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エリザベート嬢はあきらめない
アメリア・グレイシャス
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「エリザベート様、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」
「エリザベート様、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」
前世でハマった乙女ゲーム「王国の聖女ロリエッタ』の悪役令嬢、エリザベート・ノイズに転生したと気がついて8年。
過去の記憶は、夢の中の出来事のように感じるようになってきた。
エリザベート・ノイズとして生活していくうちに、過去への想いは霧のように消え去っていった。大切なのは今を生きる事だ。
そう言いながらも、前世で学んだ知識は、有難い事にしっかりと私の中にある。
前世でそこそこ有名な大学に通っていた私にとっては、学園の勉強はとても簡単な内容だった。
言語についても大丈夫だった。この学園に入ってから気が付いたことだけれど、私はこの世界で使われている言語の全てを理解出来る。
通りすがりに聞こえてきた、他国から来た学生の話している会話の内容が理解できたのだ。
「せっかくこの学園に入ったというのに、王太子と違うクラスとは。ついてないなあ」
「でもこのクラスには王太子の最有力婚約者候補の令嬢がいるよ。毎朝、一緒に登校しているって噂の」
「ふ~ん、そうなんだ。どんな令嬢なんだろうね。いい子だったら僕がもらってしまおうかな」
「殿下。国際問題にだけはしないでね。後始末するのは僕なんだから」
初めて聞く言語だったのに理解できた。
転生の時に与えられた能力かもしれない。これは有難い。
地理やその他の、この世界独特の歴史についても、ヒルダに聞きながら勉強した。
のんびりした授業は楽しい。他の生徒を観察したり、今日のお昼ご飯の事を考えたり。たまに名指しで当てられたりするけれど、問題なく回答できる。
ウィリ様とエドとは別のクラスだった。あっそうだ。あの残念な令嬢のマルティナ・ノルマン様も同じクラスだった。
あれから何年も経つけれど、私は彼女と話をした事がない。相変わらずウィリ様を見ているようだけれど、あまり関心がないので詳しくは知らない。
そんな事を授業中にぼんやりと考えていたら、教室の中ほどに座っている女生徒と目が合った。
グレーの瞳にキラリと微笑まれた。真っ赤な髪に理知的なグレーの瞳。ウィリ様の婚約者候補の1人。アメリア・グレイシャス侯爵令嬢。私の数少ない女友達だ。
彼女は家庭の事情で2年前から、王都とは少し離れた侯爵領に戻っていた。学園に入学すると連絡はあったのだけれど、入学式にも来ていなかったので心配していたのだ。今日も登園してるのを知らなかった。
「アメリア!」
エリザは、授業が終わってすぐに、彼女のところに駆け寄り抱きついた。
「やっと会えたわ!」
「エリザ!会いたかった!」
彼女が王都に帰ってきたのは2年ぶりだ。
私は彼女の両肩を持って少し離れて、久しぶりに会う友人を見つめた。
2年前にはあったチャームポイントのソバカスは綺麗に消え去り、健康的な艶のある白い肌と、見る角度によっては緑ががって見えるグレーの瞳の友人は、記憶中の彼女より少し大人っぽく見えた。
それは、彼女から見た私も同じだったようだ。
「エリザ、綺麗になった。なんだか少し大人になったわ」
「アメリア、貴方もよ」
今朝は早くから登園していたけれど、手続きが長引いて昼からの授業にも遅刻してしまったらしい。
「今日は私と我が家に来られる?帰りは家まで送るから」
「もちろん大丈夫よ。迎えが来たらそう言うわ」
その日の夕食は楽しかった。お父様もお母様もアメリアが王都の屋敷に戻って来たことを、とても喜んで下さった。
ここにお兄様がいたらと思うのだけれど、学生寮なのだから仕方がない。また、お手紙で報告しておこう。
「アメリア!元気だった?どうしていたの?お母様もお元気?入学式でお見かけしなかったから心配していたのよ」
「アメリア。久しぶりだね。元気にしていたかい?」
「おじさま、おばさま、お久しぶりです。私は元気です。母も元気で一緒にこちらに戻ってきました。お2人もお元気そうで良かったです」
私の覚えている乙女ゲームでは、エリザベート・ノイズに女友達は存在しなかった。
アメリアはウィリアム殿下の婚約者候補の1人として名前は上がっていたかも知れないけれど、あまり重要ではない存在の1人だった。
エリザベートの周りにいるのは取り巻きだけだった。
エリザが王都学園に入学する頃には、母のマーガレットは事故死していて、ノイズ家は殆ど家庭崩壊状態だった。
そしてノイズ公爵と養子リアムとが会話する事は殆ど無くなっていて、ノイズ公爵は、ただただ妻の忘れ形見であるエリザベートを溺愛するだけだった。
エリザベートは満たされない家庭環境からくる苛立ちの中、悪役令嬢への道をまっしぐらに歩んでいく。
その3年前のドリミア学園入学時も、ノイズ公爵家の様子はあまり変わらなかったはずだ。
けれど今は違う。お母様も健在でノイズ公爵家の平和は保たれている。そしてエリザは家族に愛され幸せに生活している。
ゲームの流れは変わったのだ。
「アメリア、貴方という友達が居てくれて私は幸せよ。戻ってきてくれてありがとう」
「それは私のセリフよ。貴方が居るから戻ってきたのよ。エリザ!」
デザートを食べながら、話は盛り上がる。
「アメリアは我が家の娘みたいなものだ。いつでも遊びにおいで。私達は大歓迎だよ」
「そうよアメリア。私達は大歓迎よ。それでも今日は貴方にとっては学園の初日。疲れたでしょ?ご両親も待っておられるわ。そろそろ送りましょ」
いつでもお母様はぶれない。
お父様の執事のクロードが馬車を出してくれるので、私も一緒に乗り込んでアメリアを屋敷まで送ることにした。
馬車の中で色々、色々、盛り上がっているうちに、グレイシャス侯爵家に到着した。
そっと馬車を付けて、迎えに出てきたアメリアのお母様に挨拶をした後、2人に見送られて、私とクロードはグレイシャス侯爵家をあとにしたのだった。
「ご機嫌よう」
「エリザベート様、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」
前世でハマった乙女ゲーム「王国の聖女ロリエッタ』の悪役令嬢、エリザベート・ノイズに転生したと気がついて8年。
過去の記憶は、夢の中の出来事のように感じるようになってきた。
エリザベート・ノイズとして生活していくうちに、過去への想いは霧のように消え去っていった。大切なのは今を生きる事だ。
そう言いながらも、前世で学んだ知識は、有難い事にしっかりと私の中にある。
前世でそこそこ有名な大学に通っていた私にとっては、学園の勉強はとても簡単な内容だった。
言語についても大丈夫だった。この学園に入ってから気が付いたことだけれど、私はこの世界で使われている言語の全てを理解出来る。
通りすがりに聞こえてきた、他国から来た学生の話している会話の内容が理解できたのだ。
「せっかくこの学園に入ったというのに、王太子と違うクラスとは。ついてないなあ」
「でもこのクラスには王太子の最有力婚約者候補の令嬢がいるよ。毎朝、一緒に登校しているって噂の」
「ふ~ん、そうなんだ。どんな令嬢なんだろうね。いい子だったら僕がもらってしまおうかな」
「殿下。国際問題にだけはしないでね。後始末するのは僕なんだから」
初めて聞く言語だったのに理解できた。
転生の時に与えられた能力かもしれない。これは有難い。
地理やその他の、この世界独特の歴史についても、ヒルダに聞きながら勉強した。
のんびりした授業は楽しい。他の生徒を観察したり、今日のお昼ご飯の事を考えたり。たまに名指しで当てられたりするけれど、問題なく回答できる。
ウィリ様とエドとは別のクラスだった。あっそうだ。あの残念な令嬢のマルティナ・ノルマン様も同じクラスだった。
あれから何年も経つけれど、私は彼女と話をした事がない。相変わらずウィリ様を見ているようだけれど、あまり関心がないので詳しくは知らない。
そんな事を授業中にぼんやりと考えていたら、教室の中ほどに座っている女生徒と目が合った。
グレーの瞳にキラリと微笑まれた。真っ赤な髪に理知的なグレーの瞳。ウィリ様の婚約者候補の1人。アメリア・グレイシャス侯爵令嬢。私の数少ない女友達だ。
彼女は家庭の事情で2年前から、王都とは少し離れた侯爵領に戻っていた。学園に入学すると連絡はあったのだけれど、入学式にも来ていなかったので心配していたのだ。今日も登園してるのを知らなかった。
「アメリア!」
エリザは、授業が終わってすぐに、彼女のところに駆け寄り抱きついた。
「やっと会えたわ!」
「エリザ!会いたかった!」
彼女が王都に帰ってきたのは2年ぶりだ。
私は彼女の両肩を持って少し離れて、久しぶりに会う友人を見つめた。
2年前にはあったチャームポイントのソバカスは綺麗に消え去り、健康的な艶のある白い肌と、見る角度によっては緑ががって見えるグレーの瞳の友人は、記憶中の彼女より少し大人っぽく見えた。
それは、彼女から見た私も同じだったようだ。
「エリザ、綺麗になった。なんだか少し大人になったわ」
「アメリア、貴方もよ」
今朝は早くから登園していたけれど、手続きが長引いて昼からの授業にも遅刻してしまったらしい。
「今日は私と我が家に来られる?帰りは家まで送るから」
「もちろん大丈夫よ。迎えが来たらそう言うわ」
その日の夕食は楽しかった。お父様もお母様もアメリアが王都の屋敷に戻って来たことを、とても喜んで下さった。
ここにお兄様がいたらと思うのだけれど、学生寮なのだから仕方がない。また、お手紙で報告しておこう。
「アメリア!元気だった?どうしていたの?お母様もお元気?入学式でお見かけしなかったから心配していたのよ」
「アメリア。久しぶりだね。元気にしていたかい?」
「おじさま、おばさま、お久しぶりです。私は元気です。母も元気で一緒にこちらに戻ってきました。お2人もお元気そうで良かったです」
私の覚えている乙女ゲームでは、エリザベート・ノイズに女友達は存在しなかった。
アメリアはウィリアム殿下の婚約者候補の1人として名前は上がっていたかも知れないけれど、あまり重要ではない存在の1人だった。
エリザベートの周りにいるのは取り巻きだけだった。
エリザが王都学園に入学する頃には、母のマーガレットは事故死していて、ノイズ家は殆ど家庭崩壊状態だった。
そしてノイズ公爵と養子リアムとが会話する事は殆ど無くなっていて、ノイズ公爵は、ただただ妻の忘れ形見であるエリザベートを溺愛するだけだった。
エリザベートは満たされない家庭環境からくる苛立ちの中、悪役令嬢への道をまっしぐらに歩んでいく。
その3年前のドリミア学園入学時も、ノイズ公爵家の様子はあまり変わらなかったはずだ。
けれど今は違う。お母様も健在でノイズ公爵家の平和は保たれている。そしてエリザは家族に愛され幸せに生活している。
ゲームの流れは変わったのだ。
「アメリア、貴方という友達が居てくれて私は幸せよ。戻ってきてくれてありがとう」
「それは私のセリフよ。貴方が居るから戻ってきたのよ。エリザ!」
デザートを食べながら、話は盛り上がる。
「アメリアは我が家の娘みたいなものだ。いつでも遊びにおいで。私達は大歓迎だよ」
「そうよアメリア。私達は大歓迎よ。それでも今日は貴方にとっては学園の初日。疲れたでしょ?ご両親も待っておられるわ。そろそろ送りましょ」
いつでもお母様はぶれない。
お父様の執事のクロードが馬車を出してくれるので、私も一緒に乗り込んでアメリアを屋敷まで送ることにした。
馬車の中で色々、色々、盛り上がっているうちに、グレイシャス侯爵家に到着した。
そっと馬車を付けて、迎えに出てきたアメリアのお母様に挨拶をした後、2人に見送られて、私とクロードはグレイシャス侯爵家をあとにしたのだった。
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