頭から血を流し横たわる彼女の姿。
うそでしょ……ッッ
なんで……私を助けたの……?
どうして……。

違う、違うわ、私はこんなこと望んでいない。
やだ、やだ、やだ、やだあああああああああああ
混沌とする中、彼女は蹲り、痛みに顔を歪める。
だけど彼女は必死にこちらへ顔を向けると、笑顔で大丈夫と呟いた。

「バカ……こんなときでも……ッッ」

彼女の優しさに一気に涙が溢れだすと、その場に崩れ落ちた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...