悪役令嬢エリザベート物語

kirara

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エリザベート嬢はあきらめない

生徒会長からの注文

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「エレナ、配達お願い」

「はーい」

「はい!これを生徒会長のアルベール様まで」

「あのクールで素敵な生徒会長のところに届けに行けるなんて。いいなあ」

「ほんと!あの神秘的な黒い瞳に1度でいいから、見つめられたいわ」

「歳下とは思えないくらい、素敵だよね」

食堂で働く同僚達は、アルベール・ロレーヌの名前を聞くだけで、会話が盛り上がる。

「私はあんまり興味がないわ。
けれど、ご指名だから仕方がないのよ。
生徒会室ってここから遠いし、
行きたい人に変わってあげたいくらいよ」

エレナは注文の定食が入った宅配袋を手に、生徒会室に向かう。

アルベール・ロレーヌ。
オーバンさんに言われて彼に近づいて、魅了した覚えがある。

あれは何時だったかしら?
魅了した後のことは覚えていない。
それもどうでもいいわ。彼は私のタイプじゃないもの。

私も以前は彼女達のように、彼に憧れていたけれど、なんだか興味がなくなってしまったわ。

考え事をしている間に目的の部屋に到着した。

トントントン

生徒会室のドアをノックする。

「はい」

ドアを開けてくれたのは、ブラウンベージュの髪の青年だ。

「食堂のスタッフのエレナです。注文の定食をお届けに来ました」

「ああ。ありがとう。そこに置いてくれる?」

私は彼が指定した場所に『今日のお勧め定食』を置いた。 

「エレナ。元気にしていたかい?こちらにおいで。」

そう言われた途端に全てを思い出した。

「もっと近くにおいで。秘密の話を聞かせてよ」

ああ!そうだった。
ああ!アルベール。
私のアルベール。
こんなに愛おしい貴方の事を、どうして忘れていたのかしら?

その黒い瞳を覗き込みたい。
私は映っているかしら?

「僕の瞳に君は映っているかい?」

ええ、私が映っているわ。
嬉しい。
貴方が私を見てくれるだけで嬉しい。

もっともっと・・

「今日は楽しかったかい?」

そう、やっぱり貴方ね。
貴方になら何でも何でも話せるもの。

オーバンさんの秘密やセザールの秘密を
知り得る限り彼に話した。
彼に話をすると心が軽くなる。

「可愛いエレナ。僕の人形。
今から話す事を、よく聞いて、覚えておくんだよ」

そう、私は貴方のお人形。
貴方の人形だと言われる事が嬉しいわ。
こんなに幸せな気持ちになれるなんて。

「ああ、愛しいアルベール。貴方が私に話すことなら、どんな事でも忘れないわ」

「3日後のお昼にセザールに会ったら、君は彼を、もっと、もっと、独り占めしたくなるんだよ。

彼は君の恋人なんだろう?

食堂に誰がいても関係ないさ。彼と2人でいる時間を楽しむんだよ。

今日の夜から、セザールに話しておこうね。3日後のお昼は、学園の食堂のVIP室で一緒に食事をしたいって」

「3日後のお昼、学園のVIP室でセザールと食事をするのね。ああ、今から楽しみだわ。

彼が私に夢中だという事を、皆んなに見せつけてあげるわ。

彼は誰にも渡さない。彼は私だけのものなのだから。

今日の夜に話をするわ。3日後のお昼、食堂のVIP室で一緒に食事をしたいって」

「ねえ、エレナ。1つ教えて欲しい事が有るんだ」

「愛するアルベール、どうしたの?」

「ねえ、エレナ。君は僕には嘘はつけないんだよね。心の秘密も何でも話せるんだよね」

「ええ。愛するアルベール。私は貴方には嘘はつかないわ。何でも何でも話せるわ」

「エレナ、君は宰相セザールを愛しているの?愛人になって幸せなの?本当の気持ちを教えてよ」

「ああ、アルベール。アルベール。

私はセザールを愛してはいないわ。
彼には妻も娘もいるもの。

私は彼のお金と地位を愛しているだけ。彼はいい人よ。私は結婚をしたいとは思わないから、今の関係に満足しているわ。

いえ、違う、違うわ!
私はセザールを愛している。
そう、何時の間にか本当に。

私のアルベール。
どうしよう、どうしよう。
気がついてしまったわ」

「エレナ、大丈夫だよ。忘れておしまい。今は忘れておしまい。可愛いエレナ。

3日後のお昼。宰相セザールに君の本当の気持ちを伝えるといいよ。

食事が終わってVIP室から食堂に出て、2人で楽しく話をしている時に、君の本当の気持ちを思い出すんだよ」

その時セザールはどうするだろうね。
楽しみだね。

「さあ、もう職場に戻る時間だ。
僕のことは忘れるんだよ。
楽しい楽しい夢を見たんだよ。
君はアルベール・ロレーヌには興味がないんだ。

3日後のお昼。頑張ってね。可愛いエレナ。

僕は君を応援しているよ。
何があっても冷静に対応するんだよ。

4日後のお昼。またここにおいで可愛いエレナ。」

その時、全てを忘れさせてあげるよ。
そして僕からも解放してあげる。

その時、君が幸せならいいね。
もし泣いていたら
セザールのことも忘れさせてあげるよ。

だから、もうしばらくは、
僕の人形でいてね。
可愛いエレナ。

食堂の女性スタッフのエレナは、
急いで職場に戻ってきた。

疲れているのね。
配達が終わってすぐに、眠ってしまうなんて。

まあいいわ。

とてもいい夢をみたから。
内容は忘れてしまったけれど。

とっても幸せな夢だったような気がするもの。

エレナは軽い足取りで、職場に戻って行ったのだった。
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